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【経済】

「働き方」法案「裁量制拡大」削除に不満 経済界「賃上げ応じたのに…」

 政府が六日に国会に提出した「働き方」関連法案から、長時間労働を可能にする裁量労働制の適用対象拡大は削除された。経済界からは不満が漏れるが、法案に盛り込まれた高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度とともに、定額で「働かせ放題」になりかねない。両制度の導入で柔軟な働き方を進め、生産性を高めたいとする経済界の主張にも、専門家からは疑問の声が上がる。 (須藤恵里)

 裁量労働制拡大や残業代ゼロ制度創設は、経済界が長年要望してきた。柔軟な働き方を認め、労働時間ではなく成果で給与を支払うことで「生産性を高めたい」との主張だ。主張は今に始まったことではなく、日米欧五カ国がドル高修正で一致した一九八五年のプラザ合意以降、数年で急激な円高となり、輸出企業を中心に人件費の抑制が課題となったことがきっかけだった。

 今後の少子高齢化の進展や、人工知能(AI)の発達による国際的な生産性競争の激化で、生産性を高めることが不可避との思いは経済界に根強い。これに対し、大阪大社会経済研究所の小野善康特任教授は「時間ではなく成果に対して賃金を払うという考え方は、人手が足りずもっと一生懸命働かないとならない環境では良い政策だが、(今のような)消費が低迷し物が売れない時代に、いくら生産性を上げても意味がない」と話す。

 裁量労働制拡大と残業代ゼロ制度はいずれも長時間労働につながりやすく、世論や労働界からの反発で実現してこなかった。「安倍政権の賃上げ要請に応え続けてきた」と考える経済界としては、今回の「働き方」関連法案で自分たちの要望を実現してもらう番のはずだった。しかし、厚生労働省の不適切なデータ処理問題を受けて裁量労働制拡大は法案から削除され、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金といった経営側からみると“労働の単価”が上がる可能性のある制度は残った。

 経済界関係者は「安倍政権になって、賃金や雇用制度では経営側が割を食い続けている。裁量労働制拡大も諦めるわけにはいかない」と話す。

 日本総研調査部の山田久理事は「経済界には、逸脱した裁量制の適用で、過労死や長時間労働につながる問題へのルールづくりの視点が欠けている。国任せでなく、ガイドライン策定などをしっかりやる責務がある」と指摘している。

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