経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

消費診断・2月は意外に強い結果

2018年04月08日 | 経済
 皆が知りたがるのは「どうすれば景気は良くなるか」なのだが、経済学は答えてくれない。「生産性を高めれば良い」とはいうのは定番でも、結核患者に「栄養と休養が大事」と言うのに似て、間違っていないだけで、本質を衝いてはいないのだ。では、なぜ企業は、生産性を高めようとするのか。ここで、利益を追求するからという経済学の教義にはまると、他に何も見えなくなってしまう。

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 家計調査の公表が1週間遅れになったため、景気の診断は、2週に分けて行わざるを得なくなった。いかに筆者でも、データがなければ、ものは語れない。特に、消費はGDPの6割を占めるから、鉱工業指数を見て、製造業や輸出を探れば十分というわけにいかない。かつては、それで済んだ時代もあったが、「円安にして輸出を増やせば景気が良くなる」式の幻想に未だ囚われているから、今のダメな日本経済がある。

 2月の家計調査は、消費水準指数(除く住居等)が前月比-1.4となったから、日経が「消費小休止」とするのも、否むべからざるところだ。とは言え、筆者は、生鮮の高騰という悪条件の中では、意外に強い結果だったと見ている。これは、「再浮上」という一般的な見方に連なる。家計調査をベースとする2月の総消費動向指数(CTIマクロ)は前月比-0.1で、1,2月の平均は前期比が名目+0.5、実質+0.3となっており、十分な強さである。

 また、家計調査をベースにしない日銀・消費活動指数+は、2月が前月比横バイで、1,2月の平均は前期比が+0.4であり、名目なら前期比+1.0にもなるだろう。特にサービスが強い。前期比が+0.4なら巡航速度であり、物価高の中では立派なものだ。3月の結果次第では、1-3月期に沈まない可能性もある。GDPに近い消費総合指数は、1月は低めだったので、2月分の公表が楽しみだ。

 この週末には、2月毎月勤労統計の公表もあった。1月に定義変更のため不規則な動きだった常用雇用は、前月比+0.4と強めだった。現金給与総額も前月比+0.5と高く、物価上昇の一服により、1月と違って実質賃金との開きもない。こうした下地があるから、消費は意外に強いわけである。これで生鮮が下がれば、消費の強さは顕在化する。「再浮上」どころか、沈まず飛躍という展開もあり得る。

(図)



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 日経によれば、ローソンは営業減益を覚悟で省力化投資を行うようだ。徹底して目先の利益を追求するなら、投資を避けるはずだが、そうならないのは、行々、人材獲得競争で敗れて事業が立ち行かなくなるためである。つまり、経済学の教義に反し、生産性を高める理由は、利益より、人手不足に本質がある。我々は教義に毒され過ぎ、人手不足だから投資せざるを得なくなるという、当たり前の現実が見えなくなっている。

 人手不足なのは、十分に需要があるからだ。つまり、生産性を上げるには、十分な需要がなければならない。ところが教義に毒されている人は、緊縮財政で需要を抜きつつ、やたらな優遇策で設備投資を引き出そうとする。知的枠組がないと、人手不足で設備投資がなされる現実を目の当たりにしても、さっぱり理解できず、念仏のように財政再建と成長戦略を唱え続けることになる。

 先にデータで見たように、雇用が拡大し、人手不足になり、賃金が上がり始め、消費は強さを示している。そして、日銀短観で分かるように設備投資の勢いが増しつつある。人材投資が行われるのも、能力不足でも採用して育成しなければ、人員を確保できなくなるためだ。企業は、利益に導かれるより、存続の必要に迫られて投資をする。そちらの動機がより切実なことは、常識で分かる話である。教義とは常識を捨てさせるものでしかない。

 身も蓋もないことを言えば、サービス業の生産性を上げるには、賃金を上げさえすれば良い。あとは、物価上昇でデフレートしないよう、製造業の生産性を上げつつ、緩い円安にして物価を冷やしていく。金融緩和・円安依存・輸出主導・緊縮財政・福祉削減の組み合わせとはまったく異なる経済政策だって、世の中には存在する。教義を守ることは、発想の自由を失うことでもあると知るべきだ。


(今日までの日経)
 景気回復、最長視野に 賃上げ後押しも外需に懸念。生産性高まらぬ雇用増 低賃金のサービス業へ集中 成長分野へシフト進まず。ローソン15年ぶり営業減益 人手不足で省力化投資膨らむ。 消費小休止 節約ぶり返し 2月0.9%減 寒波で野菜・暖房費増 再浮上の見方多く。

※最近、体がきつくてね。このコラムは「社会奉仕」で書いているので、「秘書さん」に手伝わせたりせず、データまで自分で処理しているから大変だよ。更新が減り、年寄りの繰り言のようになっているが、景気の良さに免じて許されたい。
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