高橋芳朗・古川耕 RHYMESTER入門講座

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高橋芳朗さんと古川耕さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で初心者向けのRHYMESTER講座を開催。宇多丸さんのパートナーを務めるTBSアナウンサー熊崎風斗さん、日比麻音子さん、宇内梨沙さん、山本匠晃さんにRHYMESTERの功績について紹介していました。


(高橋芳朗)今夜、ここからお送りするのはみなさん(『アフター6ジャンクション』パートナー)にRHYMESTER宇多丸さんのことを、まあ宇多丸さんがいない間に知っていただくための授業を行いたいと思います。みなさん、一流アナウンサーですから共演者のことは予め、バッチリ調べ上げてますよね?

(熊崎風斗)まあ……みなさん、たぶんそうしていると思いますけども。

(高橋芳朗)あ、熊崎くん、いま「まあ」っていいましたね。

(熊崎風斗)みんなね、アナウンサーとして。

(高橋芳朗)RHYMESTERのメンバーの名前、全員言ってくれます?

(熊崎風斗)Mummy-Dさん。あと……わかっているんですけど……。

(高橋芳朗)アハハハハハッ!

(高橋芳朗)ええと……。3人組……。

(高橋芳朗)今夜はいま一度、ヒップホップアーティストの。

(山本匠晃)JINさんね。

(熊崎風斗)ああ、ごめんなさい、そうだ。JINさん、すいませんでした。

(高橋芳朗)ヒップホップアーティスト、宇多丸としての功績を学んでいきます。今回は宇多丸というか彼が所属するRHYMESTERの功績を学んでいくという感じですかね。全体は三部構成で進めていきます。第一部は日本のヒップホップ黎明期から活動する牽引者。第二部はライブに絶大な自信を持つキング・オブ・ステージ。第三部はクロスオーバーで地平を切り開くチャレンジャーということになっております。みなさん、台本ないですね。メモ取っていますね。

(日比麻音子)はい。

(高橋芳朗)じゃあ、さっそく行きましょう。第一部。日本のヒップホップ黎明期から活動する牽引者ということです。まず、熊崎くんもわからなかったんでRHYMESTERのメンバー構成から紹介したいと思います。

(熊崎風斗)JINさん、大変申し訳ありません……。

(高橋芳朗)宇多丸、ラッパー。1969年生まれ。東京都文京区出身。Mummy-D、ラッパー。1970年生まれ。神奈川県横浜市出身。DJのDJ JIN。1973年生まれ。神奈川県横浜市出身ということになっております。まずはどんなアーティストか、曲を聞いてみましょうか。去年リリースしました最新アルバム『ダンサブル』からご紹介しましょう。RHYMESTERで『Future Is Born feat. mabanua』です。

RHYMESTER『Future Is Born feat. mabanua』


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(高橋芳朗)はい。というわけでRHYMESTERの最新アルバム『ダンサブル』から『Future Is Born feat. mabanua』、聞いていただいております。みなさん、まずそもそもラップとかって聞きますか?

(日比麻音子)あまり私は聞かなかったですね。

(熊崎風斗)私もそんなに聞かないですねど。

(宇内梨沙)どんなジャンルかっていうのも正確によくわからないです。

(高橋芳朗)でも普段、いまは勝手に入ってきますよね。コマーシャルとか見ていたり、普通の歌もののJ-POPの曲でもラッパーが入ってきたりとかありますもんね。じゃあ、これからRHYMESTERの歴史を追いつつ、彼らの功績を紹介していきたいと思います。RHYMESTERの結成、誕生は1989年です。早稲田大学のブラックミュージック研究会GALAXYで知り合った宇多丸さんとMummy-Dさんによって結成されたという。ちなみにこのGALAXYというサークルにはTBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』パーソナリティーのジェーン・スーさんも所属していたという。

(一同)へー!

(高橋芳朗)とんでもないサークルですね。TBSラジオを牛耳っています(笑)。彼女はDJ JINさんと同期ですね。はい。


(宇内梨沙)ほうほう。

(高橋芳朗)1989年に結成ということは、来年で30周年。つまり、『アフター6ジャンクション』アナウンサー陣は山本匠晃さん。あなたを除いて全員RHYMESTER結成後に生まれているということになります。

(熊崎風斗)私が生まれたのが結成した年ですね。

(高橋芳朗)ちなみにRHYMESTERがデビューアルバムをリリースしたのが日比さんが生まれた1993年です。これでもう、どれだけキャリアが長いかっていうのがよくわかるかと思うんですけども。もう、現存している日本のヒップホップグループとしては、スチャダラパーが1988年結成なんですけども、スチャダラパーとRHYMESTERがいちばん古い。

(古川耕)そうでしょうね。で、それは世界的に見ても結構な希少種ですね。

(高橋芳朗)そう。これだけ長い期間に渡って安定した活動を続けているヒップホップグループはもう世界的に見てもかなりレアです。

(一同)へー!

(古川耕)この長いキャリアの間に何年か沈んだりとか、グループとして活動をしていない時期が含まれるはずなんですけど、RHYMESTERの場合はそれがほぼないんですね。

(高橋芳朗)ずっと安定して、ずっと上り調子です。はい。で、このRHYMESTERの約30年におよぶ歴史がどんなものだったのか?って端的に言いますと、アメリカで生まれたヒップホップを日本でどう表現するのか? 日本語でどうやってラップを表現するのか? いかにして日本にヒップホップを根付かせていくのか? その格闘の歴史と言っていいんじゃないかと思います。で、いま聞いてもらった『Future Is Born』の歌詞も、宇多丸さんのパートはヒップホップの誕生の瞬間を歌っているんですね。

(宇内梨沙)へー!

(高橋芳朗)1973年、ニューヨークのブロンクスでヒップホップというのは誕生したんですけども。で、Mummy-Dさんのパートはアメリカで生まれたヒップホップが海を超えて日本に渡ってきてからのことを歌っています。よく見ると、わかりません? で、去年出た最新のヒット曲ですよ。この『Future Is Born』は。去年出たような曲でもまだこういうね、題材を扱っていることからもよくわかると思うですけど、常にリスナーに向けてヒップホップの啓蒙を続けてきたんですね。RHYMESTERは。


(山本匠晃)うんうん。

(高橋芳朗)で、RHYMESTERのすごいユニークな点としては、メンバー3人がそれぞれ音楽ライターとして活動をしていたことがあるんですよ。だから自分たちが作るRHYMESTERとしての音楽はもちろんですけど、ライターとしても音楽雑誌とかにヒップホップに関する文章を寄稿して啓蒙活動を行ってきているんですね。そんなRHYMESTERのある種の所信表明と言える曲でグループの最初の本格的なヒット曲になったのが1998年にリリースされた『B-BOYイズム』という曲です。みなさんに渡した歌詞カードのいちばん上ですね。この曲、もうRHYMESTERを知る上で確実に押さえておかなくちゃいけない曲です。

(山本匠晃)みんな聞いていたなー。

(高橋芳朗)ああ、本当? タイトルぐらいは知っていますか? RHYMESTERにとっても日本のヒップホップにとっても非常に重要な意味を持つ曲です。『B-BOYイズム』は当時のRHYMESTERの思想を集約したような曲であると同時にBボーイ、Bガール。つまり日本のヒップホップファンの団結を促すような曲なんですね。徐々に当時、大きくなり始めた日本のヒップホップシーンをひとつにまとめるような、そういう曲として機能したところがあります。実際に歌詞を読んでもらうとすごくわかりやすいと思うんですが。たとえば宇多丸さんの歌詞にこんなフレーズがあります。「数はともかく心は少数派。俺たちだけに聞こえる特殊な電波。よく見ときな、最後にはどちらの勝ちか? 天の邪鬼たちの価値観」という。まあ、彼らが置かれた状況がこれでよくわかると思います。当時のヒップホップリスナーの。

(熊崎風斗)うん。

(高橋芳朗)で、曲のサビにはこんな一節もあります。「けして譲れないぜこの美学 何者にも媚びず己を磨く 素晴らしきろくでなしたちに届く轟くベースの果てに」と。当時はこの曲が心の拠り所になっていたり、心を鼓舞されたっていうヒップホップリスナーがもう大勢いたんですね。で、宇多丸さん自身、この曲全部を格言級のパンチラインで埋め尽くしてやろうっていう、そういう意気込みで書いた歌詞だそうです。だからこの曲をじっくり聞き込めば、RHYMESTERの基盤になっているヒップホップ観みたいなのがよくわかりますんで。ちょっとじゃあ聞いてみましょうか。RHYMESTERで『B-BOYイズム』です。

RHYMESTER『B-BOYイズム』



(高橋芳朗)はい。RHYMESTER、1998年の作品で『B-BOYイズム』を聞いてもらっております。山本さんなんかもう一緒に歌って盛り上がっていたじゃないですか。

(山本匠晃)中学、高校ぐらいかな? 周りももう本当に覚えてカラオケとかで一緒に歌っていたりとか。

(高橋芳朗)そらで歌っていたね。

(山本匠晃)よく聞いていましたよ。この『B-BOYイズム』はみんな知っていました。

(高橋芳朗)みなさん、どうですか? 聞いてみて、感想としては。

(宇内梨沙)でもこれ、色褪せないというか。20年前の曲ですよね。いま聞いてもかっこいいなって。

(高橋芳朗)そうですね。全然古い感じはしませんけども。古川先生から補足があるということで。

(古川耕)ちょっと、じゃあマニアックな話をしますけども。この曲が当時、どういうような反応をもって受け入れられたか?っていうか、この音楽性というのはどういうものだったのか?っていうと、決して当時のヒップホップのすごい流行っていたタイプの音楽性とはちょっと違うんですよ。実は。この曲、いわゆる当時流行っていたヒップホップなんかよりはテンポが早いんですね。普通の曲よりも。それは何を意味していたか?っていうと、いわゆるダンサーたち。『B-BOYイズム』の「Bボーイ」っていうのはこれ、「ブレイクダンサー」のことを指すわけですけども、彼らが踊りやすいようにっていう風に指向された曲だったんですね。

(一同)へー!

(古川耕)だから当時は、このオケのことをバックトラックって言うんですけど、「すごいトラックを作ってきたな」って当時は受け止めました。で、それは彼らは何をもってしてこういうトラックを選んだか?っていうと、ヒップホップというのは……「ラップ」というのは歌の歌唱法のひとつ。つまり、しゃべるようにバーッと言葉をつめてやる。あれは歌唱法であって、それが「ラップ」と呼ばれるもの。ところが、ラップと近いような意味で使われる「ヒップホップ」っていう言葉もありますよね。あれは「ラップ」も含むし「DJ」も含むし「ダンス」も含むし「グラフィティ」も含むし……っていう、もうちょっと大きなくくり。言ってしまえば「文化」という風に言われているんですよね。

(高橋芳朗)うん。

(古川耕)で、日本のヒップホップというのはそれぞれ、当時から独立した状態であったんですけども。それが一気にこの98年から99年にかけてまとまろうっていう動きっていうのがあったわけです。その時にこの曲というのが出たことによって、一気に日本のヒップホップというのがひとつの形にまとまろうっていう動きを見せたんですね。

(高橋芳朗)一体感が出たんですね。

(古川耕)そんな時、1999年に「BBOY PARK」っていうイベントが夏に行われるんですけども、そこのテーマ曲のように鳴り響いていた曲がまさにこの『B-BOYイズム』という曲だったんですね。

(高橋芳朗)そのBBOY PARKのイベントの最後にかならず歌われるような曲になって。

(一同)へー!

(古川耕)で、ステージ上にダンサーたちがワーッて上がっていって。RHYMESTERというよりはBボーイたち、ダンサーたちの祝祭のような光景っていうのが繰り広げられるという背景を持つ曲なので、歴史的にたいへん重要な曲だということなんですね。

(日比麻音子)質問です。なんでこれを書こうというか出そうというか……モチベーションとかきっかけってあったんですかね?

(高橋芳朗)当時のRHYMESTERのみなさんが話していたのはBボーイ、ブレイクダンサーたちのヒップホップ求道者ぶりと言いますか。そういうところに非常に感銘を受けて彼らを称えるような曲を作りたいという、そういう背景がありました。

(日比麻音子)それでまとまっていったという。

(高橋芳朗)そうですね。

ヒップホップの啓蒙活動を続ける

(古川耕)先ほど、RHYMESTERはそれぞれライターの活動をしていたということを話しましたが、それは単なる紹介のみならず、「ヒップホップというものはこんなもんでしょう」という啓蒙をするような活動をずっとしてきたんですね。だから文筆活動もRHYMESTERとしてのアーティスト活動も基本的には全部同じことをやっていたとも言えるわけですね。日本にヒップホップというものをちゃんと、「これは音楽というよりも文化のようなものなんだ」っていう風に伝えようというのを、ライター活動だったりアーティスト活動だったり、いろんな活動で彼らはやっていたという。だからライターの活動とアーティスト活動が全然離れていないというか。ということで、日本のヒップホップはある時期を境にすごく文化として大きく合体して成長したっていう側面があるんです。

(高橋芳朗)うん。じゃあ、ちょっと続けさせていただきます。RHYMESTERが日本でどうやってヒップホップと向き合っていったか?っていうところで話したいんですけども、RHYMESTERの『グレイゾーン』という曲のMummy-Dさんの歌詞にこんなフレーズがあるんですよ。「俺の仕事は本場もんの翻訳じゃない」という。



(高橋芳朗)だから最初に言った通りRHYMESTERはアメリカで生まれたヒップホップを単にトレースするのではなくて、日本で日本語で表現するにはどうすべきか? その試行錯誤をずっと繰り返してきたんですね。で、その取り組みがどういうものだったのか? RHYMESTERの『リスペクト』という曲の宇多丸さんの歌詞を読むと非常にわかりやすいので、ちょっと紹介しますね。

(宇内梨沙)はい。

(高橋芳朗)こんな歌詞です。「体突き動かすアフリカンビート×日本語ラップ+缶ビール」。これ、「体突き動かすアフリカンビート」っていうのはヒップホップのルーツとなるブラックミュージック、ファンクミュージックのことですね。それにかける、日本語ラップ。それにプラス、缶ビールは「ノリで行きましょう」みたいな感じなんですかね。「体突き動かすアフリカンビート×日本語ラップ+缶ビール 探し出す自分の方程式 正解は誰も見たことねえ景色 たとえばイタ飯 パスタにタラコ足したメニューが定番と化したごとく 日本の歴史上に残すべきもの作った生き証人 まさしく先見の明」という。こういう感じです。



(宇内梨沙)ほうほう。

(高橋芳朗)で、この『リスペクト』という曲が収録されている『リスペクト』っていうアルバムのジャケット。メンバーが明治維新の時の軍装の格好をしているんですね。

リスペクト

(日比麻音子)へー!

(高橋芳朗)で、これについて宇多丸さんが『リスペクト』の歌詞、さっき言った「たとえばイタ飯 パスタにタラコ足したメニュー」っていう……タラコスパゲティーっていうのは要は折衷文化を表している。ジャケットの明治維新の軍装みたいなものも。折衷ゆえにみっともない部分もあるけど、それでももがきながらオリジナルなものを目指すという姿勢を表現したかったという風に話していたんですね。ただ、そのもがきを笑う人たちもいるわけですよ。

(宇内梨沙)そうですよね……。

(高橋芳朗)そうなんです。やっぱり「ヒップホップは黒人カルチャー」っていうイメージがすごく圧倒的に強いじゃないですか。だから「日本人にラップができるわけがない、日本語はラップに合わない、日本にヒップホップは根付くわけがないでしょ」みたいな偏見とか無理解とかね、そういう誤解がずーっとあるんです。これはいまだにあるんですね。まあ20年前、30年前に比べればだいぶマシにはなっているんですけども、完全に払拭されたとは全然言い難い状況なんですね。で、RHYMESTERはそういう世間のヒップホップに対する偏見に常に先頭に立って徹底的に戦ってきた人たちなんですね。宇多丸さんなんか、ヒップホップを扱った当時の朝日新聞の記事があまりにも誤解と偏見に満ちていたので、あの人、電話してますからね!

(宇内梨沙)直談判!

(高橋芳朗)そうそう。

(古川耕)当時ですね。いまで言う、「電凸」ってやつですよ。

(日比麻音子)どんなことが書かれていたんですか?

(高橋芳朗)その記事はRHYMESTERの『リスペクト』の明治維新の軍装の格好をしているジャケットを見て、「若者たちが右傾化している」みたいなことを書いたんですね。「なにもわかってねえじゃねえか!」みたいなことを彼は電話して。電凸したわけです。

宇多丸 VS 朝日新聞


(日比麻音子)そんなことじゃねえぞと。

(高橋芳朗)そうそうそう。

(古川耕)その当時、雑誌の記事にも書いていたりしますからね。

(高橋芳朗)『アフター6ジャンクション』の火曜日のパートナーの宇垣美里さんがこの間、放送で「ラップってあの、チェケラーみたいなやつ」みたいなことを言っていましたけど、世が世なら、取っ組み合いのケンカになっています。

(一同)フフフ(笑)。

(高橋芳朗)いまは温厚になっている宇多丸さんですけども。

(古川耕)ナーバスな時代だったら……。

(高橋芳朗)『B-BOYイズム』を出した頃だったら、取っ組み合いだったろうなと。

(山本匠晃)私も聞いていてちょっとピクッとしました。「大丈夫か!?」っていう。

(宇内梨沙)でもこの言葉というのはラップをしらない人からすると、いちばん表現しやすい言葉でもあるんですよ。ちょっと違うんですかね?

(高橋芳朗)まあね。

(古川耕)ラッパーが「チェケラー」って言っていないか?っていうと、言ってはいるんですよ。これ、ややこしい話で。

(高橋芳朗)やっぱりちょっと茶化されているように感じるというか。

(一同)ああー。うんうん。

(古川耕)まあ、デリケートなところなんで。別に言う人は言っていてもいいと思うんですけども。いろんな複雑な事情があって日本のヒップホップはいまだに戦っている状態が続いているといえば続いているので。まだまだヒリつくところはありますよという。

(高橋芳朗)で、こうしたRHYMESTERのヒップホップにまつわる偏見との戦いを紹介したいんですけども。結構強烈な究極の1曲があるんですけど、2015年にリリースしました『ガラパゴス』という曲を紹介したいと思います。タイトルの『ガラパゴス』は、「ガラパゴス化」などの「ガラパゴス」。どちらかと言えば、ネガティブなニュアンスで使われることの方が多いのかもしれないですけども。ここでは独自の進化と発展を遂げてきた日本のヒップホップに対してポジティブなニュアンスで使われています。

(日比麻音子)うんうん。

(高橋芳朗)で、この曲は元陸上選手でスポーツコメンテーターの為末大さんがTwitterに投稿したコメントに対するRHYMESTERからのアンサーなんです。為末さんのあるツイートが曲を作る大きな原動力になっているんですね。で、こういう内容なんですよ。そのツイートを紹介します。「悲しいかな、どんなに頑張っても日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある。またアメリカ人が着物を着ても最後の最後は馴染みきれない。私達は幼少期の早い時期にしみ込んだ空気を否定できない。」というツイートがあったんですね。


(高橋芳朗)で、これからその『ガラパゴス』を聞いてもらいますけども、まず為末さんの見解に対してRHYMESTERがどんな回答をしているのか? 歌詞をじっくり追いながら聞いてほしいのと、あとこの曲に注目してほしいのは歌詞で反論しているのはもちろんなんですけど、技術でも反論しているんですよ。だから、「どんなにがんばっても日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある」という主張に対抗するには、歌詞で意義を唱えるだけじゃダメなんだと。日本語でラップすることが本当に違和感があるのか? 日本のラップの真価を見せつけるような曲にしなければいけない。

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(日比麻音子)実力を曲全てで……ということですね。

(高橋芳朗)そう。それがここでは完璧に、見事に達成されているという。じゃあ、聞いてみましょうか。RHYMESTERで『ガラパゴス』です。

RHYMESTER『ガラパゴス』


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(高橋芳朗)RHYMESTERで『ガラパゴス』、フルコーラスで聞いていただきました。じゃあ、どなたか感想ありますか?

(熊崎風斗)いやー、いろんな背景があってこういう歌詞になっているんだって聞くと、入ってき方が違うというか。ものすごい胸にしみて……。

(高橋芳朗)しかも、めちゃわかりやすいでしょう?

(熊崎風斗)わかりやすい!

(宇内梨沙)戦っているのがすごく伝わってくる。

(日比麻音子)素直な言葉だからこそ、グサッと来るというか。グッて伝わるっていうか。

(熊崎風斗)我々が常識だとか、「日本人らしさはこれだ」とか言っているけど、それってね、一般の人とかからしたら非常識になるんじゃないか?って思いますよね。偏見の積み重ねがただ常識になっているだけなんじゃないかとか。うーん、いろいろと感じました。

(高橋芳朗)いいですね、くまくま。本当に素晴らしい。

(宇内梨沙)熊崎さんの「その『らしさ』の疑わしさ」のところ、私も実は線を引きました。なんかこう、特にアナウンサーとかって「らしさ」との戦いだな、みたいなのはあって。すごくいま……。

(日比麻音子)世間のイメージだとか。

(高橋芳朗)ねえ。自分にフィードバックして聞いているの、最高ですね。あなたたち!

(熊崎風斗)「アナウンサーらしく行動しなさい」みたいなことを言われますけども、アナウンサーらしさってなんだよ?っていう。

(山本匠晃)もしかしたらね、そのガードのいちばん強い仕事のひとつかもしれないもんな。たしかにな。だから社交ダンスとか、企画で出る時にいっぱい言われたもん。本当にいろんな、「ピーチクパーチク」ご意見をいただいて。「ありがたいな、すごくありがたいな」とは思っていたんですけどもね。

(日比麻音子)「常にはみ出すしかないのさ」ですからね。

(高橋芳朗)おっ! もう刺激的な歌詞がこれでもかっていうほど詰め込まれていると思うんですけども。この流れで、日本語でラップすることに違和感なんかねえんだよ!っていうのを畳みかけるように紹介したいので、もう1曲この流れで聞いてもらいたいと思います。RHYMESTERのラップの上手さがすごくよくわかる曲です。これは歌詞カードを見ないで、普通に乗って聞いてほしいです。ラップで高揚させられる体験を味わってほしいというか。じゃあ、聞いてください。これは亡くなってしまったMAKI THE MAGICさんという凄腕プロデューサーの方が提供したトラックの上でラップしている曲です。RHYMESTERで『Come On!!!!!!!!』。

RHYMESTER『Come On!!!!!!!!』



(高橋芳朗)はい。RHYMESTERの2010年の作品で『Come On!!!!!!!!』を聞いていただいておりますが、いかがですか?

(山本匠晃)もうどんどん後半になるにつれて言葉のブワーッと波というか。どんどんどんどん乗れる感じの。

(宇内梨沙)体も自然と動いてきて。

(日比麻音子)まさに『Come On!!!!!!!!』な感じの。

(高橋芳朗)まさに『Come On!!!!!!!!』な感じ。

(熊崎風斗)純粋にかっこいい!

(高橋芳朗)かっこいいよね!

(宇内・日比)かっこいい!

(高橋芳朗)そうなんですよ。日本語でラップすることに違和感なんてないんです。

(古川耕)技術的にもそうだし、たとえば「日本人がラップで『俺が強いんだ! ナンバーワンだ!』っていうのは日本人のメンタリティーじゃないでしょ?」っていう批判もあったんです。昔は、よく。でもね、たとえば2006年に『〈悪口〉という文化』っていう本があったりするんですけども。日本の庶民はむしろものすごいしゃべっているし、「俺はすごいんだ」とか「お前は全然ダメだ」っていうのを悪口で言い合うみたいな町民文化というのはあるっていうのが、割と最近では研究でわかって来ていたんで。全然日本人はしゃべるし、自慢するし、悪口言うし……っていうのは昔からあったっていう話もあるので。日本語でラップは普通にできていますよっていう話なんですよね。

〈悪口〉という文化
Posted at 2018.4.7
山本 幸司
平凡社

(高橋芳朗)はい。じゃあちょっと、時間が相当押していますので、第二部に行きます。第二部のテーマはこちら。ライブに絶大な自信を持つキング・オブ・ステージ。ちょっと固い話が続きましたけども、RHYMESTERは聞いての通り難解な音楽をやっているわけではなく、作品ももちろん素晴らしいんですけど、とにかくライブパフォーマンスに定評があるグループなんです。最高のライブバンド、盛り上げ上手なんですね。で、いまかかっている『キング オブ ステージ』。彼ら、自分たち自らを「キング・オブ・ステージ(ステージの王)」という風に呼んでいるんですね。



(一同)うんうん。

(高橋芳朗)で、2007年に武道館公演を成功させていて。ただ、RHYMESTERを最高のライブバンドといっても、みなさんがよくご存知のバンドとはかなり違います。ギターもない。ベースもない。ドラムもない。キーボードもない。楽器はないんです。基本的には。DJが操る2台のレコードプレーヤー(ターンテーブル)。基本的にはこれだけで演奏をします。これと2本のマイクロフォンだけです。この2台のターンテーブルを使ったライブはヒップホップの原点と言えるようなスタイルなんですけど、世界的にもいま、これを実践しているアーティストはかなり少ないです。

(熊崎風斗)あ、そうなんですか!

(高橋芳朗)そうなんです。RHYMESTERはいろんな意味で世界的に希少な……。

(宇内梨沙)伝統的なラップを守り続けているグループなんだ。

(高橋芳朗)で、DJがレコードプレーヤーでどのように音楽を演奏するのかといいますと、まず2台のレコードプレーヤーそれぞれに全く同じレコードを乗せます。同じレコードを2枚、買います。で、曲のイントロ部分とか間奏部分。要は演奏だけになる部分をミキサーを使って交互に行き来させて、それを延々と繰り返すことによって歌のない部分のオケを作るんです。わかりますよね?




(宇内梨沙)曲を行き来してっていうことですか?

(高橋芳朗)そうそう。同じところをずーっと行き来すると、オケができるでしょう? このオケを音楽用語で「ブレイクビーツ」って言うんです。で、このブレイクビーツの発明がヒップホップの誕生なんですよ。だから初期のヒップホップのパーティーというかイベントとかではDJが延々とブレイクビーツをかけて、曲の演奏部分をループさせた音を流して、そのDJの傍らにマイクを持ったMC、ラッパーが立って踊っているお客さんを煽っていたという。だから、RHYMESTERが行っているライブスタイルはそれの延長と言ってもいいでしょうね。JINくんが2台のレコードプレーヤーで生み出すオケ、ブレイクビーツに乗せて宇多丸さんとMummy-Dさんがラップをしているということになります。

(一同)うんうん。

(高橋芳朗)で、その2台のターンテーブルと2本のマイクロフォンだけでRHYMESTERがパフォーマンスを行っているスタジオライブ音源があるので、それを聞いてもらいたいと思います。RHYMESTERで『ライムスターイズインザハウス』。

RHYMESTER『ライムスターイズインザハウス』



(高橋芳朗)はい。RHYMESTERで『ライムスターイズインザハウス』を聞いていただいております。まあ、かっこいいですよね? 宇多丸さん、かっこいいんですよ。で、詳しくはRHYMESTERのライブ映像作品がいっぱい出ています。最近も最新のライブを収めたDVD・ブルーレイが出ているんで。それにDJ JINさんの手元。彼がライブの時に何をやっているのががばっちり映っている映像がありますんで。そちらを参照していただけたらなと。

(一同)はい。

(古川耕)これ、今日はみんなに持って帰ってもらうんで。

(日比麻音子)あ、課題ですね。

(古川耕)課題です。

KING OF STAGE VOL.13 ダンサブル RELEASE TOUR 2017-2018 [DVD]
Posted at 2018.4.7
RHYMESTER, 堀込高樹, HUNGER
ビクターエンタテインメント

(山本匠晃)ありがとうございます。

(古川耕)来週、感想をレポートにまとめてくるように。

(高橋芳朗)フフフ(笑)。で、RHYMESTERのライブって自分たちの演奏がこうして2台のターンテーブルと2本のマイクロフォンだけで行われているということをこれでもか!っていうぐらいに強調するんですよ。どうやってこの演奏が行われているかをステージ上でちゃんとお客さんに説明するんですね。それで演奏するから、めちゃくちゃ盛り上がるんですよ。ターンテーブルの演奏だけでこんなことができるんだ!っていう。

(宇内梨沙)なんか全くどう使うかもわからない機械が……。

(高橋芳朗)だから、さっき言ったDVDなりブルーレイを見ていただいて、その上で、RHYMESTERが自らフェスを主催しております。2015年から毎年5月に開催されている『人間交差点』というフェスですね。これ、ジャンルを超えていろんなアーティストと交流のあるRHYMESTERらしい、非常にバラエティーに富んだラインナップになっております。今年も5月13日(日)に開催が決定しております。


(高橋芳朗)出演はKICK THE CAN CREW、Base Ball Bear、PUNPEE、SCOOBIE DO、BRAHMANなど。で、いま後ろでかかっているのがこのフェスのテーマソング『人間交差点』となっております。



(高橋芳朗)ちょっとだからこれ、みんなで行きましょう!

(日比麻音子)行きたいです!

(宇内梨沙)生でRHYMESTER、見てみたい!

(高橋芳朗)RHYMESTER、見ましょうよ。盛り上がりましょうよ。

(山本匠晃)高橋芳朗さんのお話を聞けたから、より濃い……目線ができたから、ありがたいなと思いますけども。

(高橋芳朗)でね、これは来週も続きます。

(一同)フハハハハハッ!

(高橋芳朗)終わりません。第三部、入らなかったので。よろしくお願いします。今度はね、割と宇多丸個人。彼のサブカル活動みたいなところですかね。そういったところにもスポットを当てることになると思いますので。よろしくお願いします。

(一同)よろしくお願いします!

<書き起こしおわり>