2018年02月28日
「ソウル市、旧日本軍の「朝鮮人慰安婦」虐殺映像を初めて公開」はフェイクニュース
騰越の戦いのあと、中国軍の捕虜になった、日本、台湾、朝鮮の各人種を含んだ慰安婦たち
韓国の怪しい報道
韓国メディアが、「ソウル市、旧日本軍の「朝鮮人慰安婦」虐殺映像を初めて公開」(中央日報)という情報を伝えた。 ソウル市とソウル大人権センターが、米国立公文書記録管理局(NARA)を訪問して資料調査を行った結果、見つかったという。(中央日報記事)
場所は現中国雲南省の騰越だ。 ここでは1944年9月に2ヶ月の戦闘で、第56師団(久留米)の一部が玉砕、つまり全滅した。日本軍の戦死者は2800名という。
(映像、閲覧注意)
映像は不鮮明だ。日本のネット上では、写真のコマ数が多く映像が明瞭など怪しさを指摘する声が多かった。当時は映像のコマを写す撮影機の能力が乏しく、鮮明にならない。ただ写真で見る限り、中華民国兵の軍服で、映像は本物の可能性がある。 ただし、遺体の片付けしか映っていない。殺害場面ではない。
韓国は、日本軍が慰安婦を殺害したとしている。しかし、それは違う。
日本のアジア女性基金の資料集に「雲南・ビルマ最前線における慰安婦達-死者は語る」という文章がある。早稲田大学の浅野豊美教授の文章だ。同じアングルの写真がこの67、68ページに掲載されている。すでに写真では、見つかった資料だ。同じ米国公文書館から見つけている。
浅野氏の前出の文章では、この戦いの後で慰安婦18人(台湾人3人、朝鮮人2人、残り日本人)が捕虜になったことを伝えている。 慰安婦らからは日本軍が組織的に殺害した証言はない。また捕虜が出たということは、殺害が広範囲に行われていないことの証拠になるだろう。遺体の女性らは、戦闘に巻きこまれたものと推定される。
また写真の説明に「朝鮮人」とは書かれているが、その他の文字の判読は難しいという。日本軍が殺害したとは書いていないようだ。遺体の一部が裸らしいのは時間が経過し、引っ張って埋葬の穴に入れために、服が脱げたのだろう。
浅野氏はソウル市の発表を受けて、自分のフェイスブックに、写真の再説明を加えている。断言はしていないものの、筆者と同じように虐殺の証拠ではない可能性を言及している。
ビルマの戦い
私は、野口省己陸軍少佐、33軍参謀の「回想ビルマ戦線」、辻政信陸軍大佐、33軍参謀の「十五対一」という、2つのビルマ戦線の回顧録を読んだ。
この1944年に生じたビルマの戦いでは、中国軍の来襲は予想されていた。しかし米国式装備の中国軍30万に日本軍は弱体化した2−3万人の兵士しかいなかった。それが辻大佐の15対1の名前の由来である。(ウィキ拉孟・騰越の戦い) 日本軍は、中国軍に押され、2つの都市で玉砕してしまう。
今は両方の回顧録とも手元にないが、その中で慰安婦が行方不明になったという記述がある。野口参謀の手記によれば、拉孟で慰安婦約20人が行方不明、おそらく戦闘に巻きこまれたと報告があったとき、辻参謀は民間人がなんでいるんだと怒り、前線近くの慰安所を撤収させたという。彼は捕虜殺害命令など、エキセントリックな行動もしたが、有能さを示したところもある毀誉褒貶のある人物だ。ビルマでも越権行為と活躍の双方を見せる。その彼も慰安婦を殺害するなどという発想は毛頭なかった。 慰安婦がいたことは、別に軍の中で隠されたことでもなかった。作戦に熱中していた辻参謀が、最前線の部隊に慰安婦が一緒にいたことを、どうも知らなかったようだ。
おそらく北ビルマに朝鮮人慰安婦はいた。そして戦闘に巻きこまれ、亡くなった可能性がある。その点で、故郷を離れて亡くなった女性たちは、あまりにも気の毒で深い哀悼の念を示したい。また女性民間人を最前線付近に置いたことは、当然現地部隊は批判されるべきだ。
しかし日本軍が朝鮮人慰安婦らを積極的に、組織的に殺害した記録も証拠もない。日本軍にその必要もない。
韓国ソウル市、ソウル大学の新資料と称するものは、すでに見つかった資料であり、新発見ではないし、日本軍による慰安婦虐殺を示したものでもない。それを伝える韓国メディアは、「フェイクニュース」を流したようだ。
さらに日本でも知る人の少なくなった雲南・北ビルマの戦いの情報を韓国人が調査するのは、日本人の協力者がいるだろうと私は推定した。予想通り、韓国メディアの報道では、日本にあるのに慰安婦問題を糾弾し続けるWAM(アクティブミュージアム 女たちの戦争と平和資料館)が、ソウル市のシンポジウムに出席し、調査に協力していると書いてある。反日活動で有名な「西早稲田界隈の組織」(西早稲田2-3-18に集まる、キリスト教、韓国関係団体)の一つだ。
ビルマの戦いでの日本人の戦没者数は16万4500人。その英霊の名誉の問題だ。慰安婦を日本軍は虐殺などしていない。私はこの事実を日本人に知ってほしい。また日本政府は実態を調査し、韓国のソウル市、ソウル大学に事実を伝えるべきであろう。
(これは現時点2月28日時点の情報で、新事実があれば付け足したい。しかしこの程度の調査もできないのは、韓国の歴史調査は大変ゆがんでいる。)
(西早稲田関係の情報、浅野氏の追加の文章を追記)
石井孝明
ジャーナリスト
ツイッター:@ishiitakaaki
メール:ishii.takaaki1@gmail.com