ブラジルのルラ元大統領、収監へ 最高裁判断下す
ブラジル連邦最高裁判所は5日、収賄などの容疑で裁判中のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領の収監を認める判断を下した。
ルラ氏は今年1月、控訴審で禁錮12年1月の有罪判決を受けたが、収監を避けるため人身保護を申し立てていた。
ルラ氏は、疑惑は政治的な動機に基づいており、今年10月に予定される大統領選への出馬を阻止する目的があると主張している。
世論調査では、大統領候補としてルラ氏が最も高い支持率を得ている。
最高裁判事らは長時間にわたる審理の末、5日未明に6対5でルラ氏の収監を認める判断を出した。
BBCのケイティ・ワトソン記者によると、ルラ氏は、同氏を支援する金属労働者組合が開いたにぎやかなコンサートに参加し、最高裁の判断が出るのを待った。
現在72歳のルラ氏は、収監に向けた書類上の手続きが行われる短い間、自由の身でいられる見通し。
最高裁の判断を受け、ルラ氏が所属する労働者党は、「民主主義とブラジルにとって悲劇的な日」だと述べた。
ルラ氏は2003年~11年にブラジルの大統領を務めた。世論調査では最も人気があるが、支持と不支持で世論は大きく分かれている。
3日にはサンパウロでルラ氏の即時収監を求めるデモが開かれ、最大2万人が参加した。一方で、ルラ氏を支持する大規模デモも開かれた。
最高裁の判断
ブラジルの刑事裁判では最近まで、被告人は最終的な有罪確定まで収監されなかった。しかし最高裁は今回、控訴しても有罪となれば服役しなくてはならないという2016年の下級審判断を審理していた。
ルラ氏は今年1月の控訴審で敗訴している。控訴裁は一審の有罪判決を支持し、元大統領の刑期を9年から12年1カ月に引き上げた。
通称「洗車作戦」と呼ばれる汚職疑惑の追及で、ルラ氏以外にも複数の政党の政治家対して汚職の疑いがかけられている。
裁判所は、ルラ氏が国営石油会社ペトロブラスの入札で便宜を図った見返りとして、建設会社OASから海岸に面した370万レアル(約1億1800万円)相当のマンション一戸を受け取ったことが、収賄に当たると判断した。
ルラ氏とはどんな人物か
2003年1月から8年間にわたってブラジル大統領を務めたルラ氏は、冶金(やきん)工出身で、組合活動家だった。左翼政治家としてほぼ半世紀ぶりにブラジルの大統領に就任した。
ルラ氏の任期中、ブラジルは過去30年間で最も長期間にわたる経済成長を経験。ルラ政権は社会政策に多額の政府予算を割いた。
政府の政策によって、何千万もの人々が貧困を脱し、ルラ氏が大統領の任期の限度となっている2期目を終えたとき、支持率は過去最高に達していた。
「洗車作戦」とは?
ルラ氏が退任すると、ブラジルの検察は、建設大手各社がペトロブラスとの契約で過剰請求していた疑惑の捜査を開始した。
「洗車作戦」と名付けられた汚職捜査は、巨大な汚職のネットワークの存在を暴露し、幅広い政党出身の有力政治家たちに収賄疑惑が浮上した。
ルラ氏自身をめぐっても、建設会社OASが海岸に面したマンションを改装し、賄賂として提供したと指摘された。
ルラ氏の主張
ルラ氏は、有罪判決や服役に対する抵抗を、ブラジルで1985年まで続いた軍事政権との戦いになぞらえている。
2日の支持者集会では、「私は軍事独裁を受け入れなかったし、検察の独裁も受け入れない」と語った。
(英語記事 Brazil's Lula must start prison term, Supreme Court rules)