[GDC 2018]アメリカの格闘ゲームイベントの運営者が語る,「eスポーツの成功は“仲間意識”にあり」
Thiher氏と言えば,“波動拳”から採ったと思われる「The Hadou」というニックネームで昔から活動しているゲーマーで,「EVO」「CEO Fighting Game Championships」「TEKKEN World Tour Online Tournaments」「Red Bull Proving Ground」,そして「Killer Instinct World Cup」といった,格闘ゲームの様々なトーナメント運営に関わってきた人物としても知られる。
そんなThiher氏が,「特定のゲーム企業やプラットフォームに縛られることなく,誰でも楽しめるイベント」を企画して,「Combo Breaker」を主催したのが2015年のこと。以来,4年目となる今では,アメリカ北中部最大級のゲームイベントとして認知されるまでになったが,氏は発起人としてイベントディレクターを兼任したまま,Twitchの正規雇用者としても活動の場を広げている。
登壇したThiher氏の第一声は,「eスポーツはマーケティングである」というものだ。これまでほぼ格闘ゲーム1本に絞ったイベントに出入りしてきたため,「全体的なeスポーツ業界の姿を把握しているわけではない」と前置きした上で,「ゲームはプレイヤーを第一に考えなくてはならず,ゲームイベントは彼らをゲームに“アタッチ”してもらうための手段に他ならない。そして,イベントを成功させることで興味を持続させ,それがセールスや新しい市場の開拓にもつながり,より長期的なマーケティングを可能にする」というのが,彼の格闘ゲームで培った持論であると語った。
このあたりは,企業側からeスポーツ市場を見た場合の真っ当な論理だが,「プレイヤーが第一」であることが重要な部分だ。企業が前に立ちすぎては,ゲーマーは白けてしまうし,Thiher氏も「間違ったマーケティングでゲームコミュニティを台無しにしてしまうこともある」と話すように,プレイヤー主導でコミュニティやゲーム文化を形成させるよう,もしくは少なくと彼らがそう感じられるように誘導しなければならない。
もともとFPSやストラテジーなどのeスポーツは誰かの家にパソコンを持参してLANケーブルでつなぐような形で発展したもので,格闘ゲームもローカルレベルのゲームセンターから派生してきた。「ゲームをスポーツ化したのはゲームを作る人ではなく,我々ゲーマーなのだ」という論理である。
事実,Thiher氏が「ゲーマーとしての理想」を追求して発起したCombo Breakerは,「格闘ゲームの祭典」として始められたもので,どんなゲームのトーナメントを開催するかは,前年のファンのリアクションを見て判断するという。「ストリートファイター」「鉄拳」「Killer Instinct」「モータルコンバット」「大乱闘スマッシュブラザーズ」,そして「GUILTY GEAR」といったタイトルは,ほぼ常連といったところだが,そのほかのタイトルも会場のどこかで紹介していたり,PCを含む様々なプラットフォームで非公式にプレイヤーがトーナメントを即興開催したりできるという。
メインタイトルは,いくつものステージが連なるミュージックフェスタのような形式にしており,どこかで必ずトーナメントが行われているといった“祭典”の雰囲気を作り出しているという。また,インディーズタイトルや古い格闘ゲームのトーナメントなども行っており,「どんな格闘ゲームでもこなせる天才ゲーマー」を目指し,毎年参加してくる人もいるそうだ。
さらに,プロゲーマー達と観衆の垣根を取り払い,会場でお気に入りのゲーマーと出会ったり,対戦が行われるようなこともある。2年前には,ヒップホップアーティストのルーぺ・フィアスコさんが自前で登録し,お忍びでイベントに参加していたらしく,そうとは知らずに隣に座ってゲームについて語り合っていた一般人と,本当のゲーム仲間になってしまったのだというからすごい。
このように,格闘ゲームという1つのゲーム文化を通して“仲間意識”が生まれることで,イベントにおいては肩をたたき合い,お互いを奮起できるような関係を築けるわけだ。「こうしたゲーマー達は,“本物”であり,本物であるからこそゲーマー達がゾッコンになる」とThiher氏は述べて締めくくった。
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