米国では先月、黎明期の自動運転車による死亡事故が相次いで発生した。
まず19日に、配車サービス業者「ウーバー」が試験運転中の自動運転車が、アリゾナ州の公道で、自転車を押しながら道路横断中の女性をはねて死亡させた。続いて23日には、電気自動車メーカー「テスラ」のモデルXが、自動運転中に高速道の中央分離帯コンクリートに激突し、男性ドライバーが死亡した。
これらの事故を受け、ウーバーはアリゾナ州をはじめ米国での自動運転テストを中止し、カリフォルニア州における自動運転ライセンスの更新を辞退した。が、その余波は同社以外にも及び、ここ数年、自動運転開発に注力してきたチップ・メーカー「Nvidia」の株価が急落、トヨタも米国での自動運転テストを中断した。
見ようによっては自動運転全体に対する信頼感が揺らぎかねないような事態だが、ここは現状をきちんと区別して考える必要がある。
既に多くのメディアが報じているように、同じ「自動運転」と言っても、開発元各社によって、その技術力には雲泥の相違がある。はっきり言えば、ウーバーやテスラは自動運転開発では後発の部類に属し、先頭を走るグーグル(公式には、その親会社アルファベット傘下のウェイモ)などから大きく引き離されている。
たとえば試験運転中に、(不測の事態などから)車に乗ったオペレーター(人間)が自動運転に介入して手動運転に切り替えざるを得なかった回数を見ると、グーグル自動運転の介入頻度は「5600マイル(9000キロメートル)に1回」であったのに対し、ウーバーのそれは「13マイル(21キロメートル)に1回」である。
つまり、優に2桁も違うのだから、ほとんど「比べ物にならない」と言ってもいいだろう。
これと同じことは、テスラについても言える。いや、恐らく、こちらの方が問題はより深刻だ。以下、少し古いデータだが、2016年1月に自動運転開発元の各社が米カリフォルニア州の規制当局に提出したテスト走行データ(過去1年間)である。
これを見ると、同州公道におけるテスラ自動運転のテスト走行距離は「ゼロ」である。ところが同社は既に、その前年の2015年秋には(高速道路限定ながらも)事実上の自動運転機能「オートパイロット」を実用化(商品化)している。