栄氏(右)が辞任しても伊調の前には“ラスボス”が…

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 女王復帰に光が差し込んでも、女帝が健在では収まるものも収まらない。日本レスリング協会は6日に開いた緊急理事会で、女子で五輪4連覇を達成し、国民栄誉賞を受賞した伊調馨(33)=ALSOK=に対し、栄和人強化本部長(57)のパワーハラスメントがあったと認定した。晴れて練習に取り組めそうな伊調だが、立ちはだかるのは、やはり“あの人”だ。

 理事会後の会見で、同協会の福田富昭会長(76)は「古くからいえば(レスリングの世界で)パワハラは存在していた」と明かし、栄氏の強化本部長辞任を発表した。

 理事会に出席しなかった栄氏の辞表を持ってきたのは、所属する至学館大の学長で協会副会長でもある谷岡郁子氏(63)だった。

 福田会長は「栄氏が辞表を提出しなかった場合は、役職を解任するつもりだった」と話したが、協会執行部である常務理事の役職はそのまま。「内閣府の調査がまだ終わっていない」と協会執行部の責任問題も先送り。「2020年東京五輪にむけて金メダルを目指すべく国民のみなさまの期待に応えたい」と平身低頭で話し、会長職については続投の意思を示した。

 焦点はレスリング協会の女帝として君臨する谷岡副会長だ。理事会終了後、追いすがる報道陣から質問が飛んだが、早歩きのまま終始無言。車に乗り込む際、「パワハラはなかったんじゃないんですか?」との声に、ニヤッと謎の笑みを浮かべてドアを閉め、去っていった。

 谷岡副会長は3月15日に至学館大で開いた会見で「(栄氏のような)パワーのない人間によるパワハラが一体どういうものか私には分からない」と憤慨。伊調についても「そもそも彼女は選手なんですか」「五輪を目指すはずがない人」とまで言い放ったが、この日の臨時理事会でこの件はなぜか不問に。

 理事会後の会見には、衆議院議員の馳浩副会長は出席したが、谷岡副会長はなぜか出席せず。福田会長は「谷岡副会長は(地元の)名古屋に戻らなければいけないので」と釈明した。

 馳副会長は、伊調が練習再開に意欲を見せ、練習場所の確保を要望していると明かし、協会として全面支援する意向を示したが、谷岡副会長の権力が根を張る環境は変わっていない。栄辞任は、単なるトカゲの尻尾切りに終わる可能性もある。(夕刊フジ編集委員・久保武司)