サラリーマンも確定申告で節税を - 来年の確定申告に向けて知っておきたいこと
普段、意識する税金といえば、消費税です。その他の税金は、給料から毎月引かれているなぁ…という感覚くらいで、普段、どれくらい納税しているかについては、理解している方は少ないと思います。
実は、サラリーマンも確定申告をすることで税金を戻すことが可能です。今回は、どのような仕組みで税金が支払われているか、また、お得な節税をする仕組みについて、説明していきます。
~ 目次 ~
サラリーマンが払っている税金
まず、我々が払っている税金について、その仕組みを説明しましょう。
課税所得金額と住民税・所得税の計算方法
サラリーマンは、主に給料から、所得税および住民税を支払っています。課税の対象となるのは、収入からもろもろの控除等を引いた、課税所得金額というのが課税対象になります。この課税所得金額に、ある一定の率をかけたものが税額になります。
住民税はどうやって計算する?
住民税に関しては、市町村によって違いはありますが、一般的には課税所得の10%および4,000円と、所得の大小により率はほとんど変わりません。
所得税の計算方法は?
一方、所得税は稼げば稼ぐほど支払いも多くなる「累進課税方式」をとっており、以下の税率で計算されます。
例えば課税所得金額が800万円の場合、支払う税金は800×23%-63.6万円で、120万4千円が所得税になります。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超、1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁 所得税の税率 https://www.nta.go.jp/
課税所得金額の求め方は、給与収入から、様々な控除を引いた金額になります。
サラリーマンの場合、給与所得控除という項目で、下記のような控除がされています。例えばこれも、年収800万円の場合、800万×10%+120万円で、200万円が給与所得控除となり、実質の課税対象金額は600万円になります。
給与等の収入金額(※1) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40%(※2) |
1,800,000円超、3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超、6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超、10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
※1 給与所得の源泉徴収票の支払金額
※2 650,000円に満たない場合には650,000円
出典:国税庁 給与所得控除 平成29年分 https://www.nta.go.jp/
サラリーマンでも確定申告で税金が戻ってくる!
このように、サラリーマンは税率の額や対象となる金額が機械的に決まっており、節税をすることは難しいのではないか、と思う人もいるでしょう。
しかし、サラリーマンでも、実際には約20%の人が確定申告を行い、税金を還付してもらっています。節税をするポイントがいくつかあるので、それぞれについて解説します。
確定申告をしなければいけないサラリーマン
まずは、サラリーマンといっても、確定申告が必要なサラリーマンもいます。どのような人達が確定申告をしなければいけないのでしょうか。
高額所得者
まずは、給与の年間収入金額が、2,000万円をこえる場合は、確定申告する必要があります。いわゆる高額所得者と呼ばれる方々ですね。
2か所から給与がある方
2か所以上から給与の支払いを受けている人、副業をしている人も確定申告の対象となります。これには例外があり、副業、または主たる給与以外の給与収入が合計20万円以下の場合は、少額の所得とみなされて申請する必要はありません。
また、同族会社の役員等で、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料など、何かしらの収入を受け取っている人も対象です。
源泉徴収の猶予
他には災害減免法により、源泉徴収の猶予などを受けている人、源泉徴収義務のない者から給与等の支払いを受けている人も対象になります。
こういう人たちは、確定申告をしないと、脱税とみなされてしまいます。
お得に使える?「特定支出控除」とは
上記以外のサラリーマンであっても、もちろん確定申告は可能です。むしろ、いろいろなケースにおいて、確定申告をした方が、お得になることが多いです。
なぜ意識が低いか?
一般的に、日本では納税は月々の納税と、年末調整のみで済まされることが多いですが、たとえばアメリカの場合だと、納税は個人の責任なので、サラリーマンであっても税金の支払いは自分で行います。
このため、アメリカ人の方が税に対する意識が高いことが多いです。日本の場合、納税は強制ですが、還付は申告制なので、せっかく返ってくる税金があっても、それを見逃してしまう人も多いものです。
賢く使って、しっかり税金を還付してもらいましょう。
特定支出控除の枠組みが拡大
還付制度の一つとして、特定支出控除というものがあります。
従来、サラリーマンは基礎控除という形で、基本的な経費として、一律で金額が収入から控除されていました。しかし、平成25年度から、特定支出控除の枠組みが拡大し、その制度がよく知られるようになりました。
給与所得者であっても、以下のような支出の場合、確定申告により、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から、さらに差し引くことができる制度ができたのです。
控除対象となる項目は、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費)の6項目になります。
- 通勤費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費)
交通費は定期券代に加えて、ガソリン代や高速道路料金も対象になる可能性があります。自動車通勤の場合の自動車代が認められたケースはないようです。
また、転勤や単身赴任に伴う、引っ越し代、単身赴任で家族のもとに変える場合についても、経費として認められることがあるようです。
他には、研修を受けることや資格取得のためのスクール代、参考書代なども、この特定支出控除の対象になります。他にも、勉強のための本代も、控除の対象になることがあります。
グレーゾーン
最後に、衣服費と交際費ですが、これは非常にグレーな部分が多くなります。たとえばスーツを着る会社であれば、スーツ代が経費として認められる可能性もあります。
交際費も、ただの取引先との飲み会であっても、経費として認められることもあるわけです。これは、使い勝手がいい一方、過去のケースから判断しにくい部分もあると思います。
会社の証明が必要
上記の支出はすべて控除として認められる可能性がありますが、認められるためには、会社の証明が必要になります。会社は、やはり衣服費や交際費は経費として認めづらい傾向にあるようです。
その点、研修費や資格取得費用は経費として認められやすい傾向にあるため、この部分での活用が現実的かもしれません。
平成29年現時点では、給与所得控除額の、1/2までであれば申請可能です。そこまで大きくはない金額になりますが、利用してみる価値はあるかもしれません。
他にもある、サラリーマンの節税ポイント
特定支出控除は、使えると確かにお得ですが、会社の証明がいることからも、ハードルは少し高くなっています。大きな会社でなければ、会社としても証明する手間がかかるため、認められないケースもあるかもしれません。
特定支出控除以外より簡単で、しかも会社に許可が必要なくできる節税ポイントもいくつかあります。これを効果的に使うことで、節税を行うことが可能になるかもしれません。
もともと、配偶者控除や基礎控除は、年末調整で戻ってくる金額になるので、ここでは、確定申告をすることで、より大きな還付を受けることができるものを紹介します。
一番大きいのはコレ!
最も大きい節税ポイントは、医療費控除ではないでしょうか。これは、年間10万円以上の医療費を使った場合に、税金から控除される仕組みです。
最高額は200万円にもなります。家族全員分の申請が可能なので、家族の中で、一番所得の高い人が、全員分の医療費控除をまとめて受けた方がメリットを感じやすくなります。
たんなる病気や怪我の治療だけでなく、メタボ検診の指導料や、インプラント、レーシック、不妊治療など、治療目的で医師が認めたものであれば、幅広く控除の対象となります。使ってみて損はないのではないでしょうか。
親に仕送りしていたら対象
他には、扶養控除も小さい金額ではありません。
たとえば、同居していなくても、親一人に対して、最大で48万円の控除になります。たとえば夫婦の場合、それぞれの両親が対象になるとすると、最大192万円も控除されることになります。
扶養の基準は、「生活を支えているかどうか」というところが大きなポイントにで、たとえば定期的な金銭のやり取り等があれば、控除が認められるケースが多くなるようです。
普段から仕送り等を少額でもしている場合は、この制度を使うことで、大きな控除が可能となります。
盗難や火災による損害も対象になる場合が...
盗難や火災による資産の喪失も、控除の対象になる場合があります。
喪失した資産と、回復するまでにかかった支出のうち、やむをえないもの(例えば割れた窓ガラスの修繕など)が雑損として認められます。こういうことは起こらないのが一番ですが、起こった場合はせめて有効に活用したいですね。
介護医療保険や個人年金保険も
生命保険も控除の対象になります。生命保険に加えて、介護医療保険や、個人年金保険も控除の対象になっています。保険の金額によって異なりますが、最大所得税12万円、住民税7万円が控除の対象になります。
保険料は何十年と払い続けることが多くなりますので、塵も積もれば山となる、で上手に使っていきましょう。
寄付金:ふるさと納税も
また、寄付金控除も見逃せない仕組みです。
寄付金は、寄付した金額から2,000円を引いたものが控除額になるなど、控除額としては大きい金額になります。寄付金といっても、すべての金額が控除されるわけでなく、特定の場合に限られます。街で募金をしても寄付金控除の対象になるわけではありません。
これを活用した仕組みが、「ふるさと納税」です。ふるさと納税の場合、所得税の控除に加えて、住民税の減額という仕組みがあります。
これにより、通常の寄付金より還付が大きくなるので、最近特にその便利さが人気を博しています。各自治体による返礼品も魅力の一つですが、返礼品の競争が過当になりすぎてしまい、本末転倒ではないか、という声もあります。
7億円追徴課税されたケースも!追徴課税にご用心
節税は悪いことではなく、むしろ国民の権利として当然のことではありますが、あまりグレーな部分が多くなると、脱税とみなされる可能性はゼロではありません。
たとえば、架空の不動産所得をあげて、税金を圧縮していたケースは、当然脱税行為にあたり追徴課税が課されています。
これはアウトのケースですが、たとえば2012年には「競馬で39億円稼いだ」いうことで7億円の追徴課税を課されたケースもあったそうです。こちらは非常に判断の難しいケースになり、その後、裁判にまで発展しました。
これも特殊なケースではありますが、不当なことをすると追徴課税だけでなく、罰金や最悪逮捕ということもありますので、自分の知りうる範囲で健全に節税を行うのがよいでしょう。
サラリーマンでも節税できる!得する確定申告のススメ まとめ
我々の税金は、何気なく普段支払いしているように見えますが、裏ではきちんとした法的根拠があり、計算式に基づいて支払われています。また、支払いは自動的に行われますが、還付は申告しないとかえってきません。
サラリーマンであっても、確定申告することで、控除の対象になるものも多くあります。特に医療費控除や扶養控除は、すぐにでも使える節税のテクニックになります。
あまりに税金の還付を考えるばかり、グレーな部分に手を出して、追加徴税をされたりしては本末転倒です。
しかしながら、自分の範囲で権利を享受することは悪いことではありません。まずはしっかり税金の仕組みを理解しながら、確定申告を利用し、賢く節税するのがよいのではないでしょうか。
また、こちらのページで紹介したもの以外にも節税として活用できるNISAや積立NISA、個人年金以上に税金が優遇されるiDeCoについては下記のページで詳しく解説してますので参考にしてみてください。
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