日本を代表するRPG「ドラゴンクエスト」のスピンオフ作品「ドラゴンクエスト モンスターズ スーパーライト」。サービス開始4周年を記念して異色のコラボ企画「ドラクエ落語 新宿末廣亭」が開かれた。
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明治30年創業の老舗寄席・新宿末廣亭。3月6日、名人が彩った高座に、おなじみの音楽を出囃子に和装のモンスターが登場すると満場のファンは沸いた。
開口一番の「ドラキ家らりほの輔」(笑福亭茶光)は上方噺「動物園」をドラクエの世界観でリメイクし、「ゴーレム亭めるきど丸」(笑福亭羽光)は「ドラクエあるある」をちりばめた新作。「ナイト亭ぴえーる之丞」(笑福亭鉄瓶)はスライムの座布団に座り、古典落語「田楽喰い」を下敷きに笑いを誘う。トリは「スライム家ぷる蔵」(三遊亭とむ)。この日唯一の江戸落語は「都都逸親子」ならぬ「ドラクエ親子」。「『い』と『り』が違う 『わ』と『れ』が違う 復活できず 日が暮れる」など、ファン心理をくすぐる「七七七五」に思わず膝を打つ。
ドラクエ歴30年の男性(45)は「落語としてもドラクエものとしても成立している」と話し、落研出身という女性(22)は「あるあるネタに共感しました」。
異色のコラボだが、スクウェア・エニックスの柴貴正プロデューサーは、「ドラゴンクエストも落語もお話を楽しむものという共通点がある」と言う。
「ドラゴンクエストの世界は文字回しが非常に特殊で、改行などの感覚を大切にしています。それって『間』だと思うんです。落語も『間』。今日見ていて、親和性が高いと思いました」
テレビ番組「笑点」でもおなじみの「大喜利」は、もともと寄席の観客からお題を募り、答えを競い合う芸だ。お題を与えられることに慣れている落語家はコラボを受け入れやすいのではないか。お笑い芸人・末高斗夢としてデビュー後、現在は落語家として活動中の三遊亭とむさんはこう語る。
「落語は一人の芸ですし、コラボがやりやすいと思います。先人が作ってくれた古典落語というできあがったものがあるので、そこにいかに入れていくのか。今後も機会があればやっていきたいですね」
新宿末廣亭はこれまでにも、ヒト型ロボットのペッパー、ドラえもん、ユニクロなどとコラボしてきた。自身もドラクエユーザーだという末廣亭の見川亮太さんは語る。
「落語が初めてという人もいましたが、とても好感触でした」
安易な企画と一線を画すのは、創業以来の看板とクオリティーがあってこそ。末廣亭にはコラボの依頼が多いが、背景にはブームの枠を超え定着した落語人気がある。広報を務める林美也子さんは、落語の世界が舞台のドラマ「タイガー&ドラゴン」(2005年放送)が画期だったと語る。
「それ以降、圧倒的に入門が増えました。いま入門から楽屋入りまで1年以上かかるんです。分母が増えたら、そこには脚光が当たるしファンもつく。出待ち入り待ちも増えました」
その頃入門した人が二つ目となり、人気を下支えしている。「ファンの方は、前座で高座返しをしている時から応援してくれます。嬉しいですね」
演者も観客も熱い落語の世界。今後も異色のコラボが見られそうだ。(編集部・小柳暁子)
※AERA 2018年4月9日号
「ドラクエ」と落語が異色コラボ“お話”という共通点
右から三遊亭とむさん、笑福亭鉄瓶さん、笑福亭羽光さん、笑福亭茶光さん、司会の林家けい木さん (c)2014−2018 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.、(撮影/遠崎智宏)