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飯田橋文学会とは?

そもそもは、お互いの仕事に関心を持っていた文学者たちが、定期的に顔を合わせ、話をするようになったのが、この会の発端でした。せっかく同時代に文学に携わっているというのに、私たちが面と向かって話をするのは、文芸誌の対談やシンポジウムなど、数年に一度くらいで、ヘタをすると、その機会さえありませんでした。

本はもちろん、家で独りでじっくり読めばいいのですが、読んだ本について語り合うというのもまた、文学の大きな喜びです。古今東西の作品についてのみならず、お互いの書いたものについても、忌憚なく意見を述べ合いました。その場所が、たまたま飯田橋界隈だったので、会の名称は、「飯田橋文学会」となりました。

文学の歴史の長さだけ、それぞれの時代に、それぞれの文学好きの集いがありました。飯田橋文学会の面々は、何らかの文学理念の下に集まったわけではありません。
むしろ、個々の自由な活動によって、相互に常に新鮮な刺激であり続けることこそが理想です。

私たちは、そして、この「家で独りで」本を読むことにとどまらない文学の楽しみを、より多くの人と分かち合いたいと考え、この度、ホームページを立ち上げることにしました。参加者の創作物や最新ニュース、朗読・対談その他の動画、ゲストの招待、イヴェントの告知、メールマガジン等、皆さんと一緒に、内容の充実を図っていきたいと思っています。

ここが新しい、開かれた文学の交流の場となることを切望しています。

2013年4月 飯田橋文学会一同

作家

青木 淳悟

1979年埼玉県生まれ。早稲田大学第二文学部表現・芸術系専修卒業。2003年「四十日と四十夜のメルヘン」で第35回新潮新人賞を受賞しデビュー。2005年、同作を収録した作品集『四十日と四十夜のメルヘン』で第27回野間文芸新人賞受賞。2012年『私のいない高校』で第25回三島由紀夫賞受賞。その他の著書に『いい子は家で』『このあいだ東京でね』がある。主夫兼作家。

翻訳家・作家

コリーヌ・アトラン

1958年、アルジェリア生まれ。パリ在住。1978年、パリのINALCO(フランス国立東洋言語文明学院)で日本語学科学士を取得した後、2年間日本に滞在。 その後ネパール(カトマンズ)のフランス文化センターでフランス語を教える。1990年に翻訳家としての活動を始めて以来、近代文学の古典的作品から歴史小説、戯曲、現代文学に至るまで、約40冊におよぶ日本の文学作品の翻訳を手がける。2006年から2008年の秋には、関西日仏学館で翻訳を教えた。辻仁成『白仏』(メルキュー・ド・フランス社)は1999年度フランスのフェミナ賞(外国小説部門)受賞。2003年に村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』で小西財団日仏翻訳賞受賞。伊坂幸太郎『オデュボンの祈り』で Zoom Japon (雑誌)日仏翻訳賞受賞。他、主な翻訳に森鴎外『山椒大夫』、林芙美子『浮雲』、井上靖『淀どの日記』、 司馬遼太郎『最後の将軍』、浅田次郎『蒼穹の昴』、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』、村上春樹の『海辺のカフカ』、平野啓一郎の『一月物語』を含めた数々の作品がある。『ジャカランダの青い花』(パリジャット作、ストック社、1996)などネパールの文学作品の翻訳も手がけ、ネパールの仏教徒の舞に関する研究書『Danses de diamant(金剛舞)』(カイラシュ社、2002)の著者でもある。自身初の小説となる『Le Monastère de l'Aube (曙の僧院)』を2006年、アルバン・ミシェル社より出版した。同書は2012年、文庫本でピキエ社より再出版された。2作目となる小説『Le Cavalier au Miroir (鏡を持つ騎馬兵)』(ラジアテック社)を2014年2月に出版予定。

翻訳家

マイサラ・アフィーフィー

アラビア語通訳・翻訳家。1971年、エジプト・カイロ生まれ。カイロ大学地球物理学科卒業。在エジプト大使館で日本語を学ぶ。1996年、留学生として来日。1999年からフリーランスの翻訳家となる。平野啓一郎の『日蝕』、三島由紀夫の『志賀寺上人の恋』、小室直樹の著作等、幅広く翻訳を手がけた。

東京大学准教授

阿部 賢一

1972年、東京生まれ。東京大学人文社会系研究科准教授。チェコを中心とする中東欧の文学・美術、シュルレアリスム、比較文学に関心を寄せている。著書に『イジー・コラーシュの詩学』(成文社)、『複数形のプラハ』(人文書院)など、訳書にアイヴァス『もうひとつの街』・『黄金時代』、クラトフヴィル『約束』(以上、河出書房新社)、フラバル『剃髪式』(松籟社)、ブリッチ『夜な夜な天使は舞い降りる』(東宣出版)、オウジェドニーク『エウロペアナ 20世紀史概説』(共訳、白水社、第一回日本翻訳大賞受賞)などがある。

東京大学准教授

阿部 公彦

1966年生まれ。東京大学文学部准教授。英米文学研究と文学一般の評論を行う。著書には『英詩のわかり方』、『英語文章読本』、『小説的思考のススメ』など啓蒙書と、専門書としては『即興文学のつくり方』、『スローモーション考』、『文学を〈凝視する〉』など。翻訳は『フランク・オコナー短編集』。現在、「Web英語青年」と紀伊國屋書店「書評空間」(Web)で連載を行う。現在進行中のテーマは「胃病の倫理」、「準備体操論」、「ですます調の功罪」、「幼な語り」、「問答形式とは何か」など。早稲田文学新人賞(1998)。

作家・翻訳家・早稲田大学講師

辛島デイヴィッド

作家・翻訳家・早稲田大学講師。著書に「神村企画」、英訳に金原ひとみ「蛇にピアス」「オートフィクション」、松浦寿輝「巴」、編著/選集に「March Was Made of Yarn: Writers respond to Japan's Earthquake, Tsunami and Nuclear Meltdown」「Pushkin Press Japanese Novella Series」等。「グランタ・ジャパンw/早稲田文学」インターナショナル・エディター、NHKラジオ「英語で読む村上春樹」講師なども務める。

東京大学教授

ロバート・キャンベル

日本文学研究者・東京大学大学院教授。1957年ニューヨーク市生まれ、1985年に来日、2007年から現職。近世・近代日本文学が専門で、とくに19世紀(江戸後期~明治前半)の漢文学と、漢文学と関連の深い文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せている。テレビでMCやニュース・コメンテーター等をつとめる一方、新聞雑誌連載、書評、ラジオ番組出演など、さまざまなメディアで活躍中。主な編著に『ロバート キャンベルの小説家神髄 ―現代作家6人との対話―』(NHK出版)、『読むことの力 ― 東大駒場連続講義』(講談社)、『海外見聞集』(岩波書店)、『漢文小説集』(岩波書店)、『江戸の声 ―黒木文庫でみる音楽と演劇の世界―』(駒場美術博物館)、『Jブンガク ―英語で出会い、日本語を味わう名作50―』(東京大学出版会)、「電子版黒木文庫」などがある。

翻訳家

鴻巣 友季子

J・М・クッツェーやマーガレット・アトウッド、アンドリュー・ミラー、アリス・マクダーモットなど英語圏の現代作家の作品を翻訳、紹介すると同時に、ゼロ年代からは古典文学の新訳にも力を注いでいる。

また、翻訳のあり方や方法論に関する評論を続けている。
文学とワインを論じ合わせ、両者に通底する本質を考察する異色のワイン文学論「カーヴの隅の本棚」を「文學界」に足かけ9年、103回に亘って連載。

国内外の文芸評論も行う。朝日新聞書評委員(2007年~2011年)、毎日新聞書評委員(2011年~現在)。
週刊朝日および週刊ポスト書評委員、週刊新潮定期寄稿者。NHKラジオ第1「すっぴん!」内「新刊コンシェルジュ」担当。

主な訳書
クッツェー「恥辱」(ハヤカワepi文庫)、「エリザベス・コステロ」「遅い男」(以上、早川書房)、アトウッド「昏き目の暗殺者」(早川書房)、「ペネロピアド」(角川書店)、ミラー「器用な痛み」(白水社)、ブロンテ「嵐が丘」、ミッチェル「風と共に去りぬ」(2015年3月刊)(以上、新潮文庫)、ウルフ「灯台へ」(河出書房新社 世界文学全集Ⅱ-1)

主な著書
「カーヴの隅の本棚」(文藝春秋)、「熟成する物語たち」(新潮社)、「明治大正 翻訳ワンダーランド」(新潮新書)、「本の森、翻訳の泉」(作品社)、「翻訳問答」(片岡義男との対談集 左右社)、「全身翻訳家」(ちくま文庫)、「翻訳教室 はじめの一歩」(ちくまプリマー新書)、「孕むことば」(中公文庫)、「翻訳のココロ」(ポプラ文庫)

編集者・株式会社コルク代表

三枝 亮介

株式会社コルク代表取締役副社長。2001年講談社入社。2001年〜2005年週刊少年マガジン編集部、2005年〜2008年文芸図書第一出版部、2008年〜2012年群像編集部、2012年文庫出版部に在籍。2012年9月に講談社を退社、2012年10月から現職。

作家

柴崎 友香

1973年大阪生まれ。大阪府立大学総合科学部卒業。2000年、『きょうのできごと』でデビュー(同作は2003年に映画化)。『その街の今は』で織田作之助賞大賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、咲くやこの花賞、『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、『春の庭』で芥川龍之介賞受賞。『ビリジアン』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『パノララ』、エッセイ集『よそ見津々』など著書多数。

詩人・翻訳家

関口 涼子

作家、翻訳家、詩人。1970年新宿区生まれ。日本語とフランス語で創作を行い、パリで長く生活をしていたが、2013年9月よりフランスアカデミー招聘によりイタリア、ローマのヴィラ・メディチに滞在。主な著書『グラナダ詩編』、『機』(吉増剛造との共著、いずれも書肆山田 刊)、『Ce n'est pas un hasard』(P.O.L)など。主な邦訳書に、アティーク・ラヒーミー『悲しみを聴く石』(白水社)、マティアス・エナール『話してあげて、戦や王さま、象の話を』(河出書房新社)、仏訳書に梁石日『血と骨』、多和田葉子『容疑者の夜行列車』など。他、ヤマザキマリ、萩尾望都、岡崎京子、 滝田ゆう、杉浦日向子など、マンガ作品の仏訳も多数。

宇都宮大学国際学部准教授

田口 卓臣

1973年横浜生まれ。宇都宮大学国際学部准教授。17~18世紀西洋の哲学、科学、文学を中心に研究を続けてきた。現在は、20世紀以降の西洋哲学や日本近代文学にも関心を寄せている。主著として、『ディドロ 限界の思考----小説に関する試論』(風間書房、渋沢クローデル賞特別賞)、『怪物的思考----近代思想の転覆者ディドロ』(講談社)、『脱原発の哲学』(人文書院、佐藤嘉幸との共著)。訳書として、ドニ・ディドロ『運命論者ジャックとその主人』(白水社、王寺賢太との共訳)などがある。

東京大学准教授

武田 将明

1974年生まれ。東京大学総合文化研究科准教授。デフォー『ロビンソン・クルーソー』やスウィフト『ガリヴァー旅行記』など18世紀イギリス小説を研究しているが、日本とイギリスの現代文学にも関心がある。〈小説〉であることに負い目を感じつつ、それでも〈小説〉せずにはいられない、そんな奇妙なジャンルがなぜあるのかを考えている。評論に「囲われない批評―東浩紀と中原昌也」(『群像』2008年6月号)、「自分自身からの亡命者(エグザイル)―『水死』と晩年性」(『早稲田文学』4号、2011年9月)、翻訳にデフォー『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫、2011)、著書に『「ガリヴァー旅行記」徹底注釈』(富山太佳夫、原田範行、服部典之との共著、岩波書店)など。

作家

田中 慎弥

1972年山口県生れ。山口県立下関中央工業高校卒業後、就職もせずアルバイトもせず、大学へ行くわけでもなく、本を読んで小説を書くだけの生活を14年間続ける。2005年「冷たい水の羊」で新潮新人賞。2008年「蛹」で川端康成文学賞。同年単行本『切れた鎖』で三島由紀夫賞。2012年「共喰い」で芥川龍之介賞。単行本に『図書準備室』『神様のいない日本シリーズ』『犬と鴉』等。パソコン、携帯電話といった端末を持たず、自宅の電話やテレビの使い方もおぼつかないまま、紙と鉛筆で小説を書き続ける日々。

青山学院大学准教授

田中 裕介

1972年生れ、静岡県旧清水市出身。現在、青山学院大学文学部英米文学科准教授。専門はイギリス文学・文化史(とくに19世紀)。慶應義塾大学文学部(フランス文学専攻)卒業。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了(学術博士)。訳書にエドマンド・ホワイト『マルセル・プルースト』、ピーター・ゲイ『シュニッツラーの世紀』(以上、岩波書店)、デイヴィッド・バチェラー『クロモフォビア』(青土社)など。オスカー・ワイルド著、平野啓一郎訳『サロメ』(光文社古典新訳文庫)の註と解説の仕事の延長で、ワイルドと同時代文化の関わりを多角的な観点から検証する研究を進めている。

早稲田大学教授

都甲 幸治

1969年福岡県生まれ。アメリカ文学研究者、翻訳家。早稲田大学文学学術院教授。著書に『21世紀の世界文学30冊を読む』(新潮社)、『偽アメリカ文学の誕生』(水声社)。翻訳にジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(新潮社、久保尚美と共訳)、チャールズ・ブコウスキー 『勝手に生きろ!』(河出文庫)、ジョン・アーヴィング『未亡人の一年』(新潮文庫、中川千帆と共訳)、ジョン・ファンテ『塵に訊け!』(DHC)、DBCピエール『ヴァーノン・ゴッド・リトル』(ヴィレッジブックス)、マイケル・ヴェンチュラ『動物園―世界の終る場所』(学研)等がある。

作家

中島 京子

1964年東京生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。03年、田山花袋の小説『蒲団』を下敷きにした長編『FUTON』でデビュー。10年、『小さいおうち』で第143回直木賞、14年、『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞を受賞。主な著書に『イトウの恋』『宇宙エンジン』『女中譚』『かたづの!』『パスティス』などがある。

東京大学准教授

中島 隆博

1964年生まれ。東京大学東洋文化研究所准教授。中国哲学を東アジアあるいは西洋との比較の観点から研究しているが、魯迅を通じた中国の文学と批評に関心を持ち続けている。とりわけ、文学において前近代と近代が交錯するそのあり方には魅了される。魯迅について書いたものを収めたものとしては『残響の中国哲学―言語と政治』(東京大学出版会、2007)があり、近著には『悪の哲学―中国哲学の想像力』(筑摩書房、2012)がある。

作家

中村 文則

1977年、愛知県生まれ。福島大学卒業。2002年「銃」で新潮新人賞を受賞しデビュー。04年『遮光』で野間文芸新人賞、05年「土の中の子供」で芥川賞、10年『掏摸』で大江健三郎賞を受賞。『掏摸』の英訳版が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで2012年のベスト10小説に、『悪と仮面のルール』の英訳版が同紙の2013年ベストミステリーの10作品に選出される。また2014年、ノワール小説の分野に貢献した作家に贈られるアメリカの文学賞「デイビッド・グーディス賞」を日本人として初めて受賞。

作家

平野 啓一郎

1975年愛知県生。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数多くの作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は小説『葬送』、『滴り落ちる時計達の波紋』、『決壊』、『ドーン』、『かたちだけの愛』、エッセイ集『モノローグ』、対談集『ディアローグ』などがある。近著は、新書『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、長篇小説『空白を満たしなさい』。