年に一度、日教組の教員たちが全国から集まり“教育実践”を発表する教育研究全国集会(教研集会)。今年は2月5日から3日間にわたり、25の分科会・およそ690の報告が行われた。また、開催地が岩手県と東日本大震災の被災地だったため、原発に関する報告が多くあった。実は、日教組トップの加藤良輔委員長も、あいさつの中で、
「“フクシマ”を繰り返してはならないという思いも、再稼働の流れの中で踏みにじられようとしています」
そう述べたうえで、岩手で開催する意義について、
「“原発に頼る社会のありようを変えよう”という誓いを、私たちは決して忘れないというメッセージだと思っています」
と、語っていた。主催者あいさつで〈実践の中で私たちは“政治的中立”という要請と向き合わなければなりません〉と述べていた加藤委員長だが、“政治的中立”なんて言葉などすっかり忘れていた様子だ。報告された授業が、さらに踏み込んだ内容だったことは言うまでもない。
■非科学的な思いこみ
たとえば「平和教育」の分科会で、北海道北広島市の小学校の男性教諭が発表した主題は、〈反原発をめざした平和教育〉。政治的中立など最初から放棄しているのである。そして、
「“核と人類の共存はありえない”ことを強く訴えていく必要がある。子どもたちに正しい事実を伝え、自ら考え、正しく判断できる力を培っていくために、平和教育を充実させ、推進していかなければならない」
と訴えるが、実際には、非科学的な思い込みを強要し、子どもたちから自ら考え、正しく判断できる力を奪っているだけだろう。
北海道大学大学院の奈良林直教授(原子炉工学)は、
「日本の原子力事業は福島の事故の反省の上に立って、いかに安全性を高めるかを考えています。再稼働の流れの中で、フクシマを繰り返してはならないという思いが踏みにじられる、と言いますが、福島の復興を早めることと原発再稼働は別の問題です。また、“核と人類の共存はありえない”との主張は、核兵器と原発を混同している。北朝鮮の核兵器は断固非難すべきですが、それと原発はまったく違います」
そう糺すが、勇み足はこの程度では終わらない。「平和教育」の分科会で、鹿児島県薩摩川内市の小学校の女性教諭はこう述べた。
「実は川内原発、反対運動を繰り返してきましたけど、再稼働が決まりました。非常に反対運動をやってきた中で、このようなことがあると気持ちも萎えてしまいます。でも、どんなことがあってもあきらめないということを、みんなで共有しながら活動を続けていくことだと思っています」
“活動家宣言”に続いたのは、こんな話だった。
「担任として、子どもたちと原発の話はしてきました。そんな中で、5、6年生で6人の子どもしかいないんですが、全員が原発には反対なんです。でも、保護者は6人中4人が賛成です」
この教諭、子どもたちや保護者を、原発への賛否によって分類することの異常性には、まるで気づいていない様子であった。
■“放っておいてはいけないか、と”
やはり同じ分科会で、神奈川県海老名市の中学校の女性教諭は、
「どうしても、原発再稼働に賛成、基地はなくなってはいけない、武装もすべき、と言う子も出てくる」
と言い、東日本大震災直後に比べ、原発に反対する子が減った現状を憂えた上で、こう述べたのだ。
「成績のいい子、リーダー的な子の中に、そういう意見の子って出てきていると思う。そういう子は、政治の世界や経済界を牽引したり、技術者として最先端を行ったりするはずなので、放っておいてはいけないかな、と思っています」
多様な意見を認めない教師こそ放っておいてはいけないのは、論を俟(ま)たない。
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シリーズ〈教研集会に見る末恐ろしい「日教組」亡国の洗脳(3)〉。
(4)へつづく(2月25日(木)掲載予定)。
「特集 生徒に反原発を強制! 反安倍総理を呼び掛け! 教研集会に見る末恐ろしい『日教組』亡国の洗脳」より
「週刊新潮」2016年2月18日号 掲載
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