こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。生きて動いている姿を見たひとがいないのでUMAではないかと疑われていた加計学園の理事長が、ついにその姿をあらわしました。なんかヘンなコスプレみたいだったけど。
加計学園の獣医学部に受験者が殺到したことで、先日の会見で菅官房長官が、高いニーズがあったと、大学の開校に正当性があったことをわざとらしく強調してました。
大学のニーズというけど、だれのためのニーズなのですか? たとえば加計学園の薬学部は、薬剤師の国家試験合格率が全国の薬学部のなかで最低レベルです。上位の大学では卒業生の70パーセント以上が薬剤師の資格を得てますが、加計学園は30パーセント台だと、昨年、経済誌の薬剤師特集記事が報じてました。受験者の3割しか受からないのではなく、大半の学生が、国家試験を受験すらしてないのです。そのレベルまで学力が達してないってこと。
薬剤師を求める社会的ニーズに応えてないけど学費は医学部並み。そんな大学でもこどもを通わせたいと思う大金持ちの親、そのニーズに特化してるのが加計学園のビジネスモデルです。同じ経営母体がやる獣医学部も社会的ニーズに応えられるのか疑問です。その答えは6年後までわかりません。たしかいま獣医学部も6年制でしたよね? 今年入学した一期生の何割が獣医師国家試験に合格するか。6年後の答えあわせが楽しみです。
で、菅さんの話に戻りますが、受験生のニーズがあるのが存在意義というのなら、定員割れしてる地方の私立大学はニーズがないのだから潰すべきではないのですか。地元の高校生たちも行きたがらないのですよ。そんなニーズのない大学に国が補助金をつぎこみ続ける正当性はありません。
なのに自民党は、ニーズのない地方大学を延命させるために、東京の大学の定員を抑制するという愚策を実行することにしたのです。
私はアベノミクスを全否定も全肯定もしてません。規制緩和で経済成長を目指すことには基本的に賛成ですが、そういいながら、矛盾したことを平気でやるから信用してないだけです。
規制緩和ってのは、どうぞ好きにやってください、でも結果は保障しないよ、ってやりかたです。地方に大学を作りたいという声がたくさんあったから、規制緩和したんですよね。そしたら、これからますます少子化なのに大丈夫? ってだれもが心配するくらいにじゃんじゃん大学ができました。で、案の定、定員割れ。だったら、そういう学校には退場を迫るべきです。なのに自民党は、ニーズのある東京の大学を規制すれば、ニーズのない地方大学に学生が流れるはずだと、わけのわからん理論で延命措置を講じたので規制緩和どころか新たな既得権を温存することになってしまいました。
だったら自民党の代議士のみなさんが率先して、自分のお子さんを地方の私立大学に入学させたらどうですか。しませんよね。自分の子は東京の有名大学に行かせるくせに。
地方のオトナたちの考えもなんか歪んでます。地方で生まれた若者は、地元の大学を出て地元で就職し、地元の有力者のケツをなめて、地元の既得権の維持に一生を捧げろと強制するつもりですか。
私が地方の知事なら、こうやります。ニーズのない地方の私立大学には、一切便宜を図りません。撤退してもらってけっこう。で、優秀な若者には、返済不要の奨学金を与えて東京などの大学に行かせます。その代わり、卒業後は地元に戻り、たとえば最低5年間とか地元の企業か役所で働いてもらうことを条件とします。年季が明ければフリーエージェントなので県外への転職も自由です。野球選手の契約みたいな感じ。
これなら若者も東京の大学で学んだことを地元で活かせますし、地方は都会の新たな知見を獲得し、時代にあわせた改革ができます。ウィンウィンじゃないですか。
一度都会で暮らしてみないと、都会と地方、それぞれのいいところと悪いところが見えないんじゃないかと思います。都会にもあこがれとは違うキビシい現実がありますし、地方は地方で旧態依然たる悪習を断ち切れない現実があります。優秀な若者が地方から出て行くのを東京のせいばかりにするのは、まちがってますよ。
[ 2018/04/05 17:42 ]
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