なお収集している情報は主に食品中化学物質に関するもので、食の安全にとって最も問題である微生物関連情報は扱っておりません。
2018-04-04
■[FDA]FDA、サルモネラのリスクのためクラトム製品の強制リコールを発令
Triangle Pharmanaturals社は、FDAに自主的リコールを再三促されたにもかかわらず、それを拒否
FDA orders mandatory recall for kratom products due to risk of salmonella
Triangle Pharmanaturals refused to cooperate with FDA despite repeated attempts to encourage voluntary recall
April 3, 2018
https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm603517.htm
米国食品医薬品局(FDA)は、2018年4月3日付けで、Triangle Pharmanaturals LLC社が製造、加工、包装ないしは保有する、粉末クラトムを含有する全ての食品に対し、強制リコールを発令したことを発表した。Triangle Pharmanaturals社はFDAが自主リコールを実施するよう要請したにも関わらず、それに従わなかったため、今回の措置が取られることとなった。米国民を汚染された食品から保護するためにFDAが強制リコールを発令したのは、今回が初めてのケースとなる。
FDAは、消費者に対し、強制リコールの対象製品を廃棄するよう呼び掛けている。Triangle Pharmanaturals社は、粉末クラトムを含む食品を、別の商品名で、カプセル入り粉末などの形状などでも製造、加工、包装、保有している可能性があり、注意を要する。
今回の措置は、製品が病原微生物に汚染されている可能性があり、そこから生じるリスクに対して取られたものであるが、FDAはクラトムを含むあらゆる製品について、その安全性に深刻な懸念を抱き続けている。
一般的にクラトムとして知られているのは、Mitragyna speciosaという名の植物で、この植物は、タイ、マレーシア、インドネシアおよびパプアニューギニアで天然に生息する。重要なことは、FDAが消費者に対し、クラトムやクラトムが含む向精神成分のミトラギニンや7-ヒドロキシミトラギニンを、どのような形状のものであってもどの製造者のものであっても避けるよう呼び掛けているということである。FDAは、クラトムの安全性を懸念する報告を既に受けており、それらにはクラトムの使用に関連した死亡例も含まれている。クラトムは、モルヒネが作用するのと同じ脳内オピオイド受容体に作用するという確固とした根拠が得られており、習慣性獲得、乱用、依存を起こすと考えられている。FDAはまた、クラトムが、FDAが認可した疼痛緩和薬の代替として、あるいはオピオイド作動薬の断薬症状の緩和のために使われることにも懸念を抱いている。クラトムもその成分も、いかなる使用目的についても安全性や有効性が証明されておらず、病気の処置に使われてはならない。
FDAは、今回のクラトム製品が関係した複数の州にまたがるサルモネラ感染症のアウトブレイク*1の調査において、Triangle Pharmanaturals社から汚染の可能性がある製品についての記録を調べることを拒否され、従業員とFDAが得た知見について議論することも拒否された。
FDA米国食品安全近代化法に基づき、FDAは、食品が不良化されていたりアレルゲン表示要件が満たされていない可能性を根拠を持って認めた場合、そのような食品の使用あるいは食品への暴露によりヒトや動物の健康に深刻な転帰ないしは死亡に至ると判断した場合、リコールを発令する権限を有している。
3月30日に、自発的リコールの要請を行ったが、Triangle Pharmanaturals社は、それに応じなかった。3月31日に、製品の流通を停止する命令を出し、非公式ヒアリングの要請を受ける提示を行ったが、同社は期限までに何ら反応を示さなかった。そのため、国民の安全のために強制リコールが発令された。FDAが強制リコール権限の行使の準備開始に至ったのは3度目であるが、当事者がFDAの自主的リコールを促す告知を受けた後それを行わない選択をしたため強制リコールの段階まで行ったのは、今回が初めてである。
複数の州にまたがるサルモネラ感染症のアウトブレイクには、様々な商品名のクラトム含有製品が関係していた。FDAは、引き続いての助言*2として、消費者にクラトムやクラトム含有製品に近づかず、所持しているものについてはすべて廃棄するよう呼び掛けている。Triangle Pharmanaturals社の製品に検出されたサルモネラの菌株は、目下のところ今回のアウトブレイクとは関連付けられていない。ただし、クラトム製品が関与した今回のアウトブレイクでは、入院に至った患者の割合が高くなっている。
＊1: https://www.fda.gov/Food/RecallsOutbreaksEmergencies/Outbreaks/ucm597265.htm
＊2: https://www.fda.gov/Food/RecallsOutbreaksEmergencies/Outbreaks/ucm597265.htm#consumers
■[CDC]普通でない抗生物質耐性の細菌が米国に拡がっている
Germs with Unusual Antibiotic Resistance Widespread in U.S.
Tuesday, April 3, 2018,
https://www.cdc.gov/media/releases/2018/p0403-antibiotic-resistant-germs.html
本日発表されたCDCのバイタルサイン報告書によると、CDCの抗生物質耐性ラボネットワークに協力している保健担当部署は、昨年220回以上「普通でない」抗生物質耐性遺伝子をもつ細菌を発見した。
記者会見議事録
Transcript for VitalSigns Teleconference: Antibiotic Resistant Germs
Tuesday, April 3, 2018
https://www.cdc.gov/media/releases/2018/t0403-antibiotic-resistant-germs.html
（メディアはこれをNightmare bacteriaと呼んでいる）
■[FTC]FTCはCogniPrin「記憶改善」サプリメントを購入した消費者に合計$355,000以上の返金小切手を送っている
FTC Sending Refund Checks Totaling More Than $355,000 to Consumers Who Bought CogniPrin ‘Memory Improvement’ Supplement
April 2, 2018
FTCは詐欺的宣伝で「記憶改善」サプリメントを購入した消費者に2116の返金小切手を郵送中である
■[論文]論文
- 喫煙者は非喫煙者より食生活が悪い
Smokers have worse diets than non-smokers
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/bc-shw032918.php
BMC Public Healthに発表された米国成人のデータを評価した結果。
- 中国における暖房や調理への固形燃料の使用は死亡リスクの増加と関連
Use of solid fuels for heating, cooking in China associated with increased risk of death
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/jn-uos032918.php
中国の地方での石炭、木材、炭の使用が死亡リスクの大きいことと関連し、ガス、電気、セントラルヒーティングへの変更あるいは換気によってリスクは減る。JAMA
- 研究は肉のタンパク質は不健康だが木の実や種子のタンパク質は心臓に良いという
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/llua-ssm040318.php
International Journal of Epidemiologyに発表されたカリフォルニアとフランスの研究者らによる81000人以上の参加者のデータを含む研究。タンパク質を主に動物から摂るか植物から摂るかのパターンが心血管系疾患死亡率と関連する
（脂質の影響とどう区別したのかわからない）
- 研究はパスタは体重を増やすことなく健康的な食生活の一環になれることを示唆
Study suggests pasta can be part of a healthy diet without packing on the pounds
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/smh-ssp040218.php
炭水化物は評判が悪く肥満の原因だと非難されている。しかし新しい研究はこの悪評はパスタにはあてはまらないかもしれないことを示唆する。BMJ Openに発表されたレビュー。
（何を一緒に食べるかにもよる、という話）
- あなたの資産を失うことはあなたを殺す可能性がある
Losing your nest egg can kill you
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/nu-lyn040218.php
中年以降に突然資産を失うことは死亡リスクの有意な高さに関連する。2年の間に総資産の75%以上を失うと、その後の20年に死亡する可能性が50%以上高くなる。JAMAに発表。
資産損失率は大不況時に急増するが、景気の状況にかかわらず資産を失うアメリカ人は一定数いて、20年の研究期間中25%以上が資産ショックを経験した。全く貯金がない低所得層では死亡率の増加は67%で、この研究で最も驚くべき知見は富を得てそれを失うことが一度も富んだことがないことと同じくらい悪影響があるということである。
- 長期カフェインはアルツハイマー病に関連する症状を悪化させる
Long-term caffeine worsens symptoms associated with Alzheimer's disease
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/uadb-lcw040318.php
Frontiers in Pharmacologyに発表されたマウスの実験。プレスリリースには投与量の記載無し
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2018.00079/full
カフェインは0.3 mg/mLで飲水投与、マウスで概ね1.5mg/d、ヒト換算で1日500mg程度（コーヒー5杯）相当、とのこと
- Geneva湖から集めたプラスチックに高濃度の化学物質が見つかった
High levels of hazardous chemicals found in plastics collected from Lake Geneva
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/f-hlo040318.php
欧州最大の湖のひとつであるGeneva湖周辺の浜辺から採集したプラスチックを化学分析したところカドミウム、鉛、水銀が検出された。現在禁止あるいは制限されている物質が多く検出されたことはこれらのプラスチックゴミが古いものであることを示す。Frontiers in Environmental Scienceに発表。
- 硫黄を含むアミノ酸を制限することが健康への新しい食事によるアプローチ法かも
Sulfur amino acid restriction could amount to new dietary approach to health
3-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/ps-saa040318.php
Annals of the New York Academy of Sciencesに発表された主に動物実験で観察されている文献のレビュー。硫黄アミノ酸にはメチオニンやシステインが含まれる。ラットの研究ではメチオニンの80％制限は平均寿命を42%、最長寿命を44%増やす。硫黄アミノ酸は成長に重要だが、完全に成長した動物での制限は重大な害はなさそうだ。
（メチオニンサプリを摂っている人には都合の悪い情報なので多分注目されない。Annals of the New York Academy of Sciencesはそれなりに格の高いレビュー誌）
- 部分あるいは全甲状腺摘出は長期骨粗鬆症リスクと関連するか：全国集団ベースの研究
Is Partial or Total Thyroidectomy Associated with Risk of Long-Term Osteoporosis: A Nationwide Population-Based Study
Chien-Ling Hung, et al., World Journal of Surgery
First Online: 14 March 2018
https://link.springer.com/article/10.1007/s00268-018-4573-2
台湾の後ろ向きコホート研究。患者1426人対照5704人で、甲状腺切除は長期骨粗鬆症リスク増加と関連した。特に若い、女性、合併症がある人でリスクが高い
■その他
- Marty Hinz医師とその「神経伝達物質関連疾患」の見解への懐疑的考察
A skeptical look at Marty Hinz, M.D. and his views of "neurotransmitter-related diseases."
Stephen Barrett, M.D.
Quackwatch, March 28, 2018
https://www.quackwatch.org/11Ind/hinz.html
アミノ酸サプリメントで脳の神経伝達物質のバランスをとって各種症状を改善すると宣伝してきたMartin Charles Hinz医師のビジネスについて。
- 最後の手段
The last resort.
Lindsay Gellman | Longreads | March 2018
https://longreads.com/2018/03/22/the-last-resort/
末期のがん患者に膨大な費用で代替療法を提供しているドイツの私立病院への批判。長い記事。
英国でのNHSの提供する緩和ケアが、諦めだと感じられてネットで検索してドイツに行った事例を紹介。その病院は贅沢なスパや個別医療などを宣伝していて、患者の相談メールに対してきっと治ると言う。しかし費用は12万ドル以上で保険はきかない。でも治るチャンスがあるならいくらでも払う価値はあると考え、資産を売りローンを組み寄付を募ってかき集めた。
英国と違ってドイツではこうした私立病院が存在できるほど規制が緩い。
（日本でもそうだけど）
- FDAがサルモネラのためクラトムのリコールを命令して力を使う
FDA flexes muscles, mandates recall of kratom for Salmonella
| April 4, 2018
これまでで初めて、FDAが企業にリコールを命令した。この有り難くない名誉を受け取ったのはTriangle Pharmanaturals LLCである。
Triangle PharmanaturalsはFDAからの問い合わせにも応じず、各種メディアからのコメント依頼にも応えない。FDAによるとFDAからの記録開示要請も拒否している。火曜日の夜の時点でフェイスブックのページもアクセス不能になっている。
FDAには2011年1月にオバマ大統領が食品安全近代化法に署名したときリコールを命令する力を得た。その後ペットのおやつについてのKasel AssociatesとOxyElite Proダイエタリーサプリメントについて、リコールを命令するか自主的にリコールするかを通知し、結果的にどちらも自主回収に合意した。しかしTriangle PharmanaturalsはFDAが3月30日に通知した自主的にリコールの機会に反応せず、3月31日の製品販売中止命令にも反応しなかった。
（サプリメント業者の悪質さを象徴する事例）
- 反GMOムーブメントは事実ではなくフィーリングに基づいている
The anti-GMO movement is based on feelings, not facts
Rachel Crick
多くの保健機関はGMOが安全だと明言しているが、反GMOムーブメントは拡大し続けている
GMOとは何で何故表示されているのか？
GMO表示のメリットは？
GMOは最優先課題ではない
- 石炭火力発電所は大気中水銀汚染を急増させた、研究が発見
Coal-fired power stations caused surge in airborne mercury pollution, study finds
Calla Wahlquist Tue 3 Apr 2018
Victoriaの Latrobe谷の石炭火力発電所由来大気中水銀汚染はたった12か月で37%増えた。Loy Yang Bだけで2016-2017年に831kg以上排出し、過去5年で123%増加した。褐炭を燃やす発電所は、ニューサウスウェールズのNewcastle近くのEraring発電所の640倍の大気中水銀汚染を生み出す。Eraringはオーストラリア最大の石炭発電所でLoy Yang Bの3倍のエネルギーを生み出し水銀汚染は2016-2017年で1.3kgである。
この二つの発電所の汚染の差は州毎の規制の失敗例である、とEnvironmental Justice AustraliaのJames Whelan博士は言う。
