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2018年4月1日付で田中孝司前社長からバトンを引き継いだ、KDDI(au)の高橋誠新社長。4月5日に開催した就任会見では、当面田中前社長と同様の方針を継承しながら足元の好業績を維持するという“安全運転”の姿勢を報道陣に強く印象づけた。ただ足元の状況は、のんびり安全運転を続けていられるものではない。高橋社長は就任早々、新興勢力の攻勢、不均衡な事業の収益性、文化の異なる組織の融合といった3つの内憂外患に直面することになる。
好調の業績を背景に、田中路線を継承
「今日はいつもと違って若干コンセプチュアルな感じてまとめておりますので……」。そう言いながら、照れた様子で登壇した高橋新社長。「コンセプチュアル」という言葉の通り、この日の会見では新社長として考えている経営のコンセプトを披露。「お客様の体験価値を高めていく」「5G、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、AI(人工知能)など大変革時代に全力で取り組む」「ワクワクを提案し続ける会社へ」など、これまでも田中前社長が折々に打ち出してきたキーワードの多くを引き継いだ格好で、田中路線の継承を印象づけるものだった。
それもそのはず。KDDIの足元の業績は絶好調だ。会計基準変更の影響を除けば売上高は2012年3月期以降、営業利益は2000年の創業以来右肩上がりを続けている。2017年3月期は売上高、営業利益、純利益とも過去最高を達成。2018年3月期も通期の営業利益予想の9500億円に対し、第3四半期までに85%となる8137億円を達成済み。第3四半期までの営業利益が8353億円だったライバルのNTTドコモの背中が間近に見えている。
高橋社長は2010年から専務、2016年から副社長を務め田中前社長を間近で支えてきた。それだけに、足元で業績を伸ばしている路線をそのまま継承すること自体は順当である。ただ、KDDIが順風満帆かというと必ずしもそうではない。高橋社長は日経コンピュータ記者に対し、心中に秘めた内憂外患を打ち明けた。
新興勢相手にじり貧、時価総額1.2兆円消失
「外患」は新興勢力の攻勢に伴う通信料収入への影響だ。au回線の契約者数は直近の2017年12月末時点で2473万人となり、この1年間で56万人減少。au回線からの通信料収入(ARPA収入)も4395億円で、この1年で83億円減っている。高橋社長は「仮想移動体通信事業者(MVNO)への流出が一番の脅威」と吐露する。
足元では、2017年7月から新料金プランの「auピタットプラン」「auフラットプラン」を提供。これらのプランに「700万人近い利用者が加入し、それに伴い解約率も低下してきた」(高橋社長)とするが、ソフトバンクが「LINEモバイル」を傘下に収めるなどMVNOを巡る動きは依然活発であり予断を許さない。