◇岡山の写真家 1年通って
岡山市北区芳賀の写真家池田哲之さん(59)=写真=が、真庭市・吉念寺の醍醐桜(県天然記念物)と住民とのつながりや時の流れを1年かけてとらえた写真展が、同市落合垂水の落合総合センターで開かれている。片道65キロの道のりを3日に1回のペースで通って撮影。過疎高齢化が深刻な地域で、住民らは「桜とともに暮らしている様子を後世に残せる」としている。3月6日まで。(根本博行)
◇真庭 物語性ある40点展示
池田さんは同市久世出身で、15年ほど前から趣味で写真を始め、約10年前、「岡山の魅力を残しておきたい」と本格的に撮影を開始。「ストーリー性のある作品づくり」をモットーに一つのテーマに長期間取り組み、美咲町と久米南町の棚田、旭川や高梁川源流の四季の移ろいと人々の暮らしなどを、1~4年かけて撮り続けている。
吉念寺地区は、1950年頃には約25軒(約120人)あったが、現在は8軒(13人)まで減った。住民の半数が80歳を超えており、池田さんは2015年9月、「桜が集落を見守り、住民が桜から元気をもらっている様子は今しか撮れない」と撮影を始めた。
時には車内に泊まり込むなどして約120回通い、炎天下も雪の日も桜と人々の暮らしを追った。春木姓が多いため、何度も会ううちに住民を名前で呼ぶようになり、撮影枚数は1000を数えた。醍醐桜保存会の春木基男会長(62)によると、ここまで頻繁に通って撮影した写真家は記憶にないという。
写真展のタイトルは「千年桜とともに~醍醐桜と吉念寺集落~」。会場には、人物が写った作品を中心に40点を全紙サイズにして展示した。
墓掃除をして一息つく高齢の女性や寒中に畑で大根を抜くお年寄り、小さな社に1年の感謝を表す住民、小豆を干す腰の曲がった男性など、住民をメインにした構図に醍醐桜を絡め、桜と人々の関わりを描いた。醍醐桜だけを狙った作品もあり、満月に照らし出された神々しい姿などをとらえている。
春木会長は「みんなが醍醐桜を大事にしている様子をうまくとらえてくれている」と感謝。池田さんは「醍醐桜とともに大地に足を踏ん張って生きている人々を表現したかった。花見のシーズン以外の地区の様子や、傾斜地での暮らしを知ってもらうきっかけになれば」と話していた。
入場無料。午前8時半~午後5時。問い合わせは市落合振興局(0867・52・1111)。