ポケモンを余り知らない大学生が主人公になりました。   作:しおみず
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フルバトルの果てに!

「サトシさん、ワカバタウンのウツギ博士から、お届け物が届いております。受け取りのサインをお願いします。」

 

「あ、はい。」

 

決勝戦のポケモンをメインのセンターで登録していると、大会のスタッフから声をかけられた。

何事かと思うとウツギ博士から頼まれたおつかいのお礼が来たようだ。

サインをして、封筒を受け取る。

 

「チケット系…現金、なわけないか。」

 

世の中、金が二番か三番ぐらいなので金だと嬉しい。

封筒を太陽にかざして透かすも入っているのはチケット袋。

小切手かなと思ったが、現金を渡してくるほど私がお金大好きな人間だと知っていない。

一先ずは近くの椅子で封筒を開け、チケット袋の中身を確認する。

 

【アルトマーレ・グランドホテル

ロイヤルスイート(キング) カップル無料宿泊券】

 

「えっと……」

 

なんだこれとしか言えない。

直ぐにパソコンを立ち上げ、アルトマーレやグランドホテルについて調べる。

 

「…ヴェネツィアじゃねえか…」

 

ジョウト地方の小さな島で水の都と呼ばれているアルトマーレ。

何処からどう見てもヴェネツィア…イタリアと近畿地方になんの繋がりがあるのだろう。

いやそれよりも、最高級のチケットを送ってこられたことが重要だ。

 

「サトシ」

 

「っ!?…な、なんだアメッカか。」

 

チケットを見なかったことにしようとしていると、アメッカが何時の間にか背後にいて過敏な反応をしてしまった。

 

「どうしたんだ、後一時間で決勝戦だぞ?」

 

「いや、なんでも…ない…」

 

「…普段から嘘つきで隠し事があるのはバレバレだが、そこまで反応すると…なにか新しい隠しごとをしているな!」

 

パッと私が座っている椅子を引っ張り、パソコンの画面を見るアメッカ。

ジッと見た後、キーボードの隣に置いてあるチケット袋の存在に気づく。

 

「…サトシ、絶対に優勝して。

それと…もし、もしよかったら隠していることを教えてくれないか?」

 

「…死亡フラグの様なナニかを立てるのをやめないか?」

 

色々と察したアメッカ。

直ぐにパソコンの電源を落とし、スタジアムに向かおうとする。

右手と右足同時に出ている…バレる前に金券ショップに売れば…いや、もういいや。

とにもかくにも、優勝しよう。

 

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

「やぁ、サトシ。」

 

「…残念だったな。」

 

「いや、ある意味良かったよ。」

 

決勝戦の前の前哨戦とも言うべき、三位決定戦。

シゲルは負けてしまいベスト4になってしまった。

選手控え室で見ていたが、惜しい試合だった。

 

「どう言う意味だ?」

 

「君に負けて、三位決定戦にも負けて決心がついたんだ。

ポケモントレーナーを引退して、ポケモン研究家を目指そうかなって…」

 

「良いのかそれで?」

 

「悔いはない。

それに、オーキド博士だって何時まで現役か分からないし、庭園に居るポケモンの管理はケンジじゃ限界がある…旅をしてポケモンと触れあって色々とポケモンを知って、もっと知りたいと思ったんだ。」

 

「そうか…」

 

「君は引退しないでくれよ。

この僕に勝ったんだ…ポケモンマスターになってくれよ。」

 

「言われなくてもなってやるさ…またバトルできるだろ?」

 

「ああ、勿論だとも。」

 

シゲルとは暫くは会わなくなるだろう。

控え室を出るとドンとナニかを叩く音が聞こえる。叫び声も聞こえる。

シゲルのシロガネ大会は文字通り終わった…そして今から私のシロガネ大会も最後を迎える。

 

「『出場者は五百人をも越えたジョウトリーグ・シロガネ大会!

三回の予備選を行い、予選リーグで点数を奪い合い、決勝トーナメントを勝ち抜いた!

一人はアゲトビレッジのヒカル選手、一人はマサラタウンのサトシ選手!!泣いても笑っても、これで最後!!先攻はサトシ選手!フィールドは草のフィールド!!』」

 

「最初から全力でいくぞ、リザードン!」

 

『グォウ!!』

 

ポケモンのダメージが酷すぎれば次の日野試合に出せないとなるが、この試合が最後になるので後先考えず、全力全快で試合が出来る。

一体目にリザードンを導入した。

 

「ゆけ、カビゴン!」

 

『カンビ』

 

ヒカルの一体目はカビゴン。

…どうするべきか…

 

「リザードン、かえんほうしゃ!」

 

審判のバトル開始の合図と同時に、業火を浴びせるリザードン。

カビゴンは特に効いていない。あついしぼうのせいかダメージが小さい。

 

「カビゴン、のろい!」

 

『カンビ!』

 

「技を変えるぞ、りゅうのいぶき!」

 

力を溜めるつもりか、攻撃をしてこないカビゴン。

ここぞとばかりに技を切り替えるも、やはり大したダメージは無い。

 

「ダメージは無かったけど、追加効果は発揮された。」

 

『カビィ』

 

避けることなくりゅうのいぶきを受け続けた為に、まひ状態になったカビゴン。

これで動けなくなり、ジワジワと殴れる…が

 

「カビゴン、ねむる!」

 

ねむるを発動してくる。

状態異常と蓄積してきたダメージを一気に消して、回復をするカビゴン。

持っているポケモンだから、やることが手に取るように分かるな。

 

「戻れ、リザードン。」

 

「『おおっと、サトシ選手のリザードン。

流石にカビゴンが相手になると交代をせざるえませんか。』」

 

「ガラガラ、頼んだぞ!」

 

『ガラッ!』

 

あのままリザードンで戦ってもねごとで攻撃、目覚めればねむるで回復の無限ループ。

カビゴンに対して決定打を持たないリザードンに無駄な力を使わせるわけにはいかない。

 

「カビゴン、ねごと!」

 

『カビィ…』

 

『ガラッ!?』

 

寝ていたカビゴンが起き上がり、物凄い早さで突っ込んできた。

カビゴンは色々と覚える為か、なんの技が出るか分からず、避けることに集中するも、すてみタックルが避けれなかったガラガラ。

ぶっ飛ばされるも、直ぐに体勢を立て直すガラガラ。

 

『ガラッ…ガラッ…』

 

「岩のフィールドだったら、終わってた。ガラガラ、じわれ!」

 

『ガラッ!!』

 

眠り状態は強いが、動けない。

すてみタックルを終えたカビゴンは立つのを止め、フィールドに座りながら眠っている。

太い骨を地面に叩きつけるとじわれを起こし、カビゴンを落とす。

 

『カビィ…』

 

「カビゴン、戦闘不能!ガラガラの勝ち!」

 

「戻れ…ゆけ、ガルーラ!」

 

『ガルゥ!』

 

「…この感じ…」

 

カビゴンを倒し、次に出てきたのはガルーラ。

こいつ、セキエイ大会で戦ったマサレオと同じ感じがする。

文字通りナニかが違うトレーナーだ。

 

「ガラガラ、ホネこんぼう!」

 

『ガラッ!』

 

今度はガルーラに骨を向けるガラガラ。

ガルーラは素手で受け止めるも、結構なダメージが入った。

 

「ガルーラ、メロメロ!」

 

「っ、まずい!」

 

『ガルゥ』

 

骨を受け止めたままウィンクをするとピンク色のハートが出現した。

ガラガラはピンク色のハートに当たると、目がギャグ漫画とかであるハートに変わりモジモジしはじめた

 

「同性なら効かないメロメロ…ガルーラは♀しかいない個体なのに、随分とギャンブルな技を…」

 

「ガラガラ、メガトンパンチ!」

 

『ガルゥ!』

 

メロメロで動くことをせず、見惚れるガラガラに拳を入れたガルーラ。

私の前まで吹き飛ばされ、目はピンク色のハートの形から渦巻き状になっていた。

 

「ガラガラ、戦闘不能!ガルーラの勝ち!」

 

「戻れ、ガラガラ…」

 

ゲームならば即座に♂♀が分かるが、現実だと見分けがつかない。

メロメロなんて三分の一のギャンブル性の高い技を使ってくるとは…しかしどうするか。

私が持っている♀は…0…メロメロに対応出来るポケモンは…

 

「登録しているポケモンじゃ、お前だけだ」

 

『クォーン!』

 

「スイクン、ぜったいれいど!!」

 

性別の概念が無いスイクン。

メロメロは効かないし、レベル差で圧倒できる。

ぜったいれいどのブレスを吐いて、ガルーラを一撃で倒した。

 

「これで二体目…来るか!」

 

「ゆけ、サンダー!」

 

『クァー!!』

 

次を倒されれば休憩に入り、文字通り後がなくなる。

三体目にエース級のポケモンを出さないといけなく、相手がスイクンなのでやはり出てきたか、サンダー。

オレンジ諸島で見た個体と違い、強い。

 

「スイクン、れいとうビーム!」

 

「サンダー、ひかりのかべ!」

 

伝説同士の激突。

これが初のせいか少し冷や汗が出てきた。

スイクンのれいとうビームをひかりのかべを出して耐えるサンダー。

飛行タイプは大抵はこれで倒せると言うのに、全くといって効いていない。

 

「サンダー、ドリルくちばし!」

 

『クァー!』

 

「額の水晶で防げ!」

 

体を回転させ、突撃してくるサンダー。

避けることが出来ないと、額の水晶を盾代わりにして防ぐ。

 

「『スイクンのれいとうビーム、サンダーのドリルくちばし。

どちらも並のポケモンでは防げないお互いの攻撃を、受け止め防いだ!伝説の名は伊達じゃない!』」

 

「サンダー、あまごい!」

 

「スイクン、ハイドロポンプ!」

 

目を光らせ雨雲を作り出すサンダー。

豪雨が振りだすと共に無防備なサンダーに向けてハイドロポンプを放ったスイクン。

 

「ひかりのかべ…」

 

豪雨の影響により、威力が上がっているはずなのに倒れないサンダー。

ひかりのかべが邪魔をしている。無ければ決まっていた…

 

「サンダーは確実にかみなりを使ってくる…一発は耐えれるな?」

 

ジッとスイクンを見つめると、顔を向けてくれたスイクン。

コクりと頷いてくれた…一発は耐えれるならば話は早い。

 

「サンダー、かみなり!」

 

『キェエエエエエエ!!』

 

若島津みたいな叫び声を上げると、スイクンに落ちてくる雷。

スイクンは動かず、必死になり耐える。

 

『クォオオン!!』

 

遠吠えと共にスイクンはかみなりを払う。今しかない

 

「スイクン、ぜったいれいど!!」

 

瞬きよりも早く、サンダーの前に立ち絶対零度のブレスを叩き込むスイクン。

カチンコチンに凍った…スイクンはかみなりが直撃して瀕死寸前だが、相手はサンダー以外に伝説を持っていない。痛み分けと思えば安いものだ。

 

「サンダー、かみなり」

 

「な!?」

 

至近距離から当ててカチンコチンに凍っているサンダー。

氷が砕けると大抵のポケモンは倒されるのにサンダーは倒されておらず、かみなりを落とした。

 

「レベルが…上だったのか?」

 

ぜったいれいどが命中したのに倒されていない。

そうなると考えられるのはただ一つ、レベルが上だったということ。

レベルが相手よりも少しでも上だったら一撃必殺技は効かない…今の今まで切り札として温存し続けたツケか…

 

「スイクン、戦闘不能!サンダーの勝ち!」

 

「戻れ、スイクン…リザードン、頼んだぞ!!」

 

豪雨やまぬフィールドに出したリザードン。

他のポケモンで挑もうならばドリルくちばしの餌食になる。レベルの差が激しい。

 

「サンダー、げんしのちから!」

 

「リザードン、はがねのつばさで岩を壊せ!」

 

岩を出現させ飛ばしてきたサンダー。

かみなりを耐えたのを見て、いわタイプにチェンジしてきたみたいだな。

リザードンは翼を銀色にして飛んできた岩を壊す。

攻撃技として連発は出来ないが、相手の技を防ぐのにはちょうどいいな。

 

「ひかりのかべの効果は健在…リザードン、ちきゅうなげだ!!」

 

「サンダー、かみなり!」

 

『グォオオオオウ!!』『キェエエエエエエ!!』

 

サンダーを掴むと同時に落ちたかみなり。

リザードンを伝って、電気が当たるも効いていないサンダー。

リザードンは苦しそうな表情をするもどんどんと上昇をして雨雲の上にいった

 

「雨雲の上ならかみなりを…リザードン、一気に急降下だ!」

 

雨雲の上のせいか、どうなっているかは分からない。

だが、サンダーを掴んでいたのは分かる。リザードンの声も聞こえる。

私の指示が聞こえたのか、急降下してきたリザードン。サンダーはじたばたと暴れている

 

「グォウ!!」

 

「サンダー、でんきショック!」

 

地面に叩きつけると同時に最後の力を振り絞ったサンダー。

飛ぼうと旋回しようとしたリザードンに電撃が命中し、撃墜した。

 

「リザードン、サンダー、両者ともに戦闘不能!!」

 

「『サトシ選手とヒカル選手!

互いに一番のポケモンを撃破され、残すところは三体になりました!

三体倒されたことにより、十分間の休憩に入ります!皆様、今のうちにトイレを』」

 

「痛み分け…どころじゃないな…」

 

サンダー一体に対してこちらはリザードンとスイクンを失った。

サンダーを持っているときから嫌な予感はしていたが、強いな。私が居なかったら、あっさりと優勝できていたんじゃないだろうか。

 

「残り三体…こちらも三体…エースは互いに失った…」

 

「…トシ…サトシ!!」

 

「…聞こえてる…」

 

「そうか。」

 

リザードンをボールに戻しアメッカの元に戻ると、返事をしなかったからか何度も何度も耳元で名を呼んできた。

返事をすると満足したのか微笑み飲み物を渡してくるアメッカ。

 

「サトシぃ、慌てずにいきなさい!

負けたって次があるわ!今は楽しむことを考えなさい!!」

 

「バトル中、ずっと暗い表情だったぞ。笑顔を忘れたら、勝てるものも勝てない。」

 

余程何時もの表情じゃなかったのか、観客席から野次を飛ばすママさん。

隣にいるオーキド博士も頷き、アメッカは私の頬を掴んで笑うんだと引っ張る。

笑顔…バトルで笑顔…残念ながら今はそういうの出来ないな。

 

「ところで、次は何処の地方で旅をする?」

 

「…今、それを言うか?」

 

「なら逆に聞こう。

このまま勝ったとして…チャンピオンリーグで勝てるのか?」

 

後もう少しで勝者が決まると言う時にキツい事を言ってくるアメッカ。

ジョウトリーグを優勝すれば、次に待ち構えているのはチャンピオンリーグ、チャンピオンリーグで優勝すれば四天王に挑んで、チャンピオンに挑む。

今ここで苦戦しているならばチャンピオンリーグで負ける可能性もある。

四天王やチャンピオンなんてリーグ優勝者相手に手を抜いて本気を出して挑んでくれないで有名だし…次の地方か…

 

「この新しいポケモン図鑑は、ホウエンのデータが入ってる。

となると、行くのはホウエン地方…まぁ、大分先になると思うが。」

 

「ホウエンか…温泉、一緒に入りたいな。」

 

「…出来れば他の人に見られたくない。」

 

「…サトシ、急にデレないでくれ…」

 

他の人に見られたくない発言を他の人に見せたくない発言と捉えたアメッカ。

顔を真っ赤にして俯く…まぁ、他の人に見せたくないな。

 

「あ、待って!」

 

「待たない。」

 

フィールドに戻ろうとすると止めてきたアメッカ。

なにをする気か大体想像がつくので止まらずにフィールドに戻った。

 

「『さぁ、シロガネ大会の本当の最後を迎えました!

両名ともに残りのポケモンは同じ数、力に差はございません!』」

 

「いけ、へラクロス!」

 

『へラクロ!』

 

四体目はパワー自慢のへラクロス。

私の予想通りならば、残りはへラクロスでいける筈…

 

「いけ、スターミー!!」

 

『ヘアッ!!』

 

ヒカルの四体目はスターミー。

…どういう感じのスターミーだろう…

 

「へラクロス、相手はエスパータイプを持ってる。早急に終わらせるぞ!メガホーン!」

 

『へラクロ!』

 

色々な戦法があるスターミー。

どんな型か分からないので早急に決めるべく、角を光らせ突撃するへラクロス。

 

「スターミー、ちいさくなる!」

 

角がぶつかる瞬間に体を小さくして避けたスターミー。

草のフィールドを上手く使い完全に姿を消した。

 

『へラクロへラクロ?』

 

何処だ何処だとスターミーを探すへラクロス。

強靭な肉体のへラクロス相手だと、あのサイズじゃどんな攻撃をしても全く効かない。

大きくなる機会を狙うしかない。

 

「スターミー、こうそくスピン!

 

「そのサイズでだと!?」

 

クルクルと回転しながら姿を現すスターミー。

へラクロスの周りを旋回し、撹乱をする。

 

「へラクロス、飛べ!」

 

『へラクロ!』

 

この状況でのこうそくスピン。

なにかをしてくると直ぐに距離を取ろうとするも

 

「元のサイズに戻って、どくどくだ!!」

 

『ヘアッ!!』

 

こうそくスピンを続けたまま元のサイズに戻って、へラクロスの頭上に飛び猛毒を浴びせた。

どくどくにちいさくなる…!

 

「戻れ、へラクロス!」

 

猛毒状態になった瞬間、直ぐにへラクロスを戻す。

猛毒状態にして徹底的に逃げまくる戦術。一撃必殺なへラクロスでは相手が出来ない。

 

「デンリュウ!」

 

『バルゥ!』

 

ハッサムを入れていない事を少しだけ悔やむ。

へラクロスのメガホーンが強すぎるのとはがね技の少なさのせいか、入れずらい。

 

「デンリュウ、あまごい!」

 

『バルゥ!』

 

額の赤い玉を光らせ、雨雲を呼び出すデンリュウ。

スターミーはみずタイプでの攻撃をしてこない。

 

「かみなりだ!」

 

『バァルウウ!!』

 

「スターミー、10まんボルト!」

 

『ヘアッ!!』

 

雨雲から雷を落とすが、スターミーは雷に10まんボルトをぶつけて相殺しようとするも雷に押されて命中する…が、10まんボルトを使った影響かダメージが少ない。

 

「となると、直接殴るしか…デンリュウ、かみなりパンチ!」

 

『バァ、ルウ!』

 

「スターミー、ちいさくなるからのどくどく!」

 

拳がぶつかる瞬間、体を小さくして避けるスターミー。

それと同時に猛毒を吐いてデンリュウに当てる。

 

「…どうしようか…」

 

デンリュウまでもが猛毒状態にされ、最後の一体はスイクン敗北を想定して入れたパルシェン。10まんボルトが使えるとわかってるから交代は自殺行為。

 

「デンリュウ、かみなり!」

 

「大きくなって、10まんボルト!」

 

スターミーの方がデンリュウの雷を落とす速度よりも早いせいか、相殺される。

10まんボルトでのダメージの激減と猛毒状態のダメージの増加…

 

「スターミー、じこさいせい!」

 

「一撃…当てればいける…」

 

更に回復技。

多分、みがわりとかも覚えている完全に不動なバトルをする。

サンダーだけかと思ったら何気にエグい戦法をとってきたな…

 

「デンリュウ、わたほうし!」

 

『バルゥ』

 

フーッと強く息を吹き掛けると雨でも洗い流せないほど溢れでる胞子。

スターミーに付着すると綿になり、すばやさを下げる…が、これでも追い付けない。

 

「デンリュウ、かみなり!」

 

「スターミー、10まんボルト!!」

 

三度繰り返される攻防。

少しだけ10まんボルトの発動に遅れるも、ダメージは激減される。

 

「デンリュウ、シグナルビーム!」

 

「なっ!」

 

直接攻撃は当たらない、特殊攻撃は当たるが相殺されて威力が低いなら相殺出来ない技をぶつければいい。

額の赤い玉から光の光線に命中したスターミー。

 

『ヘアッ…』

 

真ん中の宝石が黒く濁ったスターミー。

なんとか倒せたが、雨雲は消えた。

 

「…ガラガラ、頼んだぞ!」

 

『ガラッ!!』

 

「…デンリュウ、色々と後がないのは分かってるな?」

 

『バ、ルゥ』

 

猛毒に苦しみながらも、コクりと頷くデンリュウ。

六体目にはパルシェンが控えていて、パルシェンは物理攻撃に強い。

 

「ガラガラ、ホネこんぼう!」

 

「デンリュウ、あまごい!」

 

『ガラッ!!』

 

『バルゥア!?』

 

一気に距離を縮められ、骨の打撃の連撃をくらうデンリュウ。

地面に落ちる直前に赤い玉をキラリと光らせると雨雲が出てきた。

 

「デンリュウ、戦闘不能!ガラガラの勝ち!」

 

「戻れ……さて、残すところは僅かか。」

 

『シェン!』

 

「ガラガラ、はらだいこ!」

 

『ガラララッ!!』

 

「パルシェン、からにこもる!」

 

パワーを最大限まであげてきたガラガラ。

はらだいこは便利な技だが、体力を半分にする大きなデメリットがある。

リザードンやフシギバナみたいに体力が少ない時に発動するとくせいは無いから、一気に攻撃力を最大には出来ないけど、つるぎのまいの方が良いかもしれない。

 

「ガラガラ、いわなだれ!」

 

「パルシェン、もう一度からにこもる!」

 

二度目のからにこもるを使い、ガラガラのいわなだれを耐えるパルシェン。

ツボツボとハガネールについで三番目の防御力を持つだけあって全くといって効いてない。

 

「パルシェン、ハイドロポンプ!」

 

「ガラガラ、ホネブーメラン!」

 

『ガラッ!!』

 

ハイドロポンプを全力で投げた骨で押し返そうとするガラガラ。

パルシェンは骨ごと押していこうとするがガラガラにぶつかる直前に水切れを起こす。

 

「…骨は完全に押し返せない。

ハイドロポンプを出しっぱにしても、途中で息切れならぬ水切れを起こす…パルシェン、こうそくスピンで撹乱しろ!」

 

『シェ!』

 

「ガラガラ、ホネこんぼうで打って打って打ちまくれ!」

 

殻を閉じて横に回転するパルシェン。

ある程度まで速度を出すとガラガラの直ぐ側を駆け抜けて撹乱をする。

直ぐにガラガラは骨をバットの様に持ち、打とうとするも、上手く打ち飛ばせない。

骨をぶつける事は出来るも飛ばせない。

 

『が、ガラッ…』

 

「…今だ、ハイドロポンプ!」

 

何度も何度も打ち飛ばすのを失敗したせいか、腕を痛めたガラガラ。

その隙を逃さず、閉じた殻を開き至近距離からハイドロポンプを決めた。

 

『ガラッ…』

 

「ガラガラ、戦闘不能!パルシェンの勝ち!」

 

「よし…」

 

五体目のガラガラの敗北と同時に小さくガッツポーズをとる。

これで残すところ一体…後一体だ…

 

「ゆけ、へラクロス!」

 

『ラクロ!』

 

「…最後の試合かもしれないって言うのに、最悪な試合だな。」

 

持っているポケモンが、出してくるポケモンが被っている。

自分で使っていて強くて頼りにしているから相手にしたら最後、面倒なのがよく分かる。

 

「…角の形が違う?」

 

ジッとヒカルが出したへラクロスを見ていると角の形が違うのに気付く。

角が若葉マークみたいな感じになっている…雌雄の違いを現しているのだろうか。

 

「へラクロス、いわくだき!」

 

「パルシェン、からにこもる!」

 

右手を光らせたへラクロス。

直ぐに殻を閉じて防御力を上げて、攻撃を防ぐも

 

「あ、下がった!」

 

上げた防御力を下げられてしまった。

追加効果の防御力ダウン、地味に痛いな。二回上げたのを無駄にされなければいいが…

 

「へラクロス、連続でいわくだきだ!」

 

「からにこもるを続けるんだ!」

 

背後に回り込み、何度も何度もいわくだきをするへラクロス。

パルシェンはその姿のせいか体を後ろに向けないと後ろを見れない。

閉じた殻を開けば、タコ殴りにされてしまう。本当に一瞬の隙を狙うしかない。

 

「へラクロス、マウントをとれ!」

 

「……どうする、どうする、どうする…」

 

パルシェンを横に倒し、乗っかかって殴る。

まずい、このままだと持久戦に入ってしまいパルシェンが負けてしまう…

 

「…か、からをやぶる!!」

 

『シェン!!!』

 

どうすればいいのか分からず、咄嗟に適当な事を言ってしまった。

だがパルシェンは何をすれば良いのか分かったのか、一番大きい殻を砕き、乗っかかっていたへラクロスのバランスを崩させこかした。

 

「今だ、ハイドロポンプ!!」

 

背中から倒れて、手を使わずに起き上がろうとするへラクロス。

その隙を逃すかとハイドロポンプを決めた…が

 

「へラクロス、きしかいせい!!」

 

『ラクロ!!』

 

へラクロスは起死回生を起こした。

ハイドロポンプを耐えきり、起死回生を起こした。

 

「パルシェン、戦闘不能!へラクロスの勝ち!」

 

『へラクロ!』

 

「戻れ…また、この展開か。」

 

「『さぁ、シロガネ大会決勝戦、互いのポケモンもラストとなります!

しかしなんと言う運命でしょうか!サトシ選手もヒカル選手も最後に残ったポケモンはへラクロス!片方は大きなダメージを、片方は猛毒を浴びており苦しい状態で持久戦は出来ません!!』」

 

『へラクロ』『ラクゥ…』

 

セキエイ大会と同じく、一対一になってしまった。

猛毒状態と大ダメージ…五分に見えるが此方の方が物凄く不利。

 

「「へラクロス、メガホーン!!」」

 

同時に指示を出すと、同時に攻撃をし唾競り合いをするへラクロス達。

パワーは五分五分と言ったところで、互いに一歩も引かないが…こっちは持久戦は出来ない。

何処かで一歩相手のへラクロスを越える一撃を加えないといけない。

 

『へラクゥ…』

 

体から紫色の泡を出す私のへラクロス。

猛毒が回ってきて、残す時間が後僅かだと警告してきている。

 

「手を変えるぞ、へラクロス、ミサイルばり!!」

 

『へラ!』

 

質よりも量に切り替え、ミサイルばりを連打するへラクロス。

最初は光らせた角で弾くも、余りのミサイルばりの数に押されていき体勢を崩していく。

 

「へラクロス、メガホーンだ!こらえるを使ってもいいように連発だ!」

 

ミサイルばりの連発で出来た隙を逃さず、突撃するへラクロス。

この状況でこらえるは出来るが、直ぐに攻撃の連発で倒せる。他の攻撃をするには少し溜めが必要で、その間にメガホーンでへラクロスを倒せる。

 

「勝った!!第三部ならぬ、ジョウトリーグ・シロガネ大会・完!」

 

「へラクロス、ねむる!」

 

「っな!?」

 

ここに来てねむるを発動した相手のへラクロス。

目を閉じると一瞬にして傷が回復し、私のへラクロスのメガホーンを受けきった。

 

「へラクロス、ねごと!」

 

『ラ…クゥ…』

 

ハヅキの使っていたケッキングと同じきあいパンチを寝たまま放つ相手のへラクロス。

私のへラクロスはギリギリのところでかわすと同じように拳を光らせた。

 

「見よう見まねで覚えたか!へラクロス、きあいパンチ!」

 

『へラク、ロゥ…』

 

「へラクロス!!」

 

きあいパンチを入れたへラクロス。

猛毒に耐えきれず、遂に倒れてしまった。

 

「…あれ、どっちだ?」

 

きあいパンチで吹き飛ばされた相手のへラクロス。

眠っているのか、倒されているのかイマイチ分からない俯せ状態になっている。

 

「お、おい、へラクロス!?」

 

ヒカルが声をかけても起きないへラクロス。

これは引き分けか?それとも判定敗けだろうか…

 

「っ……私の負けか…」

 

ゴキブリの様に腕や足をピクピクさせるへラクロス。

ゆっくりとゆっくりと起き上がったが直ぐに疲れたのか尻を地面につける。

 

『ラクロ…』

 

「サトシ選手のへラクロス、戦闘不能!!

ヒカル選手のへラクロスの勝ち!よってジョウトリーグ・シロガネ大会・優勝者、ヒカル選手!!」

 

「『決まったぁあああ!

長きに渡る激闘を制したのはヒカル選手!チャンピオンリーグの出場権をゲットしたぞ!

サトシ選手、健闘むなしく準優勝!二位に留まりました!才気溢れるトレーナーと言われていますが、やはり四つ上のトレーナー相手との経験の差が出たか!!』」

 

「戻れ…ありがとうございました!!」

 

長い戦いを見てくれた人達に帽子を脱いで頭を下げる。

本当ならば両手を上げて、大々的にお礼を言おうとしたが出来なかった。

十秒ほどたった後、頭を上げる。

 

「ごめん、ママ、オーキド博士。」

 

「いいえ、貴方がここまで来れただけでも立派よ。パパなんてリーグに出てないのに…」

 

そう言えば、父親を見たことないな。

何処でなにをしているんだろう…いや、会わない方がいいか。

 

「サトシ、どうじゃった今回の旅は。」

 

「まだまだ知らないことだらけでした…」

 

本当に知らない戦法もあった。

次に生かせるかと聞かれれば、生かせる。

特性と言うスキルを知った、ポケモンの新しい技を知った。となれば、後は叩き込むだけ。

もう一体、リザードンと同じぐらいにここぞと言う時のエースが居れば良いのがよく分かった。

 

「……ごめん、負けた。」

 

「…なにをしているんだ、お前は。」

 

呆れた顔をするアメッカに申し訳ないと謝る。

優勝出来ると思ったんだが、今回もダメだった…

 

「優勝すると何度も何度も言っていて結果は準優勝か…」

 

「面目無いです…」

 

「全くだ。

ひ、人を散々期待させておいてガッカリさせるとは良い度胸だ。」

 

珍しくキツいアメッカ。

当然か。バトルの相手をしてもらったりしてたのに、伝説のポケモンを仲間にしていてもこの結果だからな。

 

「御詫びとしてアルトマーレに連れていって…あれ、サトシ?」

 

「アメッカちゃん、サトシ、戻っていっちゃったわよ。」

 

前回の三位はまだ良い結果かもしれない。

最初だから許された結果で、二度目以降はそれ以上の結果を常に出し続けなければならない。

元の自分に戻るのかそうじゃないのか分からないが、どちらにせよ優勝できないと永遠に何も変わらない。

 

「サトシ、待ってくれ!

言い方が悪かった、その…勝つと信じてたから」

 

「火に油注いでるの自覚してるか?」

 

負けて傷心状態な私に勝つと信じてたとかはやめてくれ。余計に泣ける。

アメッカを置いて準優勝のトロフィー授与などを全てすっぽかし、ポケモンセンターに向かってポケモンを預ける。

 

「…はぁ、流石に二度目の敗けは堪えるな…」

 

前回以上のパーティーで挑んだのに結果は敗北。

優勝したヒカルは伝説を使っているのに有名なトレーナーじゃない…更に言えばハヅキは見たことのないホウエンのポケモンを使ってきた…抑止力的なのが私を殺しに掛かっているのだろうか。

 

「次はホウエン……はぁ、ダメだ…」

 

今回の敗けで色々と失った。

得た経験よりも失ったものが割と多い。

次に勝てると言うイメージが沸かない…と言うよりはこの世界に来て最初の頃に持ってた楽しむ心が無くなってしまった。

遊戯王とかと同じで勝っても負けても楽しければそれで良いと最初は思ってたのに、余計な事を多く考えるようになってしまった。

 

「あ、マサラタウンのサトシさんですか?」

 

「はい、そうですけど…」

 

酷く憂鬱になっていると声をかけてきた配達員。

何事かと思ったら、ボールペンを渡してきた。

 

「お手紙が3つあります。受けとりのサインをお願いします。」

 

「3つ…だと…」

 

 








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