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“高根の花”のイメージ払拭 手頃な価格のクルーズ船充実 日本人にも大人気
ビジネスの裏側更新訪日外国人客(インバウンド)の増加を追い風に、国内各地への寄港が増えているクルーズ船が、日本人の取り込みにも成功している。手ごろなプランが増え、船旅ならではの良さが浸透してきたためだ。1人あたり1泊1万円台というプランもあり、“高根の花”というイメージは変わってきている。(田村慶子)
グレード3段階
国土交通省によると、平成28年にクルーズ船で日本を訪れた外国人旅行者は前年比78・5%増の199万2千人と過去最高だった。25年の調査開始から11倍超に急増。政府は32年に500万人という目標を掲げているが、足並みをそろえるように増えているのが日本人の乗客だ。
国交省の調査では、日本人のクルーズ人口は前年比12・4%増の24万8千人と過去最多を記録。26、27年はやや数を減らしたが、14年以降の10年間、10万人台半ばにとどまっていた乗客数が、24年から5年間は20万人台を維持している。
需要を押し上げているのが「カジュアル船」だ。客船はグレードの高い方から「ラグジュアリー」「プレミアム」「カジュアル」の3クラスに分けられる。船が大きいほど豪華というわけではなく、乗組員1人あたりの乗船客数の少なさやドレスコードの厳しさなど、格式やサービスのきめ細かさで格付けされる。
1人1泊1万円
日本で最も知られる豪華客船「クイーンエリザベス」はラグジュアリーに入り、総トン数は9万トン、乗客定員は約2千人。カジュアル船はラグジュアリー船の5~6分の1の料金で利用でき、総トン数20万トン以上、乗客定員が5千人を超えるものもある。カジュアル船は世界のクルーズ市場の8割を占め、欧米を中心に多くの外国人が休暇を楽しんでいるのは、じつはこうした気軽な船旅だ。
そんな中、カジュアル船に属するコスタクルーズ(イタリア)、スタークルーズ(香港)、MSCクルーズ(イタリア)といった外国船社が続々と日本へ進出。各社の狙いは経済成長で急拡大するアジアのクルーズ市場だが、安価なプランが充実し始めたことが日本人のクルーズ人気にも火をつけている。
阪急交通社は今年のゴールデンウイーク期間中に日本初就航の「MSCスプレンディダ」「ノルウェージャン・ジュエル」のカジュアル2船をチャーター。9日間で青森、福岡、韓国・釜山などに寄港する日本一周の旅程で代金は1人あたり1泊1万円台からと格安で、ファミリー層などの予約が集まった。