北大文学部に次の二点を要求する共同署名 

北海道大学大学院文学研究科長・文学部長

古河講堂「旧標本庫」人骨問題調査特別委員会委員長様

 

一、民族差別を含んだ問題点の多い『石田鑑定報告』について、話し合いを充分行なうこと

一、残る二体の遺骨(「日本男子20才」「寄贈頭骨/出土地不明」)の調査と真相究明を行ない、イチャルパ(供養)を実施すること

 

 北大人骨問題の真相を究明する会(以下「真相を究明する会」)は、北大文学部標本庫に放置された六体の人骨(頭骨)が発覚(九五年七月)して以来、その真相究明と遺骨の返還、北大の責任の明確化を求めて、北大文学部とチャランケ(話し合い)をつづけてきました。その間、東学農民革命指導者の頭骨は九六年五月韓国に、ウィルタ民族の三遺骨はようやく〇三年八月サハリンに帰還を実現しました。

 残る二体の遺骨(「寄贈頭骨/出土地不明」「日本男子20才」)について、北大は何らの調査も行わないまま、「できるだけ早急に焼骨・埋葬」し、そのうえで「報告書の最終的書き換え」を「可能なかぎり早い時期」に公表したいとしています(〇五年十一月八日付、「真相を究明する会」への回答)。これは北大が今回の人骨問題の真相究明さえ放棄し、残る二体を「処分」して、早期決着をはかろうとしていることにほかなりません。

 北大文学部はこの間、石田肇(当時、札幌医科大学医学部解剖学助教授)の『古河講堂「旧標本庫」人頭蓋の鑑定』(以下、『石田鑑定報告」)と『中間報告』(以上、九六年四月)、『報告書㈵』(九七年七月)、『報告書㈼』(〇四年三月)を公表してきましたが、それらは真相究明からみて疑問点や民族的偏見につながる問題点が多くあり、北大の責任をまっとうしているとは到底言えません。従って北大文学部は「報告書の書き換え」を約束していますが、それがどのようなものになるか全く予断をゆるしません。

 とりわけ真相究明において、北大とその研究者のあり方が問われる重大な問題の一つに『石田鑑定報告』があります。「真相を究明する会」は、この間の北大文学部とのチャランケ(話し合い)の席上でも『石田鑑定報告』をたびたび問題としてとりあげ、また、さる十一月二日にもあらためて「批判点を提起し、議論したい」と申し入れました。ところが北大は、『石田鑑定報告』が「専門家による鑑定であるかぎり、その鑑定結果を全面的に信頼・尊重し、かつ鑑定結果を基に対策をとってまいりました」「あくまでも鑑定結果を前提に、その上で新たな調査結果を踏まえて書き換えを行うというのが当委員会〔人骨問題調査特別委員会〕の方針です」(十一月八日付、回答)として、『石田鑑定報告』を擁護、支持し、討論することさえ拒否してきました。

 『石田鑑定報告』には次のような問題点があります。

 『石田鑑定報告』は「寄贈頭骨/出土地不明」と「日本男子20才」の貼紙のある頭骨の双方について「死後経過時間は10年から20年、骨格標本を目的として作製されたのであれば、もっと短時間と考えられる。その後の保管時間は不明」と書いています。この二人の頭骨がいかなる経過や経路をたどって北大に持ち込まれたのか事実に即して明らかにせずに、「死後十年」以内の可能性もあるなどと述べることは、かかる頭骨が放置されていた北大文学部は刑事事件(刑法第190条等)の捜査の対象になりかねないということに論理的にはなります。こうした鑑定のやり口はこのうえない人権蹂躙(事件)です。ごく普通の人権感覚から考えれば、このような鑑定の経緯、結果に衝撃をうけ、その鑑定のあり方を問いただすのではないでしょうか。ところが北大はこのような鑑定結果にたいし何も問題とせず、それを「全面的に信頼・尊重」し、あまつさえ二人の遺骨について一切調査も究明もせず、「早急に焼骨・埋葬」(処分)しようとしているのです。このような北大教官らの鈍感きわまりない人権意識は、日常、「アイヌ納骨堂」の一千体近い頭骨をまえにして、平然としておれる人権感覚と同一です。

 ウィルタ民族三体の頭骨についても『石田鑑定報告』は、肉眼的、解剖学的観察や計測によって性別を独断的に特定したうえ、そのうちの一体を「ヨーロッパ人の特徴をもっている」とし、『報告書㈵』も「ウィルタ民族を含むモンゴロイドではなく、コーカソイドの頭骨である」と断定しました。しかし、生きた人間、すなわち歴史的社会的に運動し交流する諸民族をこのような「人種」的区別によって特徴づける「人類学」こそ、他民族を風貌で差別することを正当化する「理論」として猛威をふるってきたものです。

 また東学農民革命指導者の頭骨のもっとも重大視すべき「損壊」についても、『石田鑑定報告』は「人が関与したものではなく、切創、打撃痕などの損傷もない」と、その意味を抹消してしまいました。この頭骨の「損壊」については、虐待や拷問、虐殺の可能性も高く、社会的歴史的要因の調査・研究が不可欠です。にもかかわらず北大は「石田鑑定報告」のこのような「人類学的解剖学的」鑑定以外、何らの究明も行っていません。『石田鑑定報告』の民族差別と人権蹂躙を支持してきた北大の責任があるのではないでしようか。

 わたしたちは、こうした『石田鑑定報告』の問題点とこれを支持してきた北大文学部の姿勢を正さないまま二体の遺骨の「処分」を絶対にみとめることはできません。北大文学部はこの問題について真摯に話し合いを行うべきです。わたしたちは、『石田鑑定報告』を謝罪し、撤回すべきだと考えます。

 全国の仲間の皆さんの共同署名へのご協力を強く訴えます。      

 

2006110

 

(よびかけ)「北大人骨問題の真相を究明する会」

     同代       山本 一昭  小川 隆吉  林 炳澤  田中

       長   村田 燎

         この間北大文学部との話し合いに出席してきたアイヌ民族、日本人一同

(連 先)〒003-0021 札幌市白石区栄通10丁目5-1-301
              ピリカモシリ社 電話(FAX)011-375-971
 
              「北大人骨問題の真相を究明する会」事務局        

 

この共同署名の呼びかけに賛同される方は以下のところにfaxしてください。

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  「北大人骨問題の真相を究明する会」事務局宛
  FAX
011-375-971   

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