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香港では「出前一丁」が国民食に!食堂メニューがめちゃくちゃおいしそう

香港では「出前一丁」が国民食に!食堂メニューがめちゃくちゃおいしそう

Update: 2018/04/05

こんにちは。ライターの田中ランです。きらめく摩天楼に憧れて、香港旅行をした時のこと。今朝は飲茶じゃなくて他のものが食べたいな~なんて思いながら歩いていると……なんとも見慣れた顔と遭遇しました。

えっ、これ、出前一丁じゃん!!!

どうしてこの店のメニューに?まさかパクリ?いやいや、香港の人がそんなことをするわけが……って、そもそも香港で出前一丁って有名なの?

混乱と興奮を抑えつつ、その場で急いでスマホで調べてみると、どうやら香港で出前一丁は食堂の定番メニューになっているらしい。しかも、日本ではお目にかかれないメニューが色々あるようだ。

実家がラーメン屋、無類の麺好きとしては見逃せません。食堂やスーパーに行って、香港オリジナルの出前一丁メニューと、その人気の理由を探ってみることにしました。

朝ごはんの定番、目玉焼き+スパムのせ出前一丁

まずは、先ほど通りがかったお店の出前一丁を頼んでみます。

こちらが「餐蛋麺」。どーんとボリュームのある目玉焼きとスパム二切れがのっています。店員さんによると、「朝ごはんの定番メニュー」とのこと。確かに、まわりのお客さんも、同じように食べています。

麺もスープも、日本の出前一丁に近い。あっさりしたスープが、中華に疲れた私の胃腸にやさしく染み渡ります。

目玉焼きをくずすとスープは濃厚な味わいに。黄身を麺に絡めつつ、スパムと一緒に食べるのがかなりイケます。香港の人たちは朝からこんな素敵な出前一丁のアレンジメニューを堪能しているんですね。

行列店の看板メニュー、焼きそば風出前一丁

次に、香港の友人がおすすめしてくれた行列レストラン「蘭芳園」に行ってみました。ここでもどうやら、オリジナルの出前一丁メニューを堪能できるとのこと。

平日の昼間にもかかわらず、この大行列。「蘭芳園」はイギリス時代から受け継がれるミルクティーとフレンチトーストが人気のお店なのだそうです。というわけで、並ぶ間にちゃっかりこちらも購入。めちゃくちゃおいしかったけれど、ここで満足してはいけません。

待つこと20分、ようやく店内に通されました。さて、ここで食べられる出前一丁メニューはこちら!

じゃん。これが目玉メニュー「心多多撈丁」。って、普段食べている出前一丁と全然違うんですけど!?これ、完全に焼きそばですね。

しかも、骨付き鶏肉、豚肉炒め、蒸し野菜、そして目玉焼きと、なかなかパンチのある男メシ。空腹のまま待ち続けたかいがありました。

ソースを絡ませて一口食べてみると……うん、おいしい!!麺は出前一丁ですが、甘辛い濃厚ソースがよく絡み、見事に「焼きそば風出前一丁」になっています。

日本の焼きそばに比べて、香港の焼きそば風出前一丁は、もちもちした麺の食感が新しい。このまま日本で商品化すればいいのに。

周りのお客さんもみんな焼きそば風出前一丁を食べています。並んでも食べたい人気メニューであることがよく分かりますね。

なんで香港で人気があるの?日清食品に聞いてみた

なんで香港で人気があるの?日清食品に聞いてみた
にこやかな笑顔で調理するオジサン。奥には大量の出前一丁。

2店舗行った結果、はっきり分かったことがあります。香港人、出前一丁好きすぎ!超おいしい創作料理にしちゃう上に、他のメニューを差し置いて出前一丁を食べている人ばかりです。

さて、日本生まれの出前一丁が、なんでこんなに香港で愛されているのでしょう。ここは直接、出前一丁の生みの親である日清食品さんに聞いてみるしかありません。

お話を聞いたのは、日清食品ホールディングス広報部の岡林さん。「香港で人気がある理由を教えて」という不躾な取材依頼にもかかわらず、とても快く出前一丁についてお答えいただきました!

――今日はありがとうございます!出前一丁が香港で人気があるとは知りませんでした。そもそも、いつごろ香港に上陸したのでしょう?

「1968年に日本で出前一丁が発売されたのとほぼ同時期に、日本から香港への輸出販売がスタートしました。」

――1968年……あれ?ってことは……。

「そう、出前一丁は今年で発売50周年のアニバーサリーイヤーなんです!」

――えええ!おめでとうございます!

販売当初からヒット!香港で出前一丁が受け入れられた理由

販売当初からヒット!香港で出前一丁が受け入れられた理由
香港のスーパーでは出前一丁が山積みで販売

「出前一丁の海外での販売は、香港が初めてでした。日本から輸出して販売していた出前一丁は、香港市場で受け入れられ販売が順調に伸びたため、1984年に香港日清を設立し、その翌年から現地生産、現地販売を開始しました」

――そんな長い歴史があったんですね。進出当時の反響はいかがでしたか?

「香港進出当時から人気を博しました。市場参入当時、マーケットをリードするのは永南食品(現在、日清食品傘下)の『公仔麺』のお湯かけ麺。そこで、後発の『出前一丁』は、で調理する煮る麺で、もちもちした食感と歯ごたえを訴求して対抗したところ、マーケットで高評価を得ることができました」

食にうるさい香港っ子も魅了するもちもち麺

――たしかに、香港の各店で食べた出前一丁はどれももちもちした食感が印象に残っています。細くてやわらかい食感の麺に慣れていた香港の人には衝撃的だったのでしょうね。

「麺だけではなく、出前一丁の『ごまラー油』も人気に一役買ったんです」

――「ごまラー油」って、調理後に振りかけるものですよね?

「はい。『ごまラー油』の風味の良さと高級感を訴えたところ、多くのお客様から良い評価をいただきました。そもそも、『ごまラー油』は、香港でも一般的に使われる調味料だったので、出前一丁はフレーバーとしても香港の人に受け入れられる素地がありました」

――なるほど、新食感のもちもち麺に、慣れ親しんだごまラー油味。これは人気がでないわけがないですね。

「さらに80年代以降、出前一丁がさらに人気を博すもうひとつの要因がありました」

――えっ、なんでしょう?

「香港の経済成長とともに、日本ブームが起きたことです。香港の人にとって、日本製品や文化など、日本ブランドに対して好感度や信頼感が高まりました」

――日本ブーム!同じく日本でも香港ブームが起きていた頃ですよね。ブームが後押ししてくれるのは心強そう。

「ただもちろん、それに便乗していただけではありません。90年代以降、香港独自商品の開発に力を入れてきました。現在、香港で展開する商品群は、オリジナルの『ごまラー油』など一部を除き、ほぼすべてが現地の味覚に合わせて開発した商品です」

――麺とごまラー油だけではなく、好みの味覚に合わせられたら最強!出前一丁の虜になる人が続出するのも無理ないですね……。

世界一のフレーバー数!香港の出前一丁人気ベスト3は?

――香港独自の商品開発に力を入れてこられたということは、日本にはない香港オリジナルの味もあるのでしょうか。

「はい。現在は、袋麺だけでも4シリーズ、16フレーバーを展開しています。色々な味を楽しめることも人気の秘訣です」

――16種類!?めちゃくちゃ多いですね。

≪伝統の味シリーズ≫

≪伝統の味シリーズ≫

麻油(ごまラー油味)、鶏蓉味(チキン味)、五香牛肉(ウーシャン牛肉味)、海鮮(シーフード味)、沙嗲(サテイ味)、紅焼牛肉(ベニヤキ牛肉味)

≪とんこつシリーズ≫

≪とんこつシリーズ≫

黒蒜油とんこつ(黒マーユとんこつ味)、九州とんこつ(とんこつ味)、東京醤油とんこつ(醤油とんこつ味)、北海道みそとんこつ(味噌とんこつ味)

≪スパイシーシリーズ≫

≪スパイシーシリーズ≫

辛辣XO醤海鮮(XO醤海鮮味)、辛辣麻油味(スパイシーマーユ味)、微辛カレー(ピリ辛カレー味)、火辣海鮮(スパイシーシーフード味)、極辛とんこつ(ピリ辛とんこつ味)

≪韓国風シリーズ≫

≪韓国風シリーズ≫

韓国風ピリ辛味

――すごいバリエーション!

「香港の出前一丁は、サイズ、フレーバーともに世界一の豊富なラインアップを誇っています」

――この中で一番人気があるフレーバーは何ですか?

「人気No.1は、日本でもおなじみの麻油(ごまラー油)味です。続いてNo.2は黒蒜油とんこつ、No.3は九州とんこつです」

――ごまラー油の人気は納得ですが、とんこつ味の人気は意外。香港の人もこってり濃厚なとんこつ味が好きなんですね~。

出前坊やが二次元イケメン化。香港での愛され方がハンパなかった

「ちなみに、出前一丁のキャラクターである出前坊やも香港ではチンチャイ君(清仔)と呼ばれ、多くの方に親しまれています」

――出前坊やといえば、「あ~らよっ♪出前一丁」のCMでおなじみのあの子ですよね。

「はい。香港でもテレビCMが放映されているんですよ。こちらをご覧ください」

――ええっ!なんですかこれ!?チンチャイ君、二次元イケメンになって、女子に壁ドンして出前一丁を……。整理しなければいけないことが多すぎて、全然商品が頭に入ってこないです……。

飲食店の出前一丁メニュー、日清社員も食べていた

――ところで、香港では家庭だけではなく定食屋さんでも出前一丁が定番メニューになっています。その理由は何にあると思いますか?

「繰り返しになりますが、出前一丁は香港人にとって国民食といえるほどの人気を誇っており、日常生活に欠かせない食品になっています。そこで、香港の飲食店では、出前一丁を使った料理を出すことは、ポジティブなイメージで捉えられているからだと考えています」

――目玉焼き+スパムのせ出前一丁、焼きそば風出前一丁など、日本人の発想をはるかに超えたメニューも魅力的です。

「バリエーションが豊富なのは、出前一丁の麺は、調理方法や味付けを変えてもおいしいからだと思います。香港駐在の社員や現地スタッフも、もちろん食べています!」

――なんと日清さん公式!ああ、日本で食べられないのが本当に残念すぎる……。

祝・50周年!香港の味を再現した出前一丁が発売スタート

「飲食店のメニューではないのですが、香港の味を日本でも食べられますよ」

――本当ですか!?

「今年1月に『出前一丁 桶麺 辛辣XO醤海鮮味』を発売開始しました。香港で販売している40種類以上の商品の中でも、特に人気の高い大盛りカップタイプの『辛辣XO醤海鮮味』を、日本で商品化したものです。出前一丁ならではのしなやかな中細ウエーブ麺に、貝柱などの魚介の旨みが広がるピリ辛で濃厚なXO醤海鮮味スープをあわせた一品です」

――うう、聞いているだけでよだれが……。

「日本でおなじみの出前一丁とはひと味違った香港テイストの出前一丁を、お楽しみいただけます」

――今後も香港の味を再現した出前一丁が発売される予定はありますか?

「最初にもお伝えしたとおり、出前一丁は今年で発売50周年になるアニバーサリーイヤーです。商品リニューアルや新製品の発売を続々進めております。今後、他の香港の商品が発売するかは未定ですが、ご注目ください」

――ありがとうございました。個人的に、香港人気No.2の「黒蒜油とんこつ」が気になるので、発売を期待しています!

味の改良を重ね、さまざまな味を多数展開し、さらにはユニークなテレビCMまで制作。出前一丁が香港で50年近くも愛されているのは、消費者のニーズをしっかり捉え、飽きさせない工夫を続けているからに違いありません。それは、ここ日本でも同じこと。50年間変わらぬおいしさに感謝しながら、今夜一杯、作ってみませんか?

最後に、スーパーで発見した出前一丁チップス。これも日本で販売されたらいいのにな~。

Written by:

田中ラン

田中ラン

東南アジアが拠点のライター。安いビールが生きがい。

※記事掲載時の情報です。

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