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 高橋社長は就任会見で、中計で掲げた経営コンセプトを微妙に軌道修正する発言をした。「現中計の発表時に『通信企業からライフデザイン企業への変革を目指します』と書いたら、社内外で何だこれは、通信分野からライフデザイン分野へ事業をシフトするのか、と議論になった。そこで先月から『通信とライフデザインの融合』という言葉を使おうと社内で訴えかけている」――。

 言葉遊びのような微妙な軌道修正ではある。しかし、いかにライフデザイン分野に将来性があるとはいえ、通信分野からの“変革”という踏み込んだ表現が社内外で予想以上の波紋を呼び、火消しに動いたと考えれば合点がいく。

渋谷系KDDIと飯田橋系KDDIは融合できるか

 高橋社長が挙げた以外にも、「内憂」はもう一つある。まさに高橋社長が語った、通信とライフデザインの“融合”をどう進めていくかだ。コンテンツサービスやベンチャー育成などの部門は、東京・飯田橋の本社から遠く離れた渋谷駅前の「渋谷ヒカリエ」にオフィスを構える。本社内の部門からヒカリエの部門へ異動したある社員は「同じ会社とは思えないくらい雰囲気が違う。転職したかのようだ」と戸惑いを隠さない。

 高橋社長は直近まで、コンテンツサービスやベンチャー育成などの部門を統括し、長らくヒカリエに席を構えていた。「規律があるところは規律に従うべきだし、オープンイノベーションを起こすところは柔軟な発想でやればいい。ヒカリエの文化を飯田橋に持ち込む必要はない」と記者に語る姿からは、文化の違いを意に介す様子はうかがえない。

 しかし、特に飯田橋側の社員がヒカリエの文化に戸惑う現状で、通信とライフデザインの融合はスムーズに進むのか。“渋谷系KDDI”と“飯田橋系KDDI”、いずれの文化も知る高橋社長がどのようなさじ加減で融合を先導していくかが、KDDI全体の中長期の行く手を左右することになるだろう。