著作権を無視して漫画を掲載する「海賊版サイト」に、ネットユーザーがアクセスできなくなる「サイトブロッキング」が実施されることになりそうだ。
政府がインターネット事業者(プロバイダー)に要請する方向で調整に入ったと、毎日新聞が4月6日に報じた。
特定のサイトへの接続遮断は、電気通信事業法や日本国憲法が定める「通信の秘密」に抵触するが、政府は刑法37条の「緊急避難」を適用する構えだという。
法曹界の専門家からは歓迎する声もあるが、「新しい法律を作らないと無理だ」という指摘も出ている。
■4月中にもアクセス遮断要請か
サイトブロッキングが話題に上ったのは2月19日、菅義偉官房長官の発言だった。菅官房長官は「サイトブロッキングを含め、現在あらゆる方策の可能性を検討している」と語った。
毎日新聞によると、政府は4月中にも閣議で正式決定した上で、「3つの海賊版サイト」へのサイトブロッキングをプロバイダーに要請するという。
日本ではこれまで、児童ポルノサイトに限って、サイトブロッキングが「緊急避難」として認められているが、それ以外では例がない。
内閣府知的財産戦略推進事務局は、ハフポスト日本版の取材に対して「菅官房長官の発言通り、省庁を横断して、あらゆる方策の可能性を検討している」とした上で、プロバイダーに要請するかどうかについては「現時点では全く未定」と説明した。
■「あらゆるサイトがアクセス遮断される悪例」との指摘も
しかし、こうした政府の姿勢に対して法曹界からは賛否両論が出ている。
刑法のいう「緊急避難」とは、生命や財産に対する危険が迫っている場合に「やむを得ずにした行為」に対して、法的責任が免除されるというもの。これに該当するかどうかに、論争があるからだ。
知的財産権に詳しい福井健策弁護士は6日、Twitterで「私は緊急導入やむなしの意見です」とサイトブロッキングを歓迎する意見を表明した。「現場対策がほぼ手詰まりであることは、自ら経験して断言できる。このまま拡大が続けば、マンガ・アニメの現場への壊滅的な影響度は予想もつかない」と訴えた。
一方、憲法学や情報法を専門とする東京大学大学院の宍戸常寿(ししど・じょうじ)教授は、ハフポスト日本版の取材に対して「刑法の『緊急避難』を、海賊版サイトに適用するのは明らかに無理があります」と批判。次のように話した。
「児童ポルノ画像を掲載するサイトの場合は、被害者の日常生活に深刻な影響を与えるため、『緊急避難』の適用はやむを得ません。一方で、著作権を侵害する海賊版サイトは確かに問題ですが、『緊急避難』に該当するとは言えません。ブロッキングをするのなら、無理な法解釈をするのではなく、法律を制定すべきです。そうしないと今後、政府の意向で、あらゆるサイトがアクセス遮断される悪例をつくることになります」