地方移住で遭った性的な被害を告白したブログが3月18日に公開され、SNS上で話題になった。BuzzFeed Newsは情報提供を受け、関係する団体に取材した。
ブログでは、筆者とその友人が約1年前に遭ったという性的な被害を告白している。県名は書かれていないが「とある地方」に移住したばかりのことだという。
筆者の友人が訪れた際、仲良しの地元の「おじいちゃん」に県内を案内をしてもらったそう。この男性が加害者とされている。
男性宅に宿泊することになった筆者と友人。ブログではこう書かれている。
わたしたちが入っているのを知っているはずのお風呂の扉を開けては間違えたふり。
「酔っぱらってるのかもね」と急いで着替えて急いで客間に行って、お布団をしいて眠りにつく。
突然襖があいて、わたしたちの布団の中に潜り込んでくる。
なにを言ってもダメだった。何度追い返しても同じことだった。
そんな押し問答を繰り返して、いつの間にか明け方になってしまっていた。
ブログによると、筆者は眠ってしまい、翌日起きたら、しばらくして、友人が急に家を飛び出した。1人で山をおり、街に逃げたという。
友人を探し出した筆者は、何が起こったのか後から聞くことになる。記事を引用する。
ここで、その詳細を書く気には、今でも、どうしてもなれない。
ただ一つわかったのは、わたしが”仲の良いおじいちゃん”と慕って半年近く付き合ってきたはずの人は、わたしたちをただの”女”という記号でしか見てなかったということだ。
近所に住んでいる知人が帰ってこないことを知って、助けを呼べる人がいなかったこと。
地元の猟師をやっているその人はきっとまだまだ自分のことを”現役”だと思っている。自然の中でシカとかイノシシとか、わたしたちの想像のつかないような動物と対峙しているわけだから、力だって充分すぎるほどある。
男の力に女が勝てるはずがない。
このブログで加害者とされている男性は、「お世話になっているNPO」のサイトで、その街の代表として紹介されていたという。
高知のNPO法人が謝罪
![](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-04/8/1/asset/buzzfeed-prod-web-01/sub-buzz-19348-1523164836-2.png)
このブログ記事公開から4日後、高知県に拠点を置くNPO法人「ONEれいほく」が、「SNS上で拡散されている記事に関して」という記事を公開した。
女性の告白記事では、具体的な県名や団体名などは伏せられていたが、ONEれいほくは告白記事を引用し、筆者に謝罪したと記している。
本件に関して筆者とは密にコミュニケーションをとっており、ONEれいほくの不適切な情報発信や対応で精神的なストレスを与えてしまったことを謝罪しました。
今後もONEれいほくは、筆者と被害に遭われた女性の立場や心情を最優先にした対応を行って参ります。
今後については、状況に進展があり次第、随時報告すると書いていた。しかし、この記事の公開後にBuzzFeed newsに情報提供があった。
「進捗が報告されていない」「ほかにも性被害事件があるが、泣き寝入りをしているのが現状とのこと」とのことだった。
ONEれいほくに回答依頼
![](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-04/8/2/asset/buzzfeed-prod-web-08/sub-buzz-10329-1523170416-1.jpg)
BuzzFeed Newsは4月3日、ONEれいほくに質問状を送った。4日、代表の矢野大地氏からメールで回答があった。回答全文を載せる。
ーー謝罪文に「被害にあわれた女性」と記していますが、被害の状況についてどのように把握しているのでしょうか。
当時、筆者からヒアリングして聞いた内容としては、体を触られた(具体的には不明)などのセクハラ被害。→強姦や準強姦といった内容ではないという認識
事件に関しまして、当団体の事業外での出来事でしたが、両者(筆者・当事者男性)とも関わりがあったため、当団体が間に入り両者へのヒアリングを行いました。
警察への被害届も出さないという希望だったので、対話による解決を目指しましたが、両者の意見の食い違いからそうした場を設けることは出来ませんでした。
その後、同じようなことが起こらないように再発防止策を整備することで団体として対応致しました。
ーー女性が記事で加害者としている男性と、ONEれいほくはどのような関係にあるのでしょうか。
加害者としている男性は活動地域にお住いの方。当団体の活動の中でも農業体験などの地域の生活について教えてくださっていた方のひとり。
ーー今回の件についてどのように調査をされているのでしょうか。
・当時対応したスタッフへのヒアリング(当時の状況について確認)
・本件以外にも当団体で受け入れた方へ性被害等のトラブルにあった方がいないかを再度調査。
ーー「今後、状況に進展があり次第、随時報告させて頂きます」とありますが、それ以降、報告はありません。どのような対応をしているのでしょうか。
被害に遭われた女性、筆者、当事者男性、関係各所への対応や今後の活動を行う上で気をつけるべきことについて専門機関に相談しながら検討している。
ー弊社宛に「れいほくでは他にも性被害事件がおこっており、泣き寝入りをしているのが現状」との情報提供があります。ほかに被害を訴えている女性はいるのでしょうか。
当団体が把握している性被害事件については他にありません。
また、当団体としても被害に遭われた女性への配慮が不十分だったことや危機管理の甘さを痛感致しました。
被害を受けた女性の気持ちを汲み取り、その後の対応に関して十分な対応やサポートをできなかったことを団体として深く反省しています。
よって、今後活動再開までにはそうした対応ができる体制を再度整えていくこと、また専門機関との連携等を行うことで再発防止に全力で努めていく予定です。
どうぞよろしくお願いいたします。(回答ママ)
再度、謝罪文を公開
![](https://img.buzzfeed.com/buzzfeed-static/static/2018-04/8/1/asset/buzzfeed-prod-web-01/sub-buzz-20992-1523167122-1.png)
BuzzFeed Newsに回答した翌日5日に、ONEれいほくは「当団体が関わる記事への対応と今後の方針について」と再度、サイトで謝罪文を公開した。
被害に遭った女性への対応が不十分だったと謝罪した。また、被害があった日のことが詳細に書かれていた。
それによれば、2017年3月26日、告白した筆者と友人が、地域の男性と観光をし、夜に男性宅で食事をしていたとのこと。
その後、自宅に帰る方法がなかったため、男性宅近くの拠点に泊まりたいとの連絡がONEれいほくにあったが、スタッフが不在である旨を伝えたところ男性宅に宿泊することになった。
3月27日の午後、記事の筆者から「友人が男性宅にいないから一緒に探して欲しい」という連絡があった。
同日夜、ONEれいほくは、筆者を通じて2人がなにかしらのセクハラ被害を受けたことを把握したとのこと。
ONEれいほくは、事業外でのできごとではあるが、両者とも関わりのある人物だったことや、被害に遭った女性が警察への対処を求めなかったことから、両者の間に入りヒアリングをしながら解決策を模索したとのこと。
しかし、解決方法が判断できなかったため、同じような被害が事業内でも起こらないように、滞在者の受け入れ時に地域住民との関わり方について、注意喚起するという対応を行ったとした。
その上で、以下の2点が特に不十分な対応だったとしている。
- 外部機関に相談せずに、専門的知識のない当団体が事件への対応を行なった。
- 被害を軽く考え、事件後の男性との関わりを継続したこと、HP上に男性の写真を載せるなどして被害に遭われた女性への配慮が欠けていた。
謝罪文では「今回、筆者の発信をきっかけに、被害に遭われた女性への配慮が不十分だったことや危機管理の甘さを痛感致しました」と記している。
また、理事会で「当団体の事業を休止すること、休止期間中に事業再開に向けての体制づくりを行うこと」を決定したことを明らかにし、休業期間中は専門的な立場からの意見をもらうなどして、再発防止に向けて取り組むとしている。
追記
ONEれいほくの主張に対し、ブログの筆者からBuzzFeedに対し、再反論の連絡があった。
・ONEれいほくの謝罪文には、「その後、家に帰る足がないため、男性宅近くの拠点に泊まりたいとの連絡がありましたが」とある。しかし、ブログの筆者は、当日、もともと男性宅から近いところにあるONEれいほくの拠点に泊まる約束をしていたため、男性宅で食事をしたという。しかし、拠点のスタッフが急きょ、不在になり、そのスタッフから男性宅に泊めてもらうよう指示があったため、宿泊したと主張する。
・ONEれいほくは「事業外での出来事」としているが、ブログの筆者は、県外の友人を団体と関わりがある人物と招き入れていることから、「事業内で起きたこと」と主張している。
・ONEれいほくは、BuzzFeed Newsの取材に「警察への被害届も出さないという希望だったので」と回答した。しかし、ブログの筆者はこれについて、被害を訴える女性が「団体の存続を最優先したい」という配慮から被害届を提出しなかったと主張する。
BuzzFeed Japanはこれまでも、性暴力に関する国内外の記事を多く発信してきました。Twitterのハッシュタグで「#metoo(私も)」と名乗りをあげる当事者の動きに賛同します。性暴力に関する記事を「#metoo」のバッジをつけて発信し、必要な情報を提供し、ともに考え、つながりをサポートします。
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