未来・第211号


            未来第211号目次(2016年11月17日発行)

 1面  京都府京丹後市 Xバンドレーダー
     米軍基地の強化に抗議
     住民無視の姿勢に怒りの声

     トラクター、むしろ旗でデモ
     TPP反対 大阪で緊急行動

     米軍に実弾演習させるな
     京都府・防衛局に申し入れ

 2面  原発輸出の原子力協定
     インドでも反対運動高まる

     再稼働申請を撤回せよ
     10月26日 関電本店に申し入れ

     やめろ南スーダン派兵
     改憲反対かかげ新宿デモ
     11月6日

     さらなる共同闘争の発展へ
     京都憲法集会に2千100人

 3面  高江現地レポート
     大阪府警の差別暴言許さない
     10月29日 高江と瀬嵩(大浦湾)で集会      

     高江で今、何が起こっているか
     10月31日 京都で緊急集会     

     やまゆり園事件に怒りの声
     「骨格提言」実現へ大フォーラム
     10月27日

 4面  投稿
     万年筆のインク 「補充の可能性」説が破産
     狭山再審へ全国連が集会
     10月30日 東京

     投稿
     北部訓練場内ヘリパッド建設反対 ~高江座り込み行動に参加して
     反戦兵士と連帯する会会員 医療労働者(東京)

     書評
     ナチスの障がい者抹殺計画「T4作戦」
     『灰色のバスがやってきた』

 5面   軍事力の限界―憲法9条の可能性
     「駆け付け警護は他国部隊のため」
     元自衛官 泥 憲和さんに聞く(上)      

 6面  農地法裁判の上告棄却弾劾
     「この地で生きていく」 市東孝雄さん

     投稿
     カウンター行動に若者多数
     神戸でヘイトデモを圧倒
     10月30日      

      

京都府京丹後市 Xバンドレーダー
米軍基地の強化に抗議
住民無視の姿勢に怒りの声

「米軍Xバンドレーダー基地はいらない」京丹後市をデモ行進(6日)

11月6日、「米軍基地いらんちゃフェスタin丹後 2016」(主催:米軍基地建設を憂う宇川有志の会、米軍基地建設反対丹後連絡会)が京都府京丹後市峰山の丹後文化会館でひらかれた。集会には会場を満杯にする750人が参加した。
米軍基地に隣接する自衛隊基地では新隊舎が建設されており、ここでも日米軍事一体化が進んでいる。
集会では、永井友昭さん(「憂う会」事務局長)の現地報告と島洋子さん(「琉球新報」編集局政治部長)の講演があった。

米軍基地を拡大

永井さんは、「米韓合同軍事演習をしている時は(軍人、軍属が総結集するため)基地内の駐車場が満杯になっている。Xバンド基地は日本を守るものではない」と語った。現状について、次のように述べた。
①米軍人・軍属の交通事故が多発している。10月14日には直線道路で、わきに停車していた農作業中の車(無人)に衝突する事故があった。差別的な地位協定のもとで、被害者は泣き寝入りしている、②8月に、穴文殊の真上に米軍のトイレ(コンテナ)が建設された。穴文殊は信仰の拠りどころで、住民からは抗議の声があがっている、③米軍基地の軍人・軍属は、陸上自衛隊福知山駐屯地の射撃場で実弾射撃訓練を11月にもおこなおうとしている(9月17日付「京都新聞」)。福知山市は受け入れていないが、一方的に進められている。住民説明会は1回しかおこなわれていない、④基地に通じる6600ボルトの電線を3万3000ボルトの高圧線にかえる工事が、住民に何の説明もなく進められている。Xバンドレーダーの電源にするようだが、これは基地の強化・拡大につながる、⑤防衛局は米軍基地の東に隣接する三角の土地を買い上げた。住民には「車両の検問をする土地」と言っているが、米軍基地を拡大しようとしている。
いずれも住民との約束を守らず、住民の意向を無視して進められている現実に、永井さんは怒りを込めて断罪した。

沖縄の現実

島さんは、「いま沖縄で起きていること」というテーマで講演、市民の目線で、沖縄の現実を具体的に語った。集会では、さらに4人から発言があった。大湾宗則さん(「近畿連絡会」代表)は「米軍基地が見える場所で、このような大集会をやりたい」と決意を語った。水谷徳夫(福知山平和委員会代表)は射撃訓練にたいするたたかいの報告をおこなった。集会後、峰山の市街を周回するデモで、住民に「米軍基地はいらない」と訴えた。

トラクター、むしろ旗でデモ
TPP反対 大阪で緊急行動

10月29日、大阪市内で「ストップ! TPP 緊急行動 御堂筋パレード」がおこなわれ、350人が参加した。パレードに先立ち、靱公園で集会がひらかれた。
あいさつを、全日農京都府総連合会会長、NPO自然派食育きちんときほん代表、全大阪消費者団体連絡会事務局長、大阪府保険医協会事務局次長、水政策研究所、全日建連帯労組近畿地本書記長がおこない、それぞれ、生活を根本から破壊するTPPに強い危機感を表明した。
政党関係では、共産党、自由党、社民党が登壇。山本太郎参院議員(自由党)が飛び入り発言。アメリカと日本の国益の対立ではなく国際資本とのたたかいであること、強行採決が切迫する情勢だが、TPPをつぶすまでともにがんばろうと確認した。民進党はメッセージを寄せた。
集会後、トラクターを先頭に「TPPは憲法違反」と大書したむしろ旗を林立させ、御堂筋を難波までデモ行進した(写真上)

米軍に実弾演習させるな
京都府・防衛局に申し入れ

10月27日、米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会は、京丹後米軍Xバンドレーダー基地の米軍人・軍属が、陸上自衛隊福知山射撃場で実弾演習をおこなおうとしていることにたいして、京都府が住民の安全安心を守る立場からこれを拒否するように申し入れをおこなった。京都府は総務部調整課参事の塩見氏が対応し、京都連絡会からは9人が参加した(写真)

受け入れ表明せず 福知山市

福知山市ではすでに防衛省が説明会をおこなっていて、地元の室地区は受け入れを表明したが福知山市は受け入れていない。京都府は、防衛省から正式な申し入れはまだないが、地元の福知山市の対応や防衛省の説明を聞いて検討すると言っている。
京都連絡会は、日米地位協定の下では日米合同委員会で共同演習が決まれば、米軍は好き放題にできるし、防衛省が何を約束しても、京丹後でも沖縄でも、米軍は平気で約束を破り、事故や事件は起こると訴えた。現状は、京都府も福知山市も防衛省の言うことを信じていてきびしい状況がある。
申し入れ後、京都府庁正門前で街宣活動をおこなった。

米軍のいいなり 近畿防衛局

10月31日、米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会と京都連絡会は、京丹後の米軍人・軍属が、陸上自衛隊福知山射撃場で実弾演習をしようとしていることと、京丹後の米軍基地を東側に拡張しようとしていることに関して、抗議と米軍に中止させるよう、近畿中部防衛局に申し入れをおこなった。
防衛局は基地対策室長補佐の久世氏が対応し、近畿・京都連絡会は服部共同代表や大湾共同代表をはじめ14人が参加した。
久世氏の話で明らかになったことは、京都府には6月に事務レベルで米軍の意向は伝えたが正式な申し入れはまだしてない。福知山市には8月26日に防衛局長が市長に申し入れた。室地区と正明寺地区の一部には10月9日と14日に説明会をおこなった。室地区長の受け入れ了解は聞いた。福知山市の受け入れ表明はまだない。米軍は兵務資格の更新のための拳銃と小銃の実弾演習と言っている。京丹後の基地拡張の土地は賃貸ではなく買い取りで国有地にするなど。
申し入れでは、米軍は沖縄でも京丹後でも約束はいっさい守っていないと訴えたが、防衛局は米軍の言いなりとしか思えない対応だった。

2面

原発輸出の原子力協定
インドでも反対運動高まる

昨年12月、安倍はインドを訪問し、原発輸出のための日印原子力協定を結ぼうとした。しかし、日本とインドでの反対運動の高まりのなかで協定締結に到らなかった。その後も両国政府は交渉を継続しており、11月10日から12日までインドのモディ首相が来日した。11日、日印の原子力協定に双方が署名した。安倍は11月協定締結、来年通常国会での承認をもくろんでいる。
NPT(核不拡散条約)に加盟しておらず核兵器を保有するインド。このインドと日本が原子力協定を結ぶということは核拡散(日本の核武装を含む)に日本が積極的に乗り出すことを意味し、日本の核政策の転機をなすものだ。
11月4日、「インドへの原発輸出反対! 日印原子力協定阻止キャンペーン2016大阪集会」が大阪市内でひらかれた。集会では、インド・CNDP(核廃絶と平和のための連合[注])国際キャンペーン担当のクマール・スンダラムさん、岐阜女子大学南アジア研究センターの福永正明さんが講演した。

協定は認められない

福永さんは、なぜ両国政府は協定を結ぼうとするのか、協定の問題点はなにか、と問いかけ、簡潔に解説した。
2000年代後半からインドは国際的な原子力関連貿易が認められた。その際、「巨額の大規模原発を外国から輸入」することが条件とされた。建設予定地は決まったが、日印間で原子力協定が結ばれていないため、原子力関連の取引ができない。日本企業は三菱、東芝(ウェスティングハウス)、日立が参入予定である。2010年6月から両国間で協定締結にむけ交渉が始まるが、いまだ締結に到っていない。
原発事故などなかったかのような「復興」と「2020オリンピック」。同時代人の責任として私たちは原発を外国へ売り込むことができるのか。国内で新規原発建設ができないから外国へ売り込むという金儲け優先。インドの原発建設予定地の住民たちは、日本の原発事故を知り、子どもたちの健康を心配する。そして「なぜ日本は原発をインドに売るのか」と。三菱、東芝、日立など大企業のための原発輸出を容認してはならない。
日印協定に反対することは私たちの責務。日印協定は絶対に認めてはいけない。原発の輸出は原発事故の輸出だ。 7日は東京集会と原発メーカー3社への「原発輸出するな要請行動」、対政府交渉、院内集会。11日は「日印協定反対・世界共同行動デー」をおこなう。

市民が殺されている

クマール・スンダラムさんは、次のように訴えた。この話は日本とインドだけの問題ではない。市民側の(国際)連帯をつくりだそう。インドでは原発建設反対運動に厳しい弾圧がおそいかかり、市民が殺されている。政府は環境基準を下げ、事故時の賠償についてはメーカー責任を問わず、インド政府が賠償するなどといっている。輸入ウランは兵器に使わないと言うが、ウランを自由に輸入できるようになれば、それを原発に使い、国内産ウランはすべて核兵器に使用できるようになる。いままで原発用に使っていたウランが全部、核兵器に転用できる。協定を阻止しよう。

[注]CNDP
200を越える草の根運動、大衆運動、弁護士団体、個人から成るインドの全国的な非核平和ネットワーク。(鴨 幸彦)

再稼働申請を撤回せよ
10月26日 関電本店に申し入れ

10月26日は国が定めた「原子力の日」。これにたいして、原発廃絶を願う市民団体は毎年、この日を「反原子力デー」と位置づけて行動してきた。 今年も関電本店(大阪市北区)に「40年越えの老朽原発を動かすな」「運転停止の仮処分決定に従え」「再稼働申請を撤回せよ」などの申し入れをおこなった。31人が集まり、8団体が申し入れをおこなった(写真)
関電の担当者は、嘘か本当か「出張」と称して雲隠れ。2週間前にアポを取っていたにもかかわらず、とうとう申し入れ団の前に姿を現さなかった。これは初めての事態。
関電グループ会社である受付業務担当会社や警備管理会社を盾にして、本店の社員はとうとう最後まで出てこなかった。申し入れ団は、本店ビル2階の関電受付で抗議の声をあげ、最終的にその場で、8団体のうち、若狭連帯行動ネットワークの代表が『申し入れ』を読み上げ、8団体すべての『申し入れ』とともに警備の責任者に渡し、必ず関電本店に渡すよう確約させた。

やめろ南スーダン派兵
改憲反対かかげ新宿デモ
11月6日

11月6日、「やめろ!南スーダン派兵 つぶせ! 共謀罪 沖縄新基地建設許さない! 戦争も改憲もNO! 11・6新宿デモ」がおこなわれた(写真)

沖縄闘争と連帯

主催団体のひとつ〈集団的自衛権法制化阻止・安倍たおせ! 反戦実行委員会>が以下のように、この日の行動の基調となる発言をおこなった。
「2015年の戦争法反対・サミット反対、沖縄に連帯するたたかいをたたかいぬいて今に至っている。これからどうたたかうかが問題。野党共闘はひとつの方向。資本主義が社会を壊している。国家暴力を使って自らを延命させている。自らが社会をまとめられなくなっている」。
「権力は運動にたいする攻撃に踏み出している。沖縄のたたかいに連帯する潮流として自らを押し出す必要がある。国内だけ見ていてはいけない。朝鮮半島では米韓が先制攻撃も視野に入れた戦争準備をしている。今日は団結を固めてデモを貫徹しよう」。

共謀罪の阻止を

続いて主催団体に名を連ねる<破防法・組対法に反対する共同行動>から救援連絡センターの山中幸男事務局長が発言。
「共謀罪から名を変えた『テロ等準備罪』は、とりあえず今国会への上程はなくなった。次の国会に出てくる。新たな共謀罪として準備されている。2人以上の『共謀』を単独で規制する法律であり、阻止しなければならない。これまで刑訴法改悪は警察の焼け太りで立法を成立させられてきた。新たな共謀罪はさらに飛躍的に強化されるが、救援連絡センターは最後までたたかう」と共謀罪阻止へたたかいを訴えた。

沖縄から怒りの訴え

続いて沖縄一坪反戦地主会関東ブロック代表が発言。
「本土から来た機動隊が『土人』『シナ人』と呼んだ。国策に反対する者には何をしてもよいと考えている」と差別暴言を弾劾。
「11月中に土砂の搬入は終わると言われている。今年いっぱいはこの攻防が続く。高江に来てください。
福岡高裁那覇支部・多見谷判決はあまりにもひどすぎる。最高裁にたいして、この判決を破棄せよと求める署名を集めている。最高裁に抗議運動する。11月20日、最高裁前でキャンドルアクションをおこない、国会を包囲する。ぜひ参加を」とよびかけた。

新宿周辺一周デモ

柏木公園から、新宿駅周辺を一周するデモに出発。参加者は160人。デモ隊が柏木公園に戻ってからは争議団連絡会議、都教委包囲ネット、立川テント村が発言。立川テント村の代表は、「武器輸出で軍産複合体が活発になる。機動隊を本土に呼び戻すようなたたかいをやらないと沖縄との連帯にならない」と呼びかけた。
(島田秀夫)

さらなる共同闘争の発展へ
京都憲法集会に2千100人

壇上は東アジア青少年歴史体験キャンプに参加した高校生ら。中韓日台湾の平和と友情を訴えた(3日 京都市内)

11月3日、「生かそう憲法 守ろう9条 戦争法廃止! 安倍政権NO! さらなる共同の発展を 11・3憲法集会in 京都」が、円山野外音楽堂でおこなわれ、2100人が参加した。
政党は、豊田自由党元衆議院議員、桂川社民党京都府連合代表、駒井新社会党京都府本部副委員長、穀田共産党国会対策委員長、長谷川緑の党共同代表があいさつし、泉民進党衆議院議員からメッセージが寄せられた。
元京都弁護士会会長・憲法9条京都の会世話人の出口治男さんが「新しい憲法情勢のもとで、さらなる共同の発展をめざして」と題して講演。
〈芸人9条の会〉呼びかけ人・古今亭菊千代さんが落語を演じた。
スピーチは、東アジア青少年歴史体験キャンプに参加した高校生から中韓日台湾の高校生の平和と友情を訴える発言。
また〈NoBase! 沖縄とつながる京都の会〉で沖縄県人会の矢ヶ崎響さんから高江現地の攻防を訴える発言があった。
集会後のデモは、京都市内の繁華街を通り、市役所前までおこなわれ、沿道の市民に憲法改悪反対を訴えた。

3面

高江現地レポート
大阪府警の差別暴言許さない
10月29日 高江と瀬嵩(大浦湾)で集会

抗議集会で発言する稲嶺名護市長(10月29日 大浦湾・瀬嵩浜)

10月29日 高江と大浦湾・瀬嵩で集会が開かれた。
高江では正午よりN1ゲート前での「機動隊員による沖縄を侮辱する暴言を許さない!緊急集会」に400人が参加。大阪府警機動隊員の「土人」「シナ人」発言に、「暴言許さないぞ」「機動隊帰れ」と怒りの声を上げた。沖縄平和運動センターの大城悟事務局長は「憲法で保障された、われわれの表現の自由の権利を侵害することを許してはいけない」と訴えた。市民からは「機動隊員の発言は沖縄を蔑視しているとしか思えない。沖縄に対する構造的差別が機動隊員の発言の表れだ」と非難。「沖縄全体に関わることだから意識を高めないといけない」。また、「琉球処分から続く蔑視・差別の表れ、沖縄の人を野蛮人あつかいするからそんな言葉が出る」。さらに、「こんな発言がでるほど機動隊員の人間性を壊している責任は、ヘリパッド建設を強行する日米両政府にあると思う」とそれぞれの思いをぶつけた。
大浦湾・瀬嵩の浜では午後4時より「今こそ、当事者の声を・辺野古新基地を絶対つくらせない名護市民集会」(主催・島ぐるみ会議名護)が開かれた。名護市民はじめ350人が参加。
稲嶺進名護市長は、このかんの辺野古のたたかいの経過を報告し「海上作業が中断しているが、大浦湾の海底には大きな(コンクリートブロックの)塊が沈められている。一刻も早く撤去すべきだ」「一番近くに住んでいる私たちが、絶対に基地を造らせないという声を上げ、思いを伝えていこう」と呼びかけた。
高江からは、石原理絵さんが「高江の森、辺野古の海、沖縄の宝を皆さんといっしょに守りたい」と連帯あいさつ。大学1年になった、渡具知武龍君は「この問題の当事者として居ても立ってもいられず来ました。子どもの頃から関わってきました。政府は辺野古が唯一と言うが、ここには貴重な生物が、そして私たちが住んでいます」と訴えた。翁長久美子名護市議の「辺野古新基地建設に反対してきた名護市民はこれからも先頭に立とう」の決意を全員のものとし、最後にガンバローを三唱した。
31日 高江・N1ゲート前で機動隊による市民の排除がおこなわれ、砂利を積んだ10トントラック100台がゲートから入った。ゲートからの搬入が始まって以来最大の搬入量だ。その後も連日大量のトラックが砂利を搬入している。
11月1日 G地区と国頭村の宇嘉川河口を結ぶ訓練道路の建設に伴い大幅な変更がおこなわれた。全長2キロの訓練道路の半分を手作業による伐採から重機を使う方法に変更。道路の幅を拡張し、水陸両用戦車が通れる道路を造ろうとするものと思われる。
3日 辺野古「命を守る会」の「嘉陽のおじぃ」こと嘉陽宗義さんが逝去された。94歳であった。「おじぃ」は辺野古のたたかいの象徴で、今年の春、入院するまで辺野古テント村で座り込み、辺野古新基地建設反対闘争を最後までたたかった。5日の出棺では、たたかう仲間たちや、多くの辺野古住民から「おじぃ、ありがとう」の声に送られて旅立った。(杉山)

高江で今、何が起こっているか 10月31日 京都で緊急集会

10月31日、「マスコミが伝えない現実! 沖縄・高江で今、何が起こっているか 緊急講演会」が京都市内でひらかれた(写真)。主催は、高江支援緊急行動@京都。沖縄から伊佐真次さんと小口幸人弁護士を迎え、300人が参加。
ヘリパッド建設が強行されている東村高江に住む伊佐さんは、政府の攻撃の実態と住民の闘いを詳しく紹介。小口さんは政府のやっていることの違法性と、「差し止め裁判」について説明した。アメリカが日本を植民地と考え、日本は沖縄を植民地と考えている。高江現地に駆けつけ工事を遅らせよう。(多賀)

やまゆり園事件に怒りの声
「骨格提言」実現へ大フォーラム
10月27日

「10・27『骨格提言』の完全実現を求める大フォーラム」が、東京・日比谷野音で、しょうがい者ら600人を集めて開かれた。集会には、多くの闘うしょうがい者団体・個人が揃い踏みした。大フォーラムが600人を集める実体があり、かつ闘う内実のある団体に成長したのが嬉しかった。
発言者が多様であり、内容も鮮明だった。発言者を紹介する。
保坂展人世田谷区長、ピープルファースト・ジャパン(知的しょうがい者の当事者団体)、こらーるたいとう(精神しょうがい者の当事者団体)、優生思想反対の神経筋疾患ネットワーク、福祉労働者の立場から・ゆにおん同愛会と渡邉琢さん(かりん燈・京都)、多摩療護園園長と自治会代表、東京新聞記者・田原牧さん、全国青い芝の会(「脳性麻痺」者の当事者団体)、ALSさくら会が「津久井やまゆり園しょうがい者殺傷事件」への怒りの声を挙げた。
連帯アピールでは、障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会(元違憲訴訟団)、病棟転換型居住系施設について考える会、JD日本障害者協議会、国会議員(阿部知子、金子恵美、山本太郎各議員が発言、国会の都合で来られなかった福島みずほ議員はメッセージ)。リレートークでは、「尊厳死」法制化に反対・バクバクの会(人工呼吸器をつけた子の親の会)、優生手術に謝罪を求める会、難病をもつ人の地域自立生活を確立する会、反貧困ネットワーク共同代表・宇都宮健児さん、65歳問題で福島からと兵庫県精神障害者連絡会の高見、習志野市によるしょうがい者不当解雇事件の当該。集会宣言などで、障害連、HANDS世田谷。
場所を移した厚労省前集会では、怒りネット、全国「精神病」者集団、その他しょうがい者多数が発言した。
「津久井やまゆり園しょうがい者殺傷事件」への怒りに満ちたしょうがい者、知的しょうがい者、精神しょうがい者の発言は、施設や精神病院に長年にわたり閉じ込められ、また虐待されてきた自らの経験への怒りの声だった。「死ぬまで閉じ込める」のと「肉体的に殺す」のとはいったい区別されるだろうか。残酷さにおいて変わることはないのではないか。殺され傷つけられた46人のしょうがい者たちの痛みと苦しみ悔しさに共感し、共有する発言が続いた。
また、事件を利用して措置入院の強化が狙われている。精神しょうがい者は二重の恐怖の中に置かれている。「役立たず」と言われて殺される恐怖と「事件を起こしたのはお前たちの同類だ」と迫られる恐怖と。
政府は、差別的憎悪犯罪を憎む言葉を一言も発しないばかりか、容疑者Uに措置入院歴があったということを利用して精神保健福祉法の改悪などで精神しょうがい者に迫害をくわえようとしている。Uが北里大学東病院に措置入院をしていた時の最終診断は「大麻の影響であり精神病ではない」として退院させた。厚労省の検討会はその病院の対応に間違いはなかったと一旦結論付けたが、政治家が介入して「精神しょうがい者取り締まりの法整備が必要」という「中間とりまとめ」へと180度逆のものに変えてしまったことが明らかになっている。

差別と闘う

またしょうがい者のさまざまな闘いが提起される集会だった。「尊厳死」法制化、制度の谷間の問題、貧困と生活保護、65歳問題、しょうがい者差別解雇の問題が提起された。しょうがい者は生きていく上でさまざまな差別にあっている。それはしょうがい者が自ら闘うことによってしか乗り越えられないが、それぞれの場からの闘いがおこなわれている。
厚労省前に場を移した集会では、多くのしょうがい者がマイクを握り政府・厚労省による差別の強化を許さず、「骨格提言」の完全実現を求める立場から怒りの声をあげた。
なお、集会には多くの賛同が寄せられ、財政的に支えていただいたことをこの場を借りてお礼申し上げます。

「大フォーラム」

大フォーラム実行委員会は、2013年に発足し、毎年10月末に日比谷野外音楽堂で集会をおこなってきた。今年で4回目。2011年8月、政府に設置された障がい者制度改革推進会議(委員の過半数はしょうがい者とその家族)の総合福祉部会が「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(通称「骨格提言」)を発表した。しょうがい者が地域自立生活をしていくための政策を取りまとめたもの。2005年10月31日に成立した障害者自立支援法に対するしょうがい者とその関係者の憤りが原動力となった。2006年10月31日以降、毎年10月に1万人を超える人々が日比谷に結集して、その意思を示してきた。
ところが、2012年に「骨格提言」に基づいて作られるはずの法制度は、障害者自立支援法の一部改訂(実質は、ほとんど変わらない「障害者総合支援法」の制定)に終わり、同時に大手の団体は日比谷野音での集会を止めてしまった。
「『骨格提言』を求める声と、毎年10月日比谷に結集する連帯の灯を消してはならない」―〈「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会〉は、こうした思いの人々が集まり結成された。当初は100人ぐらいの集会から始まったが、さまざまなしょうがい種別を超え、高齢者との分断も超えた高い思想性は多くのしょうがい者と関係者の支持を得ている。(高見元博)

4面

投稿
万年筆のインク 「補充の可能性」説が破産
狭山再審へ全国連が集会
10月30日 東京

10月30日に東京日比谷図書文化館ホールにおいて、第3次再審闘争勝利、全国連中央集会が100人の参加で開かれました。講演では福島県富岡町に住んでおられた木田節子さんが原発事故で家と故郷を失ったショックと避難生活の中で、「原発は間違い」と確信し、5年前から行動を始めた報告がなされました。
家族や友人の多くが原発で働き、何の疑問も持たなかったが、避難生活の中で、補償を巡って、福島の人々の間にも、「お金をもらえていいね」などの差別が生まれていて、社会の矛盾を強く思うようになりました。原発が再稼働されて、この国は福島でこんな事故を起こしながら懲りないのだろうかと家族で話しているという講演でした。今まで普通の主婦であった人が淡々と語る話は胸に迫るものがありました。

万年筆インクの矛盾

万年筆のインクについて鑑定結果の報告がありました。検察は万年筆と被害者の習字の用紙や日記や、インクの押収物について、さらに警察がおこなっていた鑑定などの万年筆に関する証拠物を開示しました。弁護団がそれらを再鑑定して再審を要求しているものです。
インクの種類はパイロット社製のもので、押収物は被害者のものと、郵便局と被害者の友人のものがありました。裁判で確定した判決では、被害者はライトブルー(パイロット社ではジェットブルーが製品名、すでに生産していない)のインクを使っていました。被害者が事件当日のペン習字にも使用していましたが、石川さん宅から発見された万年筆にはブルーブラックのインクが入っていました。この矛盾を判決では途中でブルーブラックのインクを補充した可能性は否定できないとして、被害者の万年筆であると認定しています。

インクのDNA鑑定

これを今回の下山鑑定では、ペーパークロマトグラフィー検査でインクの成分分布を比較したのです。ジェットブルーとブルーブラックのインクは成分が違うもので作られており、2つを混ぜた場合にはどんなに少量でも両方の成分が現れるので、違いは明白です。石川さん宅から発見された万年筆からは、ブルーブラックの成分しか検出しませんでした。これは事件当時に警察が鑑定していたものと完全に一致しています。
警察は当時発見された万年筆と郵便局と友人のものを比較した結果、全部完全に一致していたという鑑定をしており、ブルーブラックだけを検出していたのです。
今回の鑑定結果のポイントはライトブルー(ジェットブルー)とブルーブラックを混ぜた場合には両方の成分が出てくることが絶対であると判明したのです。したがって寺尾判決や最高裁の「どこかでブルーブラックのインクを補充した可能性を否定できない」とした判決は間違っていると科学的に証明したことです。これはインクのDNA鑑定です。
高裁はこの事実の前に再審を開始するしかありません。検察は反論があるならばしてみろということです。

再審を急げ

基調報告では、「石川さんの年齢からも再審を急ぐべきだ。三大物証の1つが完全に、無実を証明することになった。要請行動には担当検事が出てくるのでこれを強く要請する。決意を込めて要請行動を成功させよう」と訴えました。
さらに「新たな地名総監」鳥取ループ・示現舎を根絶・追放するために全国から糾弾状を集中しようと訴えました。彼らはそうした抗議文などは必ずネットでアップするので、抗議は有効だとみんなの参加を呼びかけました。その後、高裁前、経産省前テントから東電前を一周するデモを元気よくおこないました。(生駒陽一)

投稿
北部訓練場内ヘリパッド建設反対 ~高江座り込み行動に参加して
反戦兵士と連帯する会会員 医療労働者(東京)

参院選翌日の急襲

参院選翌日の7月11日未明、「北部訓練場」に突然工事用資材の搬入が強行されてから、10月22日で3カ月を経過した。安倍政権による年内完成のロードマップに基づいて急ピッチで工事が進められている。
不正改造ダンプカーによる砂利搬入を阻止するために、多くの沖縄県民や本土から駆けつけた市民がゲート前に座り込み、機動隊権力と対峙している。さらに、国道沿いでも輸送中のダンプに向けた抗議行動が連日たたかわれている(写真)
これにたいし、警察権力は本土から警視庁機動隊を筆頭に愛知・大阪・福岡など500人以上の機動隊を送り込み、抗議する市民に襲いかかっている。

弾圧とヘイト

10月17日、沖縄平和運動センターの山城博治議長が不当逮捕された日に現地入りした。逮捕直後より不当逮捕弾劾の抗議行動と救援活動が開始されるとともに、ゲート前抗議行動の体制強化のための取り組みも開始され、多くの人びとの座り込みによってダンプカーを止め、搬入を阻止し、工事を阻止するたたかいをあらためて位置づけ、強化する方針が確認された。
ゲート前集会では、沖縄県民をはじめ全国から座り込みに参加する市民から、新基地建設への激しい怒りと、絶対に阻止するためのたたかいに参加し続ける決意の表明が語られていた。さらに、不当逮捕を許さず打ち返し、抗議行動へのさまざまな勢力の攻撃に立ち向かい、身体を張って抵抗する熱意と行動が示されていた。高江現地での攻防を全国の人々に伝える必要性を参加者一人一人が自覚し、それを体現するものとして機動隊と対峙し、たたかっている。
現地では、17日も18日も右翼による挑発や暴力、ヘイトスピーチが繰り返されるなか、機動隊権力は当然のようにそれを容認し擁護するだけでなく、右翼の連中と仲良さそうに笑いながら雑談し、一緒になって暴力行為を図るに至っている。機動隊権力による沖縄県民や朝鮮人民に吐き捨てられるヘイトスピーチは、言葉の暴力に留まるものではなく、機動隊権力による直接的暴力、殴る・蹴り飛ばす・身体や腕を捻りあげるなどの行為と共に吐き捨てられている。差別・抑圧の暴力が連日当たり前のように繰り返されている暴挙を許してはならない。

本土の責任と自覚

沖縄県民大会でのスピーチで女性暴行殺人事件の第2の加害者は、日本本土に住む私たちであること。そして、私たち本土人民は沖縄に向き合うべき立場にあり責任があることが提起されている。
軍事基地の存在により引き起こされるであろう事件や事故に第2の加害者として居続けるのか、新基地建設・沖縄差別の加担者、加害者になるのか。無視・無関心は右翼・機動隊・軍隊の暴力を増幅させ、政府権力・官僚による組織的・暴力支配の強化を生み出す。
政府の沖縄政策に抗議し、本土人民は新基地建設絶対阻止をたたかい抜こう。

書評
ナチスの障がい者抹殺計画「T4作戦」
『灰色のバスがやってきた』
(フランツ ルツィウス著 山下公子訳 草思社1991年刊)

障害者を目的意識的に大量殺戮したやまゆり園事件は、ナチスの「T4作戦」を想起させる。ナチスといえば、シオニストが声を大にして強調した関係もありユダヤ人のホロコーストばかりが強調される。しかし、実際にはユダヤ人の大量殺戮以前に1939年から秘密裏に開始された障がい者の抹殺計画「T4作戦」の方が先行している。ガス室での「安楽死」の技術は「T4作戦」を踏襲したものであった。
ナチスの障がい者「安楽死」作戦については、ユダヤ人の殺害に比較して近年までほとんど公にはされてこなかった。これらに関する代表的な著作としては『1939― ドイツ第三帝国と第二次世界大戦』(同文館出版)中の木畑和子論文がある。また、『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』(現代書館、ヒュー・グレゴリー・ギャラファー)が詳しい。本書『灰色のバスがやってきた』は、史実を丹念に掘り起こしながらも比較的読みやすい。
ドイツ、エッセンの「フランツサーレス・ハウス」はカトリック教会によって運営されている「白痴の教育及び養護組織」である。この施設の収容者から800人近くが「灰色のバス」に乗せられ、東部ドイツのドレスデン周辺の「殺人施設」に送られ2度と帰らなかった。「灰色のバス」とは、安楽死政策を実行したT4組織(ベルリン ティーアガルデン通り4番地に管理局があった)の移送部門(秘匿名「公共患者輸送会社)のバスが灰色に塗装されていたことによる。本書は、この「フランツサーレス・ハウス」の収容者についての物語である。

社会を脅かすのは誰

1934年「遺伝疾患を持つ子孫を避けるための法」を推進するための大々的キャンペーンがおこなわれた。遺伝疾患を持つ人がいかに民族共同体に負担をかけているか、意味もなく国民の大事なお金を使う存在であるか、が強調された。
椅子に腰かけた脳性まひと思しき男性の後ろに、健康なドイツ青年が立ち、かばうように肩に手を置いている。そして「この立派な人間が、こんなわれわれの社会を脅かす気違い(ママ)の世話に専念している。われわれはこの図を恥ずべきではないのか」というグロテスクなキャプション。
「市民たちのお上品ぶりを排斥して『断固として真実に取り組む』」とナチスは続けて言う。

現在の欧米日では

現在の日本においても、一見「論理的」に見えながら、その実は事実を歪めた語り口を週刊文春や産経新聞に見ることができる。
ユダヤ人、障がい者、ロマ等に対するホロコーストをおこなったナチスは、欧米や日本などでは、人類にたいする犯罪者というレッテルが張られている。
にもかかわらず、欧米ではイスラム教徒にたいする排斥が激化し、米国では依然として黒人差別に基づく警官による射殺事件が続発している。また、日本においても、立場の弱い相手を叩く歪んだ風潮が安倍政権を背景に吹き荒れている。
ナチスは、経済的に追い詰められた人間を歪んだ形で獲得しようと目論む輩の最も有効なモデルとして生き続けている。総中流社会が崩れた欧米、日本などにおいては、ナチスに類する勢力が勢いをつけつつある。その形態はナチスドイツと同一ではないが、アジアで殺戮を繰り返した大日本帝国の歴史を賛美する日本会議などはナチスと同じ性質をもっている。
やまゆり園事件は、直接的には日本会議などとは関係ないかもしれない。しかし、その背景には追い詰められた人間を、立場の弱い相手を叩くことを煽る中で、歪んだ優越感を引き出そうとする風潮に大きく影響されたものと思わざるをえない。
(山田一郎)

5面

軍事力の限界―憲法9条の可能性
「駆け付け警護は他国部隊のため」
元自衛官 泥 憲和さんに聞く(上)

安保関連法施行後、「駆け付け警護」の新任務を付与された自衛隊の交代部隊が青森第9師団から南スーダンPKOに派遣される。「法律はでたらめ、現地情勢は戦闘状態。駆け付け警護は他国部隊防護であり、市民を救出できない。他国の人を殺すな、自衛隊員を死なせるな。日本は、武力に代わる平和ミッションで貢献できる」という、元自衛官・泥憲和さんに聞いた。(11月8日 文責、見出しは本紙編集委員会)

他国へ出かけ、他国部隊を守る

安保法制になってから自衛隊の任務は大きく変わった。これまでの「自分の国、国民を守る」とはまったく違ってくる。「他国へ出かけ他国の軍隊を守る」という新しい任務が命じられる。
いま自衛隊では「死生観の確立」という精神教育がおこなわれている。ある駐屯地では「自分の身体よりも銃、武器を守れ。お前が負傷、死んでも他の隊員がその武器を使う。重傷者は見捨てろ。それが実戦だ」という訓練である。それこそ実戦を知らない訓練だ。負傷したら見捨てられる軍隊で命をかけて戦えるだろうか。絶対に、士気は下がりますよ。いま、法律、政治的目的、自衛隊員を守る体制のデタラメさの上に、自衛隊自身がこのような教育、訓練をしている。米軍を誉めるわけではないし、いいか悪いかは別にして、米軍は兵力を維持するため1人でも多く助ける。それが軍隊というもの。
国連PKOは、いま世界15カ国で展開されている。そのうち9カ所が武力行使を前提にし、6カ所は武力行使を前提にしていない。ところが日本政府は、わざわざ武力行使が前提になっている内戦中の南スーダンに派遣している。

南スーダンは内戦状態
PKO5原則は崩れている

南スーダンの現状はというと、7月に大規模な「衝突」があり300人近く死者が出たと言われている。日本の報道は当てにならない。現地紙『スーダン・トリビューン』によると、「双方の死者は1000人を超えた」と報道している。これが日本政府のいう「衝突」の記事です。市民の死者は別。稲田防衛大臣はしぶしぶ訪問し、「散発的な銃撃戦、すでに沈静化した。PKO5原則は崩れていない。撤退はさせない」という。
まったく嘘。これまではどんな戦闘があっても、「自衛隊が駐屯しているジュバ市内(国際空港の直近)から離れているから大丈夫」といってきた。7月の戦闘は、宿営地から3キロもない至近距離。そんなところでロケット砲の撃ち合いがあった。最近の報道では、もっと近いところでも銃撃戦があったといわれている。「遠くだから危なくない」といっておきながら、近くになったら「近くでも危なくない」という。
稲田防衛大臣は「散発的銃撃戦であり、落ち着いている」と。しかし、現地紙を見ると「スーダン人民解放軍(政府軍・キール大統領派)は宣戦布告を示唆。大統領は『野党軍を粉砕せよ』といっている」と報じている。一方、野党軍・マシャール元副大統領派も「政権への武力抵抗」を呼びかけ、「不正な政権に対する宣戦を布告」といっている。お互いが宣戦布告しているという事態。日本政府の答弁とはまったく違う。
7月の戦闘における対応が悪かったと、オンディエキPKO司令官(ケニア人)が国連の手で解任された。ケニア政府は責任転嫁だと怒って部隊を引き上げた。混乱の責任を取ってケニア人司令官を解任した事務総長代理が辞任した。英国、ドイツ、スウェーデン、ヨルダンなどは派遣していた文民警官を国外退避させた。いまやPKO組織自体が崩壊しそうなほど混乱している。
こういう状態で「駆け付け警護」を閣議決定するという。先日テレビで市民、NGOを助ける「駆け付け警護」らしき訓練映像を流していたが、あれはおかしい。もともと「他国の軍隊を助ける」と導入された条文であり、市民救出が対象ではない。

「正当防衛で駆け付ける」というウソ

内閣が策定した「国際平和協力業務実施計画」にもとづく「南スーダン国際平和協力隊の設置等に関する政令」には市民を守る任務は含まれていない。つまりそういう任務が与えられていない。
武器の使用という面から見ても、市民を守ることが想定されていない。自衛隊が武器使用を許されるケースは、PKO協力法に規定されている。1つは自分や同僚、自己の管理下にある者の防護。2つ目は宿営地防護、施設内に外国軍部隊がいたら、それも防護する。これは「駆け付け」ではなく、自分の居るところが襲われたら守る。3つ目に「任務妨害の排除」というのがある。前述の通り市民防護の任務を自衛隊は付与されていない。
最後にPKO関係者の防護。「駆け付け」警護に当たるのは、この条項だ。PKO関係者というのは、PKOをおこなっている他国の部隊、あるいは参加している国連職員。こういう人たちを守るという。日本のNGOなどはPKO活動じゃないから該当しない。だから自衛隊は市民を守る権限を持っていない。
では他国の部隊を守るというのは、どういうことか。これまでPKOで「駆け付け」警護がおこなわれたのは1回だけ。1993年のソマリアPKO、モガディシュの戦闘のとき。参加したのはアメリカ軍特殊部隊。米軍の陸海空特殊部隊が、武装組織の幹部を「逮捕」するために出動し失敗、逆に包囲され孤立した。そこで「駆け付け」部隊が救出に行き、さらに包囲されもっと大きな損害を受けた。行ったのは山岳師団、パキスタン軍、マレーシア軍。結果は米軍18人、マレーシア軍1人の19人の戦死者と負傷者73人。負傷といってもちょっとしたケガなどは入らない。銃創、砲弾の破片などによる重傷。参加した160人のうち半数を超える92人死傷、戦闘ヘリ2機を撃墜され、車両多数が破壊される大損害を被った。
そもそも完全武装した軍隊が「救出を要請」してくるのだから、ものすごい戦闘に決まっている。この作戦に失敗した翌年、米軍はソマリアから撤退した。その翌年は「米軍がいないのでは、どうしようもない」と国連PKO部隊が全部撤退した。

自衛隊は、対応できる装備、能力を持っていない

こういうことを自衛隊にやらせようということ。では、何ができるか。いま派遣されている部隊は施設部隊が中心であり、戦闘部隊ではない。道路工事などを受け持っている。先日のテレビでは、実態は隠しているといわれているが、盾を持ってやっていた。車両は軽装甲機動車、銃弾は防げるが対戦車ロケットにはひとたまりもない。NGOらしき人を救出するシーンも、車両は弾を防げないホロ付きトラックだった。
その自衛隊が戦うことになるかも知れない相手は戦闘機、武装ヘリ、戦車、大砲を持っている。立ち向かえといわれる自衛隊の装備は機関銃5、小銃297丁、拳銃84丁程度である。武器を使うことに、みなさんは反対でしょう。しかし、武器といってもこの程度。戦闘職種である普通科部隊の隊員を送ってもこれでは何もできない。それどころか、自らも守れない。
もし撃たれたらどうするのか。防衛省は、派遣自衛隊員に個人携行救急品を支給している。包帯、止血帯、ガーゼ、人工呼吸シート、チェストシール、ハサミ、手袋。これだけ。痛み止め、消毒薬すらない。
他国の軍隊はどうか。直後の救命に必要な救急品、薬品を支給している。戦闘現場では、直撃されなくても至近距離に着弾したとき破片や石、砂が飛んでくる。そのためゴーグルが標準装備されている。派遣自衛隊にはない。隊員が自費で購入すると「余計な装飾品だ」といわれる。衛生隊員が準看護師資格だと緊急手術はもちろん痛み止め注射、気道確保もできない。
もともと自衛隊は専守防衛が建前だから「戦場」は国内にということになる。後方に移送すれば病院で治療ができる。それを前提に救急体制を考えていた。南スーダンでは、どこまでさがっても病院はない。医官が3人行っているが、手術ができる医師がいない。これでは、助かる命も殺される。防衛省ホームページを見ると、「米軍並み携行救急品の全隊員装備には13億円かかり、現実的でない」と書いてある。1機100億円のオスプレイはポンと買う。こんな防衛省のもとで自衛隊員は新任務を命じられる。(つづく)

どろ・のりかずさん 1954年、姫路市生まれ。中学卒業後、陸自少年工科学校を経て自衛隊員に。自衛隊をやめてからは会社経営など。安倍政権による自衛隊員の命をかえりみない戦争法などの一連の攻撃にたいし、『安倍首相から「日本」を取り戻せ』(かもがわ出版)などと積極的に発言している。

6面

農地法裁判の上告棄却弾劾
「この地で生きていく」 市東孝雄さん

最高裁の上告棄却を弾劾する記者会見をおこなう(左から)市東孝雄さん、萩原富夫さん、葉山弁護士(10月27日 成田市内)

三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの農地をめぐる農地法・行政訴訟併合裁判で、、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は、10月25日、市東さんの上告を棄却した。絶対に許すことはできない(前号速報)。
反対同盟は直ちに声明を発し、最高裁による「強制収用宣言」にも等しい決定を徹底弾劾し、強制収用を阻止し市東さんの農地を守り抜く決意を表明した。
また市東さんは「空港会社が農地に手を出すなら、一丸となってからだを張って闘う」「『この地で生きていく』、それが自分のスタンスだし、生き方です」と、きっぱりと決意を明らかにした。

「農に生きる」こと

成田空港会社(NAA)が強奪しようとしている市東さんの農地では、現在無農薬・有機農業が営まれ、産直運動によって多くの消費者と結ばれている。こうしたあり方は、危機に立つ日本農業の再生へのひとつの道筋をも示している。
また豊かな土壌と農作物は、農家・農民の長年にわたる耕作という営為のなかで作られ、親子3代、100年にわたって受け継がれてきた、まさに農地は命とくらしの源泉であり、農地は単なる土地ではないし、いわゆる売り物・買い物というようなものでもない。
今回の決定は一言でいえば、空港建設という「公共事業」に供するという目的があり、NAAが「十分な補償金を積む」としているのだから、農地を明け渡せ。農地法など法的な問題などはこの際関係ない、というものだ。
最初に農地明け渡しを認めた千葉県農業会議の決定、1審千葉地裁(多見谷裁判長)判決、2審東京高裁(小林裁判長)判決、そして今回の最高裁決定と、一貫している「論理」だ。「法の番人」たる裁判所が法と法の精神を投げ捨てて、「法の下の平等」を謳いながら、市東さんの訴えをすべて切り捨て、国・空港会社の農地強奪に百%の承認を与えている。
そもそも農地法は、農業と農民の権利を守るための法律(基本法)であり、「耕す者に権利あり」を謳った法だ。この法で農地を取り上げるなどとは、天地をひっくり返したようなものだ。

耕作権裁判

空港会社の訴えは、農地法による明け渡し請求であったが、論理は有無を言わせず「公用地」取り上げを認める土地収用法そのものである。市東さんの農地は、空港予定地として土地収用法の対象地であった。しかし20年の期間を経て事業認定は失効し、土地収用法に基づく強制収用はできなくなった。「苦肉の策」というか、なりふりかまわず空港会社は、市東さんの耕作地の一部を農地法により、他の部分を「不法耕作地」として強奪する策に出てきた。後者は、現在一審千葉地裁で審理が続いている(耕作権裁判)。
耕作権裁判では、空港会社の重要証拠の偽造が明らかになり、2年間裁判が中断したうえ、今もその争いが継続しており、空港会社は追いつめられている。今回の上告棄却決定は、空港会社に救いの手をさしだし、千葉地裁に耕作権裁判の早期決着を促すものでもある。今回の判決は、この点でも絶対に許すことができない。

11月20日にシンポ

11月20日、〈市東さんの農地取り上げに反対する会〉が主催するシンポジウムが都内で開催される。集会のメインは市東さんの訴えだ。市東さんの怒り、思いを共にしよう。  来年1月30日には、千葉地裁で耕作権裁判の審理がおこなわれる。農地法・行政訴訟と耕作権裁判は二つにして一つのたたかいであり、今回の上告棄却決定を無効にしてしまうようなたたかいを展開しよう。(野里豊)

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カウンター行動に若者多数
神戸でヘイトデモを圧倒
10月30日

大横断幕をかかげてヘイトデモを圧倒した市民の行動

10月30日、神戸市内で強行されたヘイトデモに対し、市民の呼びかけによってカウンター行動がおこなわれた。三宮の花時計前に集合し反ヘイトのポスターを掲げ、ヘイトデモが予定される近くの東遊園地へ移動。ヘイトデモ参加者は意外と少なく30人ほど。150人ほどの警官が囲み、それをとりまくようにカウンター側も約150人が抗議の声を上げる。カウンター側は若い世代が多い。
ヘイトデモ隊が出発したが、先頭にヘイト側の街宣車1台、車道をヘイトデモ参加者が1~2列、並行して歩く警官の列。歩道のカウンター参加者が車道に入るのを防ぐためにか、歩道に沿って別の警官隊が列をつくり、その外側をカウンター参加者が歩く。
「ヘイトスピーチは法律で禁止されています。ヘイトスピーチはやめましょう!」と警察が警告。またカウンター参加者の声が大きく「ヘイトデモをやめて帰れ!」「ヘイトデモ中止!」と叫ぶ。「警官隊のデモみたいや」という人もいた。別の誰かが「反ヘイトのデモや」と言う。デモ隊は下山手通の韓国領事館からトアロードを南下、大丸前から花時計前を過ぎたあたりで流れ解散した。
その間、反ヘイトデモもずっと同じ形で進んだ。ヘイトデモ隊より警官、カウンター参加者が多く市民には異様な光景だったかもしれない。ヘイト側が「日韓断交!」「韓国粉砕!」と大音量で叫ぶが、デモ参加者の声は小さく、概して元気がない。不満のはけ口を、自分より弱いと思われる人たちに向ける気晴らしなのか。
神戸でのヘイトデモは2年ぶりで、2年前もカウンター側に圧倒されたそうだ。次にある場合は、さらに多くの返しで「もう、やめた!」という気持ちにさせたい。(W・S)