2017.12.28更新
関ジャニ∞の新たなおもしろさを引き出すレギュラー番組として、人気を集める『関ジャニ∞クロニクル』。番組の総合演出を務める福山晋司ディレクターへのインタビュー後編では、関ジャニ∞の魅力や、番組作りの裏話を語ってもらいました!
――『関ジャニ∞クロニクル』では、数多くのコーナーがあります。新コーナーはどのように生まれるのですか?
「いろいろな作り方があります。日常の中で、「これっておもしろいな」と思う事象から企画に出来ないかアプローチするパターンと、現状の番組のバランス的にこういう種類のものがあるといいなと思うところからアプローチするパターンも。メンバーと企画との距離感でさらに2パターンあって、企画や台本を作る前からメンバーの中で誰を主役にするか決めているものと、全員同じ立ち位置のつもりで作ったけれどやっていくうちにメインが決まるものがあるんです。
あえて新コーナーを作ろうと思っているわけではなくて、もっとこのメンバーのこんなところが生かせる企画がないかな、とは常に考えています。
新コーナーをメンバーに初めて見せる時の反応も気になりますね。こちらでそこそこ作り込んだ第一段階のものをまずは彼らにぶつける。そしてその時の彼らの反応を見て、かなり精査した第二段階のものを作っていきます。
ファーストリアクションは企画によってかなりバラつきがあるのが正直なところです。ドッジやカメラ目線、なんとか成立させろ記者会見なんかは「またアホなこと考えてきたな〜(笑)」みたいに早い段階でその企画の面白がり方が共有できたし、英会話や「なのに」ロケに関しては、最初の反応というよりも回を重ねるごとに、その企画のおもしろがり方を一緒に模索しながら方向づけていった感覚です。
1月にオンエア予定の渋谷さん、錦戸さん、大倉さんの新コーナーは、ドームでのライブを見させてもらった時に『この3人、めっちゃクール!かっこよすぎるだろ』と思い、おせっかいなのは百も承知なんですが(笑)逆に彼らのかわいい一面を見せたいなと考えたもの。プレゼンした時は『こんなんせんでええって(笑)』と言いながら、いい顔してくれました。ぜひ期待してください」
福山晋司ディレクター
――福山さんが見ていて、メンバーの良さが特に生かされたなと思うコーナーはありますか?
「『なのにさんを探せ』や『代理里帰り』は、安田さんの根っからの人懐っこさが出る企画になったなと思います。
最初から想定していたわけではなく、やっていてわかったことなんですけど、安田さんって懐に入る能力がすごくて、ロケ先で一般の方々にフラットになじむんです。ロケに行っても、収録前、タレントさんは普通、車の中で待機しているんですが、安田さんは颯爽と車を降りて現場を見たがって。たぶん街や人の空気をいち早く掴もうとしているんでしょうね。なによりいいのは、人の懐に入り込もうという計算が安田さんを近くで見ていても一切ない。そこがさらにいろんな人との壁を取っ払うんだと思います。安田さんにはもっと外に出てほしいなという気持ちがありますね。
あとはやっぱり『いきなりドッジ』の大倉さん。何度かお話しているんですが、彼が冷ややかな目であの腹黒さを出してくれたことで、コーナーのおもしろさが広がりました。このコーナーを単なるゲームではなく心理バトルに、べたっとしたバラエティではなくリアルが垣間見えるドキュメントバラエティに昇華してくれました。これは本当に感謝していますね」
――では、企画段階から「このメンバーにこれをさせたい」と考えて、ハマったなと思うコーナーはありますか?
「個人を中心に作ったコーナーはそのキャラや特性を活かそうとして企画したものです。丸山さんの『エゴサーチ』は彼がライブのMCでなんの屈託もなく自分がエゴサーチすると話していて、アイドルがそれを自認していいんだと驚いて。企画にしたいと言ったら、本人もスタッフもおもしろがってくれて実現しましたね。
錦戸さんの『ラブスーパーマン』は、彼はビジュアルももちろん、誰もが認める主演俳優をこなす演技力、楽曲まで作り込むミュージシャンとしての能力、などなど、誤解を恐れずに言うとバラエティの制作者からすれば「フリ」となる部分がすごくいっぱいあるので、それを大いに生かして彼らしくないことをしてもらおうと作ったコーナーです。今後は彼のキャラにもう一歩踏み込んだ企画がそろそろできればと思っています。
横山さん、村上さんについても、バラエティ経験豊富で申し分ない能力を発揮してくるのですが、できるだけ、この2人はバラエティ企画がむいている!だからMCをやってもらおう!みたいなステレオタイプを持ち込まずに企画作りをしたいなと思っています。『英会話伝言ゲーム』は、あの村上信五が言葉を失って、頭を抱える瞬間が一番おもしろい(笑)。そんな意外性は常に狙っていますね」
――前回も「台本をあまり作り込まず、本番のライブ感を大切にする」というお話がありましたが、収録が特におもしろいコーナーは?
「それぞれに違ったおもしろさがあるのですが、『イケメンカメラ目線スポーツ』の今年オリエンタルラジオさんがゲストに来てくれた回は、すごく印象深いですね。
アイドルと芸人の共演でよくあるのは、芸人がボケて、アイドルがそれに笑ったりツッコんだりリアクションする、という構図で、関ジャニの場合もみんな関西のノリでトークが上手なので、芸人さんがなんならいつもより気持ちよくボケて、メンバーがツッコむというパターンがよくある構図になってきます。この構図は非常に見やすくて、タレントさん自体も何の違和感もなく力が発揮できるのですが、イケメンカメラ目線のこの収録はわかりやすく言うとまったく違う構図になったのです。
渋谷すばるが彼特有の鋭い感覚とワードのセンスでボケまくって、はみ出し続けていって、それをオリラジの2人が手を焼きながらツッコンでは処理するっていう、よく見る構図とは逆転の現象が起きたんです。
あまり分析するのもナンセンスなんですが…。アイドルがキャラに扮してボケたり、天然発言をしたりポンコツ具合を笑いにして芸人さんがそれをツッコんで処理する構図はありえるのですが、フラットな立ち位置で、しかも例によって打合せやフォーメーション決めもなく、アイドルがボケ倒し、イジリ倒し、芸人がツッコミ続ける構図が番組中に出来上がっていったんです。
なんなら中盤からはそれを中心とした笑いで転がっていった。収録の終わりには、いろいろなバラエティの現場を見て来たスタッフからも、拍手が起こり、異様な空気になりました。もちろん忘れてはいけないのは、オリラジさんの腕があってこそ成立したということです。オリラジさん2人のいい意味での「芸人さんぽくない芸人さん」の部分と、関ジャニのいい意味での「アイドルぽくないアイドル」の部分が化学反応を起こして、今までに見たことのないノリや掛け合いが生まれた。
過剰かもしれませんが総合バラエティの系譜で言うと『ひっくり返った歴史的な瞬間』が生まれたのです。ひょうきん族やごっつ、めちゃイケのような芸人さんの総合バラエティの流れと、スマスマのアイドル総合バラエティの流れがここにきて合流したような風にも思えたのです。少しおおげさかもしれませんが(笑)。そんな可能性を感じたのです。萎縮しがちなテレビの今、何かを変えてくれるのではにないかと。
収録後も中田さんと何度かやりとりさせていただいたのですが、この日の違和感は何かが生まれたはずのものだから大切にしていきたいと。いつかまた同世代の素敵な因縁として演出できればと思っています。
取材・文=野々山幸(TAPE)
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