進学先などが決まって新生活が始まる直前に、希望していた大学から「追加合格」の連絡を受けるケースが増えている。学生数が大幅に超過しないようにした国の規制強化を受け、各大学は合格者数を少なめにしたものの辞退が多く、欠員を避けようと追加合格を出しているためだ。土壇場で進路変更を迫られ、学生側は入学金など金銭面の負担が増している。
「従来の10倍以上。こんなに追加合格が出たのは初めて」。3月下旬だけでほぼ全ての学部学科で計数百人規模の追加合格を出した関西地方の中規模大学の入試担当者は驚く。受験生に1人ずつ電話で追加合格を伝えて入学の意向を確認しており、3月末は対応に忙殺された。
2、3月の入試では、一定の入学辞退者を想定して定員を超えた学生に合格を出したが、例年以上に辞退が多く、欠員を避けるため大量の追加合格を出す羽目になったという。担当者は「他大学で追加合格した人から辞退され、玉突きのようにうちも追加合格を出す。偏差値上位校より下位校が割を食う」と嘆く。
上智大は3月に600人以上の追加合格を出して学生数を確保した。入試担当者は「学生数の超過だけは避けたいので当初の入試の合格者は近年少なめにしている。辞退者数は他大学の動向も影響し、正確な予測は難しい」と首を振る。「学生に負担はかけたくないが、追加合格の時期が遅れている」と話す。
日本私立大学連盟によると、「多くの私大で近年、定員不足を補うために出す追加合格が増えている」という。入学金、授業料などの学費は私大の収入の7割を占める。1人学生が減ると年100万円前後の減収になる。できるだけ多く受け入れたいのが本音だ。
とはいえ、無尽蔵に学生を増やすわけにはいかない。文部科学省は定員を大幅に超えて入学させる大学が多いことを問題視し、教育の質を保つため近年規制を厳格化したからだ。
大規模大学の場合、10年前は入学定員の1.4倍以上だった補助金全額カットの基準は年々引き下げられ、18年度から1.1倍以上に。各大学は当初の合格者を減らし、足りない分を追加合格で補うケースが増えた。
希望する大学に行けても、学生にとって追加合格は負担になりがちだ。
「追加合格の連絡が来ました!」。ツイッターなどの交流サイト(SNS)上では3月下旬、こうした投稿が相次いだ。一方で、進学先と住む場所を決めて引っ越しする前日になって「第1志望の大学に追加合格した。どうしよう」などと戸惑うつぶやきもあった。
3月下旬に追加合格の連絡があっても、すでに別の大学への進学や浪人を決めた人もいる。学費を納めた後に別の大学に追加合格して入学を辞退した場合、授業料は返還されても入学金は返ってこないケースが多い。
文部科学省は各大学に「入試の合格発表は4月20日まで」と通知しており、新年度が始まっても定員割れを避けるために追加合格を認めている。ただ「4月以降に合格を通知するのは好ましくない」としており、20年度からは「3月31日まで」に前倒しする方針だ。