東野幸治が描く“ダイノジ大谷伝説”「人の話を無意識に盗んで、盗んだ相手に話してしまう不幸な男」
芸能週刊新潮 2018年3月29日号掲載
東野幸治が仲間たちの秘話をつづる連載「この素晴らしき世界」。今週のタイトルは「天下を取りたい男、ダイノジ大谷(2)」。今回は東野さんが、大谷さんとよく話すようになったときに飛び出した不幸な話のエピソードなどをお届けします。
***
速報たけし独立で「裏切り者」扱い… 軍団の告発に森社長が反論
速報順天堂医院が隠蔽していた「新生児取り違え」 被害者が苦悩を明かす
前回の続き、ダイノジ大谷君の話です。とにかく嫌われてしまった大谷君ですが、2006年ダイノジに大きな風が吹きました。相方の大地君がエアギターの大会で世界一になるという快挙を成し遂げたのです。大谷君の考えた「漫才」ではなくエアギターで再びテレビの世界に呼ばれました。
ところが様々なバラエティー番組にゲスト出演をしても、話をフラれるのは大地君だけ。心の中にはもう嫉妬しかなかったでしょう。「ネタを作ってるのは自分だ」、そう思っていたでしょう。心中察します。コンビあるあるでもありますが、コンビのうち1人だけ売れると、この「地獄」が大きな口を開けて待っている……。ましてやネタを考えていない方だけが売れるのは、考えている方からするともはや無間地獄です。
しかし、その地獄からは思いのほか早く抜け出せました。エアギター世界一ネタはあっという間に飽きられ、また前と同じ毎日に戻ったのです。でも大谷君にはすぐ次のチャンスがやってきます。大谷君のクラブDJイベントを番組にできないかと吉本が動き、テレビ東京で深夜番組になりました。「バカソウル」です。
クラブの箱を借りて芸人が様々な音楽をネタに笑いを取る。大谷君の夢が見事形になりました。番組発の人気芸人やユニットが出来て大いに盛り上がりました。……大谷君以外は。
蓋を開けてみたら番組の司会は別の芸人と人気アーティストがやり、大谷君はステージ横でアフロマンというキャラクターで出演を終えた芸人に感想を聞く役割だけだったのです。批判しているわけではありません。世の中そんなものです。やりたい仕事と回ってくる仕事は違いますから。ある時大谷君が私に教えてくれました。奥さんがその番組を観た感想は「あれ? パパがずっとやってきたイベントなのに? もっとパパが観たいな」だったそう。
その頃からです、私が大谷君に近づいたのは。聞く話聞く話がどれも面白くて。オセロの白がひっくり返って黒になるように、芸人の不幸な話は他では味わえない面白さに溢れています。
「大谷君のツイッターを以前フォローしていたが、全国のクラブイベントの告知と大量の自分への応援コメントのリツイートに嫌気がさしてフォローを外しました」「そのDJイベントは毎回大盛り上がりとつぶやいていたが、実際は大きなフロアに男の子6人が踊っているだけでした」「大谷君はみんなが踊れて盛り上がれる曲を現場で上手に繋ぐことが出来ないから事前に家でテープを作って、現場ではこっそりエアDJとしてやっている」「人が話していたカッコいい話を、盗む気なく無意識に盗んで話す。一度、盗んだ相手に自信満々でその話をしたことがある」「ラジオリスナーにボスと呼ばせてる。そのラジオは熱いメッセージてんこ盛りなので番組のメールアドレスは@netsu.」「イジるのはいいがイジられるのは大嫌い」「嫁がモー娘。オタクで、散々バカにしていたのにある日急に『モー娘。が熱い』と言い出す。ニワカの知識でモー娘。愛を語り、ニワカだとすぐにバレて炎上」「写真を撮る時にロック好きをアピールしたいのか口を尖らす」「ビック谷→大谷伸彦→大谷ノブヒコ→大谷ノブ彦と4度改名している。心が不安定です」「M-1グランプリの決勝で本番直前にネタを変更した。審査員を見た瞬間に、一か八かのネタではなく置きに行った営業ネタで50点を獲りに行った」「ラジオの番組名がダサすぎる。『ダイノジのキスで殺してくれないか』」
大谷君が熟成されてきて面白いなぁ〜。