名前を変えるだけじゃダメ…。
盛り上がっているのかどうか、いまいち不明なところも多いスマートウォッチ。Apple Watch最大の対抗馬と目される、Android WearのOSを搭載したスマートウォッチには、大きな転機が訪れそうですよね。Googleは、このほどAndroid Wearという名前を捨て、新たに「Wear OS by Google」というネーミングでの再出発を宣言。
この新たなネーミングの最大の目的は、iPhoneユーザーに振り向いてもらうことにあるかもしれません。なんといっても、iOSにもAndroidにも両対応するWear OS by Googleは、Android Wearの時代から「万人のためのウェアラブル用OS」と、Googleから太鼓判を押されていましたからね。きっと、これからは生まれ変わった新OSを搭載するユニークなスマートウォッチの発表が続いて、僕らの期待にこたえてくれるはず!
僕が思うにWear OS by Googleは、Fossil、Movado、Louis Vuittonなどなど、ファッショナブルなスマートウォッチの投入を目指すメーカーに採用されていくことでしょう。しかしながら、Android Wearは、根本的に2つの問題点を抱えてきたと、米Gizmodoは指摘しています。これが解消されない限りは、いくらブランドだけ刷新しても、多くのユーザーから支持されるブレイクポイントはやってこないかもしれません。そういう寂しい展開にだけは、絶対なってほしくないですけれど。以下、米Gizmodoが指摘した内容をまとめました。
1. コンセプトが定かでない
実はAndroid Wearには、Apple Watchが登場するよりも前からの、4年におよぶ歴史があります。Android Wearが誕生した2014年当時、世界中の人々が、大きな期待で迎えてくれました。ラップトップからスマートフォンへ、モバイルコンピューティングが小型化の流れをたどったように、今度はスマートフォンからスマートウォッチへの流れをたどるぞ、と。
でも、実際にAndroid Wearを採用したスマートウォッチを手にした人たちは、その未熟な完成度にあきれさせられたというのが、正直な反応でしょうか。ほとんどアプリはそろわず、あまり開発者たちのサポートも得られませんでした。なによりもユーザーインターフェース(UI)が使いずらいのなんのって、次から次にカードをスワイプしては、なかなか目的の情報までたどりつけません。いくら丸型デザインのMoto 360などが発売されても、OSの出来栄えが悪いのまでは、なんともなりませんでしたよね。
バージョンアップを重ねることで、こうした初期の問題は解消にいたることだってあります。でも、Android Wearはバージョン2.0に達しても、優れたアプリがそろって盛り上がるところまではいきませんでした。確かにUIは改善され、母艦のスマートフォンがなくても、スマートウォッチ単体で使える機能はサポートされています。さらに最新のApple Watchのように、セルラー通信機能を内蔵したり、Googleアシスタントに話しかけて音声で操作できる環境も整いました。でも…?
これぞというアプリがそろわない以上は、いまAndroid Wearのスマートウォッチですることって、スマホへの通知をチェックし、万歩計として使えたり、心拍数を測定できたりという使い方くらいしか思いつきません。でもこれって、わざわざAndroid Wearを搭載しなくても、ただのフィットネストラッカーで十分に同じことができてしまうんですよね。しかも、Android Wearのスマートウォッチを買うよりずいぶんと安くでできてしまいます。
2. 専用チップがない
Apple Watchにはスマートウォッチ用にカスタマイズされたプロセッサが用意されています。また、Tizen OSを搭載したSamsung(サムスン)製のスマートウォッチのGearシリーズには、専用のExynosチップが用意されています。でもAndroid Wearには、搭載するスマートウォッチ向けの専用チップというものがありません。半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)がAndroid Wear向けにカスタマイズしたプロセッサーを用意してくれるなんて流れが期待されていたようですけど、当のQualcommにまったくその気がないようです。むしろ、今後も開発提供する意志はないなどと報じられたことまであります。
つまり、Android Wearに特化した適切なプロセッサは、これからも登場しない可能性が高いみたいです。しかしながら、スマートウォッチOSとチップの統合強化ができるかどうかは、今後のスマートウォッチの進化のカギを握っているともいわれていますよ。たとえば、心拍数や血液中の酸素量(SpO2)や塩分濃度、睡眠リズムなどなど、これまで以上にさまざまなヘルスケアデータを、より効率的に収集できるようになることでしょう。
なによりもバッテリー時間の向上だって、実現しやすくなります。Apple Watch向けに、わざわざ専用チップが用意されている最大の理由の1つに、なんとか充電せずに使い続けられる時間を延ばせないものか? その涙ぐましい努力があるともいわれていますものね。いまだにApple Watch Series 3でも、バッテリーの持ちは最大の課題とされています。とはいえ、毎晩毎晩、必ず充電しなければいけないフィットネストラッカーって、どれほど意義があるんでしょう? 1週間くらいは充電なんて気にせず使い続けられてこそ、スマートウォッチなのでは…?
こうした課題をクリアして、新しいWear OS by Googleが羽ばたいていってくれることを願うばかりです。Motorola、LG、ASUSなどのビッグメーカーはいつのまにかAndroid Wearを見限って、もう新モデルは久しくだしていません。代わりに、それほどテクノロジーにはこだわらず、ファッションブランドとしてスマートウォッチが作れたらいいってところばかりが、新モデルを出してくる展開だけは終わりを迎えてほしいものですね。
Apple Watchが、いまのような成功をおさめたのは、ひとえに独立した一製品として位置づけられていることにあるでしょう。いまやApple Watchはヘルスチェックの分野でも欠かすことができず、おかげさまで心臓発作から救われただなんて例も珍しくはありません。Samsungのスマートウォッチも、Apple Watchほどアプリはそろわないものの、販売チャンネルがしっかりしており、UIが洗練されています。きっと今後は、もっと発展を遂げていくことでしょう。
対するは、Wear OS by Googleとなるのですが…。テクノロジーよりはファッションを重視し、ほどほどにメッセージをチェックできればいいというスマートウォッチに、ほんの少し新たな文字盤デザインを充実させるだけで満足するみたいな流れにだけは、なってほしくないものですよね。明確なコンセプトが定まって、専用チップも用意され、なんとか2つの問題点を解決することで、ただ名称だけ新しくしましたという結末にはいたらないことを望みたいところです…。
Image: Ivan Garcia/Shutterstock.com
Reference: 9to5Mac
Sam Rutherford - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)