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前文科事務次官・前川喜平さんが“夜間中学”で教える理由

野村昌二AERA

自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」で教える前川喜平さん。教育の本質に触れる経験をしたいと思い、「現場」に飛び込んだ。「これからは、存野の立場で協力していきたい」(撮影/写真部・小原雄輝)

自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」で教える前川喜平さん。教育の本質に触れる経験をしたいと思い、「現場」に飛び込んだ。「これからは、存野の立場で協力していきたい」(撮影/写真部・小原雄輝)

給食は日替わり。この日のメニューは、ツナとトマトのスパゲティをメインに副菜には大豆入り海藻サラダなど。30分間の給食時間はにぎやかだ(撮影/写真部・岸本絢)

給食は日替わり。この日のメニューは、ツナとトマトのスパゲティをメインに副菜には大豆入り海藻サラダなど。30分間の給食時間はにぎやかだ(撮影/写真部・岸本絢)

 全8クラスあり、「日本語学級」と「通常学級」が半分ずつ。生徒は原則3年間通い、授業料は無料。運動会や修学旅行もあり、給食も支給される。基本的には、昼間の公立中学と同じだ。

 最年少は、15歳の信川遥(のぶかわはるか)さん。中学3年だった昨年6月、クラスになじめず不登校になった。卒業証書は受け取ったが学力に不安があった。そんな時、中学の担任に「夜間学級」を勧められた。見学に訪れると、楽しそうな雰囲気と優しそうな教師たちの姿が目に入った。

 今年4月に入学。すぐ同じ年の友だちもできた。成績も上がり、1学期は英語の成績で「4」も取った。通い始めて半年。勉強も好きになり、体育は苦手だが学校に来るのが楽しみだと笑う。夢もできた。

「大学まで行って、ファッションデザイナーになりたいです」

 ただ、夜間中学の問題はまだ残る。文科省は「1都道府県1校以上」の目標を掲げたが、行政サイドの腰は重い。先の法律の成立を受け夜間中学の開校の準備を進めているのは埼玉県川口市、千葉県松戸市、札幌市くらいだ。

●教育を受ける権利に年齢制限はない

 九州大学教授で、福岡市で20年続く自主夜間学級「よみかき教室」の共同代表の木村政伸さん(教育学)は、行政はもっと敏感になるべきだと批判する。

「法律ができて前に進むかと思っていたが動きがない。行政の怠慢です」

 九州最大の都市である福岡市には、いまだ公立の夜間中学がない。小学校を卒業していない「未就学者」は、同市は1842人と全国20の政令指定都市のうち5番目に多い。その5市のうち、公立夜間中学がないのは札幌と福岡だけだ。

 9月9日、よみかき教室のメンバーを中心に構成された「福岡市に公立夜間中学校をつくる会」のメンバー約20人は、福岡市中央区の大濠公園入り口で「福岡市に公立夜間中を!」と道行く人に訴え、署名活動を行った。同20日、つくる会は集めた約5千人分の署名と請願書を福岡市議会に提出した。

 公立の夜間中学の必要性を、木村さんはこう説く。

「さまざまな事情で中学卒業の資格を取れなかった人が資格を取るためには、公立の夜間中学は必要。義務教育の保障は日本社会の問題。日本社会の責任として、人数の多少にかかわりなく、学びたい人がいればきちんと対応すべきです」

 夜間中学は義務教育の「最後の砦」だ。十分な教育が受けられなければ、進学や就職で不利を被り、将来の道が閉ざされ貧困に直面していく。

「義務教育を受ける権利が15歳で切れるということはありません。特に義務教育段階の普通教育は、人間が人間として人間社会で自立して生きていくために不可欠のもの。その普通教育が不十分なのであれば、その機会を与えなければいけない。人権に年齢制限はありません。16歳以上は人権がないなんてことはない。教育を受ける権利には年齢制限はない。私はこれを、声を大にして言いたい」

 前川さんの言葉である。(編集部・野村昌二)

AERA 2017年10月30日号


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