妖精<男の名前は岩瀬健。結婚式場に現れた哀れな男である。これまで何百という結婚式を見てきたが新婦に対してここまで後悔している男はまれである。そもそもこれほど悔いている人間というものは式に参加しないものだ。
幼なじみであるがゆえ彼女への思いをずっと伝えられなかったツケが皮肉にもこんな形で巡ってくるとは。しかも二人を祝福するスピーチまで任されてしまうとはつくづく哀れな男である。
男はスライド写真を見ながら過去をやり直したいと強く願った。見るに見かねたわたしは写真の時代に戻ることを許可した。「わたし」とは無論この教会に住む妖精である>
過去に戻ったはいいものの変わったことといえば写真の彼女の表情が少し和らいだ程度。期待はずれも甚だしい
健《同じ写真に2回飛ぶことは不可能…。ってことは違う写真ならまた行けるってこと?》
《これ何の写真だっけ?しかもあいつ何であんなに怒ってんだ?》
この男一体どうなってしまうことやら
礼こんなにずっと一緒にいるのにケンゾーは何も分かってないよ
《もう一度やり直したい。あのころに戻ってもう一度…。もう一度…》
「気づいた」とかじゃなくてホントに戻りたいなって思って。
なぜこの写真に戻りたいと思ったのか理由を聞かせてもらえるかな?実はよく覚えてないんです。
21世紀にそんなあいまいな答えが通用すると思ってんのか?
妖精バカ!バカはバカでもめげないバカは嫌いじゃない。
勘違いしてほしくないんだがこれは過去を巡る観光ツアーなんかじゃない。
でもちゃんと後悔しないようにやり直したいだけなんです。
妖精でも何であんな顔してるのかその理由はさっぱり分からない。いやまあ…。そうなんですけど。
その理由を知らなければまともに後悔することすらできないもんな。
俗説と違って運命はちょっとやそっとのことで変わるもんじゃない。
安易に「頑張る頑張る」って口にするヤツほど頑張らないってのが俺の統計で出てる。
そのデータ当てにならないことを僕が証明してみせます。
礼二人ともさっきから何やってんのよ?暗幕外してって頼んだでしょ。尚健が全然やんないの。
違う。鶴が全然やんないの。ケンゾー。違う。抜けない。
伊藤片づけをしろ片づけを。いつまでも学園祭気分でいたら終わらないぞ!
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バースだよランディバース。この下敷き今どこにしまってあるんだっけ?》
ほっ!ケンゾーってさこのおじさんの下敷き小学校のころからずーっと使ってるよね。
尚バースさまに向かってなんて口の利き方をしてんだ!?お前。
幹雄一応言っとくけどセリーグにもパリーグにもビートルズってチームはない。それぐらいは知ってます。
しかし年々バースを知らない子供たちが増えてると思うと切なくなってくるよ。
伝説のバース掛布岡田のバックスクリーン3連発んとき!
鶴てめえこの野郎!お前ら!休憩ばっかしてると終わんねえぞ!
どうせ何も考えてないかエッチなこと考えてたかどっちかしかないでしょ。
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商品券も接待もなしで投票してもらおうなんて甘いんだよ。
いやホントは鶴に投票しようと思ったんだけどエリがさ…。
鶴の票が上がるとミスコンの品格が落ちるからやめてくれって。
尚ふざけやがってこの野郎!幹雄ちっちゃいのはやめとけ。
《あっ。そうだ。俺礼と隣の席じゃん。完全に恋の波が来てるよこれは。
だって前に貸したCDすっごい傷だらけにされたんだもん。
エリあっ!わたしも浜崎あゆみのCD貸したのに松崎しげるのCD入ってたことあんだけど。
大丈夫。鶴には絶対貸さねえ。(尚)何でそういうこと言うの!?ねえ貸して!
あっそうだ。行くぞ。おい健。どこに?どこに?どこに?
コーヒー牛乳買えない。っていうかよくこんなんで生活できてたな。
健アンニョンハセヨ。ごめん。コーヒー牛乳買えなかった。
《待てよ。もしかしてこれか?礼があの写真で不機嫌なの》
礼こんなにずっと一緒にいるのにケンゾーは何も分かってないよ
《オーノー!礼が乳製品をこんなに愛してたなんて全然知らなかった。
重人このスタジアムではめんつゆがグローブであり割り箸がバットだ!
重人流れ落ちるボールから決して目をそらしてはいけない!
尚おい。お前まさかコーヒー牛乳飲まなきゃ死んじゃう病か?
お前もあったま悪いなぁおい!コーヒーと牛乳を買って混ぜればいいんだろうが!
幹雄お前があったま悪いな。買いに行ったほうが早いだろ。
おい。この中で100メートル13秒切ってるヤツ手挙げろ。
伊藤すごいなぁ。お前ら廊下のぞうきんがけやれ。はい次。看板の取り外し。これはいちばん力仕事だな。
バカだからしょうがないよ。(幹雄)あいつさたまに全く理解できないこと言いだすんだ。
幹雄夏の大会のときいきなり「俺未来から来てんだよ」とか言いだすしさ。
尚バッカだなぁ。逆転ホームラン打ってたに決まってんだろ!
今…。今…。えっ?「彼氏」って聞こえたんだけど。彼氏いるの知らなかったの?
わたし強い男に弱いからさ。あとルックスのいい男にもでしょ?
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エリ野球部引退して髪伸ばし始めたんだけどすっごい微妙なの。
フフッ。伸ばしたら格好いいかもってつきあい始めたのはエリでしょ?
そりゃそうなんだけどさ。何か昔のプロレスラーみたいな変な髪形してんだよ。
いい球が来るの待ってるだけだったら何にもしないまま青春終わっちゃうよ。
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うちは風呂に入った客にしか売らないことに決めてんだよ。
「エリーマイデブ」お前デブって何だ?お前デブっておい!
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コーヒー牛乳によって僕の人生が大きく変わろうとしてるんです。
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別にサボってたわけじゃねえよ。外に買いに行ってたんでしょ?
いくら口で言ったって買ってこれなきゃ全然意味ねえし。
気持ちだけもらっとくよ。うん。フフッ。ありがとう。
《今ありがとうって笑った?笑ったよな!?イエス!イエース!》
見てろよ絶対いってやるからな。よっしゃいくぞ。とう。とう!おーいったおら!
エリ何かさぁこういうことしてると学園祭もホントに終わっちゃうんだなぁって感じしない?
今は何か気の利いた青春のフレーズを言って盛り上がるとこだろ。
健<高校のころ時間だけは常にあり余っていてそれが無限に続く気がしていた>
礼と一緒にいる何げないこの日常がやがてかけがえのない思い出に変わってしまうなんて6年前には知るはずもなかった
先生!ケンゾーが学園祭のゴミをベランダから捨てました!
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《思い出が一瞬にしてよみがえってきた。そういえばこういうヤツらだったんだ》
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尚だってさ俺らの中でいちばん誕生日早いじゃん?だから何かいっつも得してる気がすんだよね。
エリでもさあそこまで無警戒だとこっちも「祝ったぁ」って気になるよねえ。ちょっと鈍すぎると思わない?
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《6年前の自分がもっと礼のことを考えてあげられてたらなぁと思う》
《隣にいた礼をもっともっと笑わせることができてたらなぁと思う》
《いつも言い合いばかりして決まってお互い不機嫌になっていた》
《これまでの不機嫌な顔を全部笑顔に変えられたらなぁと思う》
《思い出していた。あの日礼が不機嫌になった理由を》
っていうかさこんなドッキリなんてしてくれなくていいからプレゼントくれ
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《結局俺は何にも分かっていなかったのかもしれない》
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《そこにはランディバースが立っていた。6年前には気づくことができなかったランディバースのフィギュアが見つけられるのを待ちわびていたように立っていた》
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《たまらなく会いたくなった。礼にたまらなく会いたくなった》
エリじゃあわたしは何か食べようかなぁ。おなかすいたし。
幹雄あっ。ちょっとおなか痛い。おなか…おなか痛いよ。痛い痛い。ああー。
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あした朝いちで学校に行ったほうがいいかもしんない。
だって俺はね紙飛行機を飛ばしてめちゃめちゃ怒られたんだよ?
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伊藤しかしよりによってお前が教師を目指すとはなぁ。
何だ?この落書きは。もう。(男)あっ。僕やります。
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エリ早く。イチゴについちゃうよ。幹雄いくよいくよいくよ。
西尾今日は健が誕生日だから特別に写真撮ってやるよ。
エリそうだよ。だってあのケーキ注文したのわたしだもん。
幹雄何だ?あのフィギュア。尚バカお前。バースさまだよ。
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妖精人が結婚するってことは並大抵のことじゃないってことだ。
妖精少なくともバースと出会ったぐらいじゃ結婚なんてできやしない。
少なくともアイデアには及第点を与えられるものがあった。
妖精ただまあ読まれない告白ほど無意味なもんはないからなぁ。
読まれなかった告白は観光地の石碑に書いてある俳句みたいなもんだ。
新郎の多田さんが教育実習を終えて学校を去るとき別れがつらくて号泣した。こんなことになるとも知らずに
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