企業を訪問する前に、Webサイトで「交通アクセス」を確認しておく人も多いだろう。最寄り駅からの経路のほか、商業施設などは「車でお越しの方」「電車でお越しの方」と交通手段ごとに案内が記載されていることもある。路線図マニアとしては、この「電車でお越しの方」が見逃せない。企業が交通案内のために独自に路線図を作っている場合があるからだ。
例として、六本木ヒルズのWebサイトに掲載されている路線図を見てみよう。六本木ヒルズの最寄り駅は六本木駅と麻布十番駅。この2つの駅を中心に、路線図に載せる駅や路線を絞り、「六本木ヒルズに来るための路線図」に特化させている。
鉄道会社の路線図が路線全てを網羅するのに対し、企業の路線図は自分のところへ導くことを目的としている。このため、企業が作った路線図は「自己中心的」になりがちだ。その表現はときに「誰をターゲットにしているか」すらも浮き彫りにしてしまう。
六本木ヒルズの路線図で言えば、JRや地下鉄を絞りながらも空港アクセスを載せているのは、インバウンドを意識したものだろう。六本木や麻布十番を通らない都営浅草線(浅草~大門間)をわざわざ描いているのも、浅草を訪れる外国人観光客を意識したものだと思われる。
先月末にオープンした東京ミッドタウン日比谷の路線図にも、成田空港や羽田空港が描かれている。こちらもインバウンドを意識したもの……とは思うが、六本木ヒルズと違って駅や路線に英語表記が無いのは少し気になる。
東京ミッドタウン日比谷の最寄り駅は日比谷、有楽町、銀座の3駅。他には新宿や六本木などが主要駅として掲載されているが、原宿や新橋などは乗換駅にも関わらず名前が無い。「本物を知る大人たちが集う街」というコンセプトから、ターゲット層の選択と集中を行った形跡がうかがえる。
一方、ターゲットを「絞る」のではなく、「広げる」方向で描かれた路線図もある。一年を通じてさまざまなイベントが開かれる幕張メッセは、千葉を中心に一都三県にわたる広範囲な路線図を掲載。また、味の素スタジアムでは東北新幹線や東海道新幹線が描かれており、地方からの「遠征組」も視野に入れたものになっている。
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