この記事は日経 xTECH有料会員限定ですが、2018年4月12日5時まではどなたでもご覧いただけます。

 さらに大きな脅威となるのが楽天による自営のLTEサービスへの参入だ。2017年12月中旬に楽天の参入が報じられてからKDDIの株価は大幅に下落。同月の高値である3260円に対し、高橋社長の就任会見が開かれた2018年4月5日の終値は2768円。わずか3カ月余りで、時価総額にして1兆2000億円以上が消し飛んだ。

 楽天のサービス開始が「2019年中」とまだ先なことと、設備投資額が最大6000億円と比較的小幅であることなどから、KDDIを含む既存の携帯電話大手3社は表向き静観の構えを見せている。とはいえ失った1兆2000億円を取り戻すには、実際にKDDIが楽天に打ち勝てる態勢であることを示すことが不可欠。高橋社長の手腕が問われそうだ。

ライフデザイン宣言も、実態はまだ「通信会社」

 「内憂」として挙げるのは各事業の収益性だ。KDDIは2017年3月期~2019年3月期の中期経営計画で「ライフデザイン宣言」を掲げるなど新規事業の開拓を進めているが、実際にはKDDIは、まだ圧倒的に「通信会社」である。

 セグメント別では、通信やスマートフォンの販売を柱とする「パーソナル」事業が売上高ベースで約7割、“本業でもうける力”の実力値を示すEBITDAベースでは8割近くを占めている。コンテンツ配信やEC、金融・決済などの「バリュー」セグメントは、事業規模こそ四半期ごとに増えてはいるものの、売上高ベース・EBITDAベースとも全体の1割に満たない。EBITDAマージンも、パーソナルの31%に対しバリューは26%にとどまり、法人向け事業の「ビジネス」や海外事業の「グローバル」はさらに低い。

2017年10~12月のEBITDA(単位:億円)
(出所:KDDIのIR資料を基に日経 xTECH作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 「部門別採算制度(アメーバ経営)を続けるなかで、各事業が利益を生んでいるかをものすごく気にしている。社長就任にあたり、我々はなぜ採算を上げる必要があるのかという話を繰り返している。利用者にワクワクを提供し続けるためには利益を積み重ねる必要がある。その循環が必要だ」。高橋社長は記者にそう明かす。