琉球大学工学部をこの春卒業した古田瑠成さん(22)は、ゲーム形式で数学を基礎から楽しく学べるスマホのアプリを卒業研究で開発した。教育学部の日熊隆則准教授が学生たちと沖縄市の美東中で続ける「土曜塾」に通う中学生たちを対象に、教育学部の学生も協力して学部横断的な大学の「知」を結集させた。
土曜塾は数学教育が専門の日熊准教授が手掛けて10年以上になる。数学が苦手な生徒たちが小学校の復習を含めて基礎から根気強く学ぶにはどうすればいいかと思案する中、ゲームで楽しみながら学ぶことを発案。工学部で人工知能(AI)を研究する宮田龍太助教に相談して宮田研の学生らがアプリ作成を始め、古田さんの先輩が原型を作った。
アプリはロールプレイングゲーム形式で、美東中など沖縄本島の各地を舞台に、生徒たちがつまずきやすい計算に挑戦。正解を重ねて“クリア”すると“モンスター”を入手できる。生徒の気持ちを引き付けるため、土曜塾に関わる教育学部の学生が物語を作り、生徒に人気がある学生も登場する。生徒はゲームを通して明確になった分からないところや疑問点を、講師である学生たちに質問することができる仕組みだ。
正誤のほか回答までの時間や間違い方のデータを蓄積することで生徒の理解度を分析し、次の出題の難易度を調整したり、効率的な出題順を推測したりすることもできる。「基礎から応用」の順ではなく「まず応用」という方法で、挑戦して克服できた生徒はその後の点数の伸びが大きい傾向があったという。
ただ「苦手なものから始めると途中でやめてしまうリスクがある。どれだけ粘れるかの“忍耐力”は子どもによって違う。それが可視化できれば」と古田さん。この春からIT企業でシステムエンジニアとして就職するため、研究を「後輩に引き継ぎたい」と語った。