ケニア、ナイロビ西部のマイ・マヒウ=ナロク・ロードはごく普通の道路だった。
ところが、この一帯に大雨が降ったあと、巨大な地割れができ、道路を分断した。地元メディア紙デイリー・ネーションによれば、地割れは深さ15メートル、幅19メートルに達するところもあるという。(参考記事:「【動画】車をゆっくり飲み込む恐ろしい地滑り」)
地質学者のデビッド・アデデ氏は、地元メディアに対し、近くのロンゴノット山から噴き出した火山灰が、前からあった地割れに堆積していたようだと語った。つまり、火山灰が雨に流されて地割れが露出したのだという。(参考記事:「【動画】庭に大穴が! 陥没が相次ぐフロリダ」)
地割れは一気に進んだとロイター通信は報じている。住民のエリウド・ニョロジ・ムバグアさんの家では、数日前に床に亀裂ができたが、家が倒壊する前にできたのは、家財の一部を運び出すことぐらいだった。(参考記事:「【動画】陥没穴が住宅をのみ込んだ、直径60m」)
では、この地割れはそもそもなぜできたのだろうか。
地球の裂け目
この地割れはアフリカ大地溝帯の一部をなしている。(参考記事:「アフリカにある「地球の裂け目」を車で縦断」)
アフリカ大地溝帯は、中東からモザンビークにかけてつながっているように語られることが多いが、溝はひとつではない。同じ系統の地溝帯が複数集まった場所だ。(参考記事:「断絶するアフリカの楽園」)
地溝帯とは、プレートが裂けたり離れたりしてできた低地帯を指す。今回現れたケニアの裂け目は、東部地溝帯に属する。全長6000キロメートルにせまる東部地溝帯をさらに細かくみると、グレゴリー・リフトとウエスタン・リフトがあり、それぞれに火山が点在している。
これらの地溝帯は少しずつ広がっている。東側のソマリアプレートと西側のヌビアプレートが、互いに離れるように移動しているためだ。
一帯は歴史上重要な考古学的発見をもたらしている。「トゥルカナ・ボーイ」と名付けられた150万年前のヒト(ホモ)属の骨もここで発見された。先史時代の人類を知る重要な手がかりだ。(参考記事:「人類発祥の地は東アフリカか、南アフリカか」)
東部地溝帯は最大級の地溝帯だが、このような地形は他にもある。ロシア東部にはバイカル地溝帯があり、南極大陸には西南極地溝が走っている。
米国南西部には、コロラド州からメキシコのチワワまで伸びるリオグランデ地溝帯がある。地溝ができ始めたのはおよそ3000万年前で、一部はリオグランデ川が流れており、メキシコとの国境にもなっている。
5000万年後には大陸が分断?
最終的には、ソマリアプレートとヌビアプレートが完全に分裂し、間が海になって、アフリカ大陸の東側にマダガスカルやニュージーランドに匹敵するような陸地を形成する可能性がある。そうなるとしてもおそらく5000万年ほど先の話だが、とはいえ、今回現れた地割れのように、分裂にともなう物理的な影響はずっと起こりつづけるだろう。(参考記事:「ニュージーランドは第8の大陸、研究者が提唱」)
デイリー・ネーション紙は、交通当局がインフラの諸問題をよく地溝のせいにしており、この地域の新しい鉄道の安全性も不透明だと報じている。
地元メディアの「NTV」によれば、地割れは発生の数日後にコンクリートと岩で埋め戻され、道路は復旧したとのことだ。
英ロンドン大学、ロイヤル・ホロウェイの研究員であるルシア・ペレス・ディアス氏は、この地溝帯は異なる速度でゆっくりと分裂していると、学術ニュースサイト「ザ・カンバセーション」に発表した。氏は、火山岩で覆われている北部の方から分裂が始まるかも知れないと指摘している。
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