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『ファイナルファンタジーXIV』吉田明彦氏×永野譲氏スペシャル対談

プレイステーション3 ゲーム PC
『FFXIV』のアートディレクターや『タクティクスオウガ 運命の輪』のキャラクターデザイナーとして現在活躍中の吉田氏。2011年に劇場公開予定の長編アニメ『花の詩女ゴティックメード』の監督である永野氏。それぞれ異なる"世界"を構築している両氏が、互いの作品について語り合った。ふたりの熱き思いを感じてもらいたい。

2010-10-19

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FFXIV』のアートディレクターや『タクティクスオウガ 運命の輪』のキャラクターデザイナーとして現在活躍中の吉田氏。2011年に劇場公開予定の長編アニメ『花の詩女ゴティックメード』の監督である永野氏。それぞれ異なる"世界"を構築している両氏が、互いの作品について語り合った。ふたりの熱き思いを感じてもらいたい。

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吉田明彦氏
『FFXIV』アートディレクター
『伝説のオウガバトル』や『タクティクスオウガ』などを手掛け、最新作『タクティクスオウガ 運命の輪』でもキャラクターデザインを担当している。『FF 』には、アートディレクターとして携わる。

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永野譲氏
オリジナルアニメーション『花の詩女 ゴティックメード』監督
デザイナー。『重戦機エルガイム』のデザインを手掛け、アニメ雑誌"Newtype"で人気コミック『ファイブスター物語』を連載。現在は『花の詩女 ゴティックメード』の監督として活躍している。

●出会いのきっかけ

吉田明彦氏(以下、吉田) 私が永野さんに初めて会ったのは、『FFXI』のころですよね。

永野 護(以下、永野) そうそう。確か、田中さん(※1)に開発中の『FFXI』を見せていただいて、すごく驚いたのを覚えています。ちなみに、吉田くんの名前を知ったのは、1993年あたりですね。当時、いのまたむつみ(※2)と『バーチャファイター』(※3)で盛り上がっていて、ゲームの話題が多かったんですよ。いのまたといろいろなゲームの話をしていたときに「この『伝説のオウガバトル』(※4)の絵を描いている人は誰なんだろう?」という話題になったんですよ。それだけインパクトのある絵だったなと(笑)。けっこう影響を受けましたよ。僕の記憶では、"1回額で上がって垂れる長髪"というキャラクターは吉田くんが最初だと思っていました。『伝説のオウガバトル』の敵将軍たちもみんなこの髪型で……。

吉田 えー、僕が最初ですかね? でも言われてみると、当時はそればかり描いていた気もします。あと、ロングブーツも(笑)。

永野 それと、『タクティクスオウガ』(※5)にも当然ハマりました。仕事の合間に5日くらい徹夜してやっていましたよ。

吉田 そんなに!(笑)。ちなみに僕が永野さんの存在を知ったのは、高校生のときに見た『重戦機エルガイム』です。むき出しのエネルギーケーブルなど、とても複雑で繊細な造形のメカデザインに衝撃を受け、夢中で模写とかしてました。

永野 えっ、そんな世代でしたっけ?

吉田 僕は『機動戦士ガンダム』からロボットアニメにハマったクチなので。

永野 吉田くんの世代って、観たいアニメをわざわざ選んで観るのではなく、学校から家に帰ったときに「この番組をやっているから」という感覚で観ることが多かったですよね。

吉田 基本的にそうでしたね。ただ僕の場合、『機動戦士ガンダム』からは"選んで"観ていましたね。中学時代の先輩に「すごいアニメがあるから観てみろ」って薦すすめられて。『機動戦士ガンダムZZ』あたりまでは、夢中になってアニメを観ていた時期です。

永野 そのあたりって、『ウィザードリィ』、『ウルティマ』、『ドラゴンクエスト』と、すごい勢いでRPGが登場した時代ですよね。

吉田 そうですね。その後アニメから遠ざかってしまって……。

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●コラボの可能性

吉田 ところで、この対談って、これからコラボでも始まるのかと誤解を生んでしまいそうな組み合わせですが、永野さん的にはどう思われますか?

永野 そういう気持ちは全然ないなあ(笑)。僕としては、早く吉田くんの描くゲームの新作をやりたいですから。僕もいろいろなゲームメーカーに呼ばれて、ゲーム関連のお仕事もしたことがありますが、現在は完全にアニメ側の人間なので……。ゲームはゲーム、仕事は仕事できっちり分けたいんですよ。

吉田 僕自身は、これまで僕が担当してきたゲームが、僕以外の絵でもいいと思ってい
るんですよ。だから、もし「永野さんの絵でゲームを作ってみない?」と言われたら、喜んでついていっちゃうかも(笑)。モーターヘッド(※6)のゲームとか、僕以外にも作りたい人はたくさんいると思いますよ。

永野 そんな恐ろしいこと言わないで(笑)。

吉田 そう言い えば、『ゴティックメード』もロボットのようですが、モーターヘッドとは関係ないのですか?

永野 そうですね……謎ですよね!(笑)

吉田 気になりますねえ(笑)。

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FFXIV

●手描きへのこだわり

吉田 『ゴティックメード』のPVは見せていただきましたが、スゴイですね。ほとんどCGやエフェクトを使わず、手描きで作られているというのが……。

永野 手描きというのは、いちばんコストがかかるんですよね。フィルムが1秒あたり500枚以上に及ぶカットもあります。

吉田 500枚!? フィルムって基本的に秒間24枚ですよね? レイヤーで重ねるにしても、3人のキャラクターを動かそうとした場合に、3枚のセル画を動かすのは……。

永野 ふつうに考えるとそうなのですが、その場合、3人のキャラクター+3人の髪の毛 、目、手、そして背景など、すべてバラバラに動かしているわけですよ。それらのセルを全部重ねると100枚を超えてしまいます。

吉田 1枚1枚に魂を込めているわけですね。

永野 これからもまだまだ手間をかけて作っていきますよ。

吉田 まさにひとつひとつが手作業ですね。

永野 ポリゴン(※7)が嫌いなわけではないですよ。僕は『バーチャファイター』が流行り始めたころにはすでにポリゴンの知識もあって、制作現場も見てきました。でも、僕としては、可能な限り手描きにこだわりたい。ポリゴンはポリゴン、手描きは手描きで、できることがそれぞれ異なると思うので。

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花の詩女ゴティックメード

●ドット絵から3Dへ

永野 吉田くんは『伝説のオウガバトル』のときはドット絵も描いていたんですよね?

吉田 僕はもともとドッターですから(笑)。

永野 3Dに挑戦したのは『ファイナルファンタジータクティクス』(以下、『FFT』) (※8)あたりから?

吉田 『FFT』のときは、ほとんどキャラクターデザインがメインの仕事でした。それ以外のタイトルではポリゴンのモデルも実際に自分でいじったりしていますが……。本格的にポリゴンで描かれたグラフィックに挑戦したのは『ベイグラントストーリー』が最初になりますね。

永野 『FF XIV』ではどんな感じの仕事を?

吉田 2009年のE3(※9)に『FFXIV』のベースとなる画像が出展されたときには別のタイトルを担当していたので、じつはその時点ではまだ参加していなかったんですよ。

永野 すでにベースができていた状態から参戦した、というわけですね。

吉田 そうですね。コンセプトワークやイメージアートは、プロジェクト立ち上げ時から関わっているスタッフによってある程度進められていたので、そのベースを生かしながら世界観を創りあげていきました。デザインワークに関してはチームには強力なスタッフがそろっているため、彼らに任せている部分が多いです。自分でも、キャラクターの顔や一部の装備品はデザインしていますが……。

永野 なるほど。背景に関してはどうですか?

吉田 背景や細部の設定画などは各担当者に任せていて、実作業よりもアートディレクションに専念しています。永野さんは『FFXI』もプレイされていたのですよね。

永野 『FFXI』は、北米版が発売されたくらいにプレイしましたね。ミスラで女の子のフリをしてプレイしていたら、外国人のプレイヤーがぞろぞろついてきた(笑)。

吉田 あははは(笑)。

永野 それはおいといて、壮大な世界で周囲を見渡したり、キャラクターを走らせているだけでも楽しかったですね。

●日本を代表するオンラインゲーム

吉田 永野さんの『FFXIV』のご予定は?(笑)

永野 じつはβテスター募集に応募していました。なかなか当選の通知が来なくて諦らめちゃいましたけど。まあ、無理せずプレイステーション3版を待とうかと思います。

吉田 『FFXI』ではミスラを使っていたと先ほどおっしゃいましたが、今回はどんなキャ
ラクターでプレイされる予定ですか?

永野 あと半年、悩んで決めようかと思います。ただ、最近は海外のオンラインゲームのクオリティーがすごくて、世界的に見ると日本のゲームが押されていると思うのです。もちろん『FFXI』は別ですが。『FFXI』は、始めた時期が時期だったので、最初のうちは外国人中心のリンクシェル(※10)を複数持っていましたね。そんな環境だったから、周囲の仲間は完全に北米の方々ばかりでした。でも、あるときリンクシェルメンバーでミッションをやったんですよ。たしか午前8時くらいで、とあるミッションのバトルを乗り切り、"リアルの時間で日付が変わればミッションのイベントが進む"という状況です。そこで、リンクシェルのリーダー(北米人)が、「あと14時間待てば次のイベントに進むぞ」って、わざわざ説明を始めたんですよ。

吉田 ああ、北米では「明日になれば続きができるぞ」ではないのですね。

永野 そうなんですよ! 日本人にとっては、日本時間の0時がちょうどいい区切りに
なっているのですが、海外の方にとっては半端な時間が基準になるわけです。「ああ、この『FFXI』は日本産のゲームなんだ!」と、日本人として胸を張りたくなりました。

吉田 確かに、プレイ環境によっては洋ゲーみたいな感覚になるわけですね。

永野 はい。そういう意味では、『FFXIV』でも、日本産のオンラインゲーム代表として世界的に盛り上がってほしいですね。

吉田 そう期待されるユーザーさんも多くて、『ファイナルファンタジー』というシリーズの重さを改めて感じています。『FFXII』を作っていたときもそうですが、最初から注目度が高いので……。

永野 でも、『FF』シリーズって、前作にあったシステムを平気で捨てるという、大胆なことを毎回やっていますよね。『FFXII』のガンビット然り、『FFXIV』のアーマリーシステムも然り。とは言っても、僕はプレイステーション3版待ちなので、アーマリーシステムはまだ体感していないですが……。早く発売して新システムに触れさせてください(笑)。

吉田 がんばります! 僕も永野さんのファンのひとりとして、『ゴティックメード』のキ
ャラクターたちがスクリーンを動き回る姿を楽しみにしています。

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※1 『FFXI』および『FFXIV』プロデューサーの田中弘道氏。
※2 イラストレーター。アニメ『機動戦士ガンダムSEED』やゲーム『テイルズ オブ』シリーズなどのデザインに携わる。
※3 1993年にアーケードで稼働を開始した3D対戦格闘ゲーム。
※4 1993年にスーパーファミコンで発売されたシミュレーションRPG。"オウガバトルサーガ"と呼ばれるシリーズの第5章に当たる物語が描かれる。
※5 1995年にスーパーファミコンで発売。"オウガバトルサーガ"第7章の物語が描かれるシミュレーションRPG。
※6 『ファイブスター物語』に登場するロボット兵器の総称。
※7 "多角形"という意味の、画像を立体的に見せるための技術。
※8 1997年にプレイステーションで発売されたシミュレーションRPG。
※9 ロサンゼルスで毎年開催されるイベント、エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポのこと。
※10 複数のプレイヤーが同じ種類の"リンクパール"を所持することで、パーティーを組まなくても会話を行えるというチャットシステム。『FF 』にも採用されている。

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