総務省の電波監理審議会(総務相の諮問機関)が6日、「条件付き」で楽天の携帯電話事業への参入を認めた。楽天の携帯事業は「第4の事業者」として注目された半面、当初から参入計画の甘さが指摘されており、資金確保など異例の条件付きとなった。楽天は条件を満たす作業を進めながら2019年10月のサービス開始を目指すが、船出は厳しいものとなりそうだ。
「楽天への電波割り当てを適当とする」。6日午後6時に終了した総務省の審議会は、楽天に対し13年ぶりとなる携帯電話事業への新規参入を認めた。だが審議の過程では、通信エリアの整備や技術者の育成などを巡り、計画の甘さを指摘する声が相次いだようだ。
今回、審議会は楽天に周波数を割り当てるにあたり、4つの条件を付けた。1つは円滑なサービス提供やネットワーク運用のために技術者を着実に確保する点。また財務の健全性に留意し必要な資金を確保するよう求めるなど、それほど困難でない条件もある。
だが審議会が最も重視したとみられるのは、「既存事業者のネットワークを利用する場合でも、自ら通信網の構築を図る原則に留意する」という項目だ。
楽天はサービス開始に際し、アンテナや基地局などを自社で整備できない地域について、NTTドコモの回線を共用する計画を立てている。この点について、審議会の吉田進会長は6日、「独自の通信ネットワークでやるのが原理原則だ」と指摘。携帯電話事業者としてサービスを提供する以上、自前の通信網を構築する必要があるとの認識を強調した。
楽天は当面の設備投資計画として25年までに最大で約6千億円を調達し、大半を投資にあてる計画を示す。屋内外の基地局に約3800億円を投じるほか、東京電力や中部電力などの鉄塔を活用することで効率的にアンテナを張り巡らす。ただ今後、自前の通信網整備へ向け投資が膨らむ可能性もある。
楽天は4つの条件を満たしながら19年10月のサービス開始を目指す。まずは9000万人の楽天会員を中心に新規契約者を拡大。通信サービスにネット通販やクレジットカードなど多様なサービスとの連携を深めることで、「楽天経済圏」を広げる計画だ。料金についても「みなさんの期待に応えたい」(三木谷浩史社長)としており、3社と比べ割安な料金でサービスを提供するとみられる。
今後、国内の携帯電話業界は楽天の参入により価格競争はさらに拍車がかかる可能性がある。だが消費者が携帯事業者に期待するのは料金の安さだけではない。2人に1人がスマートフォン(スマホ)を持ついま、携帯は生活に欠かせないインフラとなっており、品質の高い通信サービスを安定的に使えることは絶対条件だ。審議会が突きつけた課題にどう対応するか。楽天は薄氷の認可を経てサービス開始へ向けた準備を加速する。