シャープの代表取締役社長である戴正呉氏は、2018年4月6日、2018年度初となる社長メッセージを、社内イントラネットを通じて発信した。
「真の再生に向け、今一度、経営基本方針に立ち返ろう」と題した今回のメッセージでは、中期経営計画の初年度だった2017年度が、社員の頑張りによって好業績になったことに感謝の意を表する一方で、「経営基本方針の再徹底」、「意識改革」などの項目を通じて、社員のこれまで以上の奮起を促すものとなった。
「経営基本方針の再徹底」では、2018年度の経営計画の策定に関して、年明け以降、各事業本部の責任者と何度も議論を重ねた上で、4月3日から3日間に渡って開催した経営計画報告会で内容をとりまとめたことを報告した。
一方、「2017年度第4四半期以降、市場環境は急変。さらに日を追うごとに悪化しており、2018年度は極めて厳しい環境下での戦いを強いられることになる。この難局を乗り切り、真の再生を果たすためには、2016年8月に定めた経営基本方針を、社員全員がひたむきに、しっかりと実践することが重要である。しかしながら、業績回復や東証一部復帰を背景に、最近では、経営基本方針をおろそかにした事案が散見されており、このままでは中期経営計画が未達となりかねない」と危機感をみせた。
また、「2017年以降、中国での飛躍的なテレビ事業拡大の実現と、白物商品戦略の再構築、社長直轄指揮によるASEAN拡大戦略の推進など、『守りから攻めへ』、『構造改革から事業拡大へ』と軸足を移している。今日も、私自らが欧州家電子会社であるUMCの幹部と、欧州事業戦略について協議するなど、『攻め』の取り組みを一段と加速させている」とした。
しかし「現在の想定を上回る環境変化のなかでは、『攻め』に加えて、『守り』となる構造改革をさらに実行し、いかなる状況にあっても、安定的に収益を創出できる筋肉質な経営基盤を構築していくことが、引き続き重要になる」と指摘。今回のメッセージでは、2016年8月の戴社長就任時のメッセージで発信した「経営基本方針の根幹となる3つの構造改革方針」を改めて示してみせた。
1つ目の「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」では、2017年度には、効率改善やコスト削減を目的に、知財や物流の独立専門会社によるオペレーション改革や、一国一販社体制の構築など、従来のやり方にとらわれない新たな発想で、抜本的なビジネスプロセスの見直しに取り組んできたことを振り返りながら、「2018年度は、こうしたグループ内部の改革はもとより、社外に視野を広げ、M&Aや協業といった外部リソースの効果的な活用により、新商品、新サービス、新市場を次々と創出し、売上げの大幅拡大やビジネスモデルの転換に取り組んでいく」とした。
2つ目の「コスト意識を大幅に高める」では、2017年度は、全社をあげて徹底したコスト削減に取り組んだ結果、大きな成果を上げることができたことに触れながら、「しかし、一段と熾烈化する競争を勝ち抜くためには、決して現状に満足することなく、常日頃から、緻密なコスト分析を積み重ねながら、2017年と同等以上のコスト削減を実現しなければならない。ただし、こうした取り組みは、当社が持続的な事業拡大を続け、すべての取引先とWIN-WINの関係を構築していくことが前提となる。これによって、はじめて、事業本部の使命である中期経営計画の達成ができることを改めて認識してもらいたい」とした。
そして、3つ目の「信賞必罰の人事を徹底する」では、2017年度が新人事制度の導入1年目であったため、制度の定着に向けた仕組みの整備を優先し、社員が大きな変化に戸惑わないように緩やかな運用を行ってきたことに触れ、「2018年度からは、業績評価結果に応じ、より厳格に信賞必罰を実施していく。高業績部門と赤字部門の処遇格差はさらに拡大することになる。こうした取り組みを前向きにとらえ、皆さんがより一層、奮起してくれることを期待する」と、より明確な信賞必罰の仕組みを導入する姿勢をみせた。
戴社長は、「経営基本方針には、中期経営計画の完遂に向け、私たちがなすべきことがすべて詰まっている。皆さん一人ひとりが、これからも繰り返し確認し、日々実行してほしい」と再徹底を促した。
「意識改革」という点では、2018年2月のメッセージで、「皆さんの心の中に気の緩みが生まれているのではないか」と指摘したことに言及しながら、「これを受け、3月5日から3日間に渡って、社長室から社員を対象とした『中期経営計画2年目に向けた従業員意識調査』を実施し、約1万2000人から回答を得た。アンケートの集計結果によると、皆さんの意識は全体的に向上傾向にあり、ひとまず安心できる結果となった」と安堵感を示した。
だが、「項目別に見ると、個人のマインドでは、『スピード感』、『積極性』、『コミュニケーション』、『変革や改善の意識』の4つの項目で高水準となっているが、『自己啓発』は低水準となっている。また、職場の取り組みでは、『計画達成の執念』は高水準にあるが、『社内の連携』、『新たな取り組みの実践』、『人材育成』の3つの項目が低水準となっており、個人の意識は高いものの、それが組織の総合力として十分に発揮されていないという課題が表れている」と指摘。「各部門の責任者は、自部門の現状をいま一度確認するとともに、強力なリーダーシップを発揮し、チームをより高いレベルへと導いてほしい」と要望した。
さらに、「社員の成長なくして、会社の持続的な成長はありえない。各職場では、積極的に部下に成長の機会を与え、育成に努めてほしい。一方、個人個人も、管理力向上研修や勉強会など、さまざまな機会を活用し、自らのレベルアップに取り組んでくれることを期待している」と述べた。
また、アンケートの自由意見のなかに、「開発モデル数が増え、業務量が増加しているにもかかわらず人員が増えていないため、一部の人に過度な負担がかかっている」といった意見が数多くあったことを紹介。「こうした部門間の人材リソースのアンバランスが起こっていることは、私も認識している。今後、こうした歪みを解消すべく、再び人員の適正化に取り組んでいく」と約束した。
続いて、戴社長は、4月2日に行われた入社式について報告した。大卒新入社員では、技術系250人、ビジネス系58人。また高卒新入社員が57人となり、合計で365人の新入社員が入社。「昨年の2倍以上の新たな仲間が加わった。当社の目指す方向性とともに、『Be Original.(誠意と創意)』、『One SHARP(以和為貴)』、『Responsibility(有言実現)』の3つのキーワードに沿って、シャープが求める人材像について話した。今後、基本研修を終えたのち、4月13日には各職場への配属を予定している。ぜひとも温かく迎えてもらい、1日も早く戦力となるよう育成してほしい」と呼びかけた。
メッセージの最後には、海外での取り組みについて言及した。1つは、3月8日から4日間に渡って、中国・上海で開催された中国家電消費電子博覧会(AWE)に出展し、中国市場に対して、シャープの取り組みを訴求したことを紹介。「鴻海グループの忘年会における『清院本清明上河図』の8Kデモに続き、今回は『宋版清明上河図』のデモを行うとともに、AIoTをはじめとしたさまざまなシャープ製品を展示して、来場者にその良さを体験してもらった」という。
また、3月28日にはマレーシアで、統轄会社SEMと販売会社SMSSの統合に関する記者発表を行い、同時に、シャープがマレーシアにおいて、創業33周年キャンペーンを実施することを発表。現在、順次、マレーシアの各所でイベントを展開していることを示したほか、4月2日にはタイの販売会社のSTCLが、8K技術を使ってタイの美しさを世界に発信する「Amazing Thailand Amazing 8K」プロジェクトで、タイ国政府観光庁に協力することで覚書を結んだことにも触れた。
さらに、4月7日から米ラスベガスで開催される世界最大級の放送機器展「NAB Show 2018」に初出展することも紹介。「世界各国で、事業拡大に向けた取り組みを矢継ぎ早に実行し、グローバル展開を加速していきたい」とした。
戴社長は、「2018年度は、まさに私たちの実力が試される1年になる。中期経営計画の完遂に向け、全員の力を結集し、何としてもこの正念場を乗り切っていこう」と呼びかけた。
厳しい市場環境のなかで、中期経営計画の2年目に突入することになったシャープ。新年度を迎え、同社の回復基調をさらに加速させたい戴社長の思いが込められた内容となった。
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