【4月4日 AFP】中年期に突如として重大な金銭的損失を被ると、その後20年以内に死亡するリスクが約50%上昇する恐れがあるとする研究論文が3日、発表された。この種のものとしては初の長期調査となる。

 米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された研究論文では、個人総資産の75%以上を2年間で失うことによる健康への影響について調査が行われた。

 今回の調査では、51歳以上の米国人の約4分の1が、その後の生涯で金銭的に大きな損失を被る事態に直面したという。

 論文の主執筆者で、米ノースウエスタン大学(Northwestern University)フェインバーグ医学部(Feinberg School of Medicine)のリンジー・プール(Lindsay Pool)研究助教(予防医学)は「老後の蓄えを失うことは、個人の長期的な健康に計り知れない影響を及ぼすことが、今回の研究で明らかになった」と話す。

 論文によると、老後の蓄えの損失は2007~2010年の大不況の間に急増した可能性がある一方、米国人がこの危機的状況に陥るケースは過去20年間に「景気の拡大にもかかわらず」比較的一定の割合で発生しているという。

 研究では、一度も資産を持ったことがない低所得層の同年齢群についても調査し、その後20年間の死亡リスクが、生涯にわたり着実に貯蓄を増やした人々に比べて67%高いことを明らかにした。

「最も予想外の発見は、資産を築いてそれを失うことが、一度も資産を持たないこととほぼ同程度の悪影響を余命に及ぼすことだった」と、プール研究助教は指摘した。

 死亡リスクが高くなる原因については、医療費の支払いが困難、多額のお金を失うことに起因する重大な精神的不安が及ぼす健康への影響などが考えられると、研究チームは指摘している。だが、本当の原因を解明するにはさらに研究を重ねる必要があるという。

 今回の研究は、米国立老化研究所(NIA)が実施し、8700人以上が参加した国家規模の長期調査「健康・退職調査(Health and Retirement Study)」のデータに基づいている。調査参加者の登録時の年齢は51~61歳だった。(c)AFP