森友文書改ざんに揺れる財務省だが、疑惑のウラで天下りは減るどころか増えていた。再就職の望みは薄く、老後に不安を抱えるサラリーマンを尻目に、高級官僚は悠々自適のセカンドキャリアを送る。
約5000万円――。森友文書改ざんにおける渦中の人物である佐川宣寿前国税庁長官が受け取る予定の退職金だ。
この金額を「安い」と思う国民はいないだろう。経団連が'17年に発表したデータによると、経団連会員企業283社の大卒退職金の平均額は2374万円。
佐川氏は、比較的高所得なサラリーマンの2倍以上の退職金を受け取ることになる。おまけに佐川氏は勤続36年の次官級ポスト。年2500万円以上の俸給をすでに手にしているわけだ。
佐川氏の今後の処遇は国会での追及と大阪地検の捜査次第だが、ふつう、階段を踏み外すことなくキャリア街道を突き進んだ官僚たちには、省庁を退職後「ボーナスステージ」が待っている。民主党政権時代に根絶されたはずの「天下り」だ。
'17年に明るみに出た、文部科学省の再就職あっせん問題で巻き起こった批判もなんのその、特に第二次安倍政権における天下りの復活は、全官庁を通じてすさまじいものがある。
民主党政権の'12年度に1349件だった再就職状況は、'16年度に1775件と3割強増えているのだ。
「それを象徴するのが、元財務事務次官の丹呉泰健氏が会長職を務めるJT(日本たばこ産業)のトップ人事です。日本専売公社時代からトップは大蔵官僚の指定席でしたが、民主党時代にそのイスは撤去されました。
ところが'18年3月に社長と副社長の一人が交代、それでいながら丹呉氏は留任となりました。これで丹呉氏が再び財務省OBにその会長職を禅譲すれば、恰好の天下り先復活、というわけです」(全国紙経済部デスク)
今回、'17年に内閣人事局が公表したデータをもとに、財務官僚の新たな天下り先を調査すると、京セラや日本テレビ、三井物産など、大企業への天下りが依然として相次いでいることがわかった(ページ末表参照)。
特に次官級の上位ポストでは、大手企業2~3社で顧問職や監査役、参事といった肩書で役員待遇を受けているケースも少なくない。
「名前の知れた企業なら、顧問職などの報酬は一社あたり年収1000万円以上。これに加えて、いわゆる『渡り』(天下り先を転籍するたびに得られる退職金)も入ってきますから、3社以上の役員級ポストがある場合は年収が5000万円に達する人もいる。セカンドキャリアとしてはとてつもない額です」(財務省関係者)