上杉隆(メディアアナリスト)
きょう、前国税庁長官の佐川宣寿(のぶひさ)氏の証人喚問が衆参両院で行われる。森友問題では2人目の証人となるが、果たして真相は明らかになるのだろうか。
国会での証人喚問は戦後だけで34案件行われている。「ロッキード事件」(1976年)のように延べ12人もの証人を国会に呼んだ事案もあれば、「椿事件」(1993年)のように証人を一人だけ国会に呼んで決着をつけた場合もある。
私たち「NOBORDER NEWS社」は、約1年以上前からこの問題を報じ、国会での真相究明を訴えていた。そのためには、安倍昭恵総理夫人を国会に呼べるかどうか、それが最重要のポイントであると指摘し続けてきた。
森友問題は次の三つより起因している。学園側、役所側、そして政治側。これらを把握しない限り、真相究明は困難である。裏を返せば、それぞれ三つのサイドから証言を取ることができれば、真相解明にぐっと近づくということだ。
学園側の森友学園については、籠池泰典(本名・籠池康博)氏がすでに証人喚問に呼ばれていることからも、現時点で追加すべき情報はほとんどないといえよう。
役所側はどうかというと、当時の近畿財務局、財務省理財局、財務官房長、財務事務次官のうち誰か、あるいは全員からの証言を得ることができれば、真相解明に向けて大きく前進するだろう。
関係者の死者を出している(近畿財務局の男性職員が自殺)ことからも、最大の被害者は財務省だ。約20年前の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」で崩壊の危機にひんした組織の記憶も消えていない。
そうした意味では、誰よりも真相解明を願っているのは批判の対象となっている佐川氏その人かもしれない。その佐川氏は今回、証人喚問に呼ばれている。
さて、政治側の証人だけが曖昧だ。森友学園の名誉校長を務め、官邸には自分自身の部屋を持ち、最高権力者の配偶者である安倍昭恵氏の証人喚問は本来ならば不可避であるはずだ。しかし、官邸はどうにか首相夫人の証人喚問だけは回避し続けてきた。
ときに「私人」を強調したり、「籠池逮捕」の間に時間稼ぎを行ったり、さらには解散総選挙を打ったりと、すべては首相夫人を表舞台に出さないための方策だともとれる。