花粉症 元を絶つ クシュン、グズグズ・・・ 恨めし杉、ヒノキ
2018年03月31日
写真説明:無花粉杉のポット苗を育てる山口さん(神奈川県秦野市で)
今年も大量のスギ花粉が飛散し、花粉症に悩まされている人は多いはず。4月はヒノキの花粉飛散も始まり、くしゃみが止まらない日が続きそうだ。そんな中、「花粉症を元から絶つ」対策が進む。神奈川県や富山県では無花粉の杉への植え替えが進み、花粉が少ないヒノキの植林も始まる。新たに木を植えるには、それまで生えていた木の伐採が必要。国民病ともいわれる花粉症をなくすには、国産木材の利用促進と林業振興が欠かせない。(猪塚麻紀子)
神奈川県では花粉が少ない杉を選抜し、2000年に苗木生産が始まった。04年には全ての苗を花粉が少ないものに転換。同年には県内で花粉を出さない杉が発見され、無花粉杉の研究が進み、10年から植栽が始まった。
同県秦野市の山口富治さん(86)は、苗木作り60年以上の生産者。現在、50アールで無花粉杉、花粉が少ない杉とヒノキを栽培する。出荷ピークは春で、年間約1万株を出荷する。
苗木は種から生産する。畑に種をまいて栽培する他、一部はポットに植え替えて管理し、2、3年生苗を出荷する。
1、2月に県職員らが生産者の畑へ出向き、一本一本の雄花から花粉の有無を顕微鏡で調べる。掘り取りや植え替えなども通常の苗より手が掛かる。それでも山口さんは「材木として質が良く、花粉のないきれいな山をつくりたい」と日々の管理に力を入れる。
無花粉杉の生産は、1992年に富山県で花粉が全く出ない杉が偶然発見されたことが契機となった。花粉がない杉は自然界に5000本に1本の割合にあるとされる。同県が無花粉になる遺伝様式を突き止め、種を大量生産する技術を開発した。
無花粉になるのは、1対の劣性遺伝子が要因。無花粉の木と花粉が少ない木を交配すると、半分は無花粉の個体が生まれる。このため、無花粉杉の出荷には選別作業が必要となる。
神奈川県では、無花粉のヒノキ生産にも取り組んでいる。少花粉ヒノキの出荷は始まっていたが、県自然環境保全センターの齋藤央嗣主任研究員らが2年がかりで県内の約4000本のヒノキを調査。12年に全国で初めて無花粉ヒノキを発見した。現在は、挿し木による増殖に取り組んでいる。
林野庁によると、無花粉・少花粉杉の生産は年々増えている。16年度の全国生産量は533万本で、杉苗木全体の25%に上る。ただ植林面積に換算すると、現存する杉の人工林の面積の0・1%に満たないのが現状だ。
植え替えを進めるには、苗木生産だけでなく木材の伐採が必要となる。それには国産材の利用促進が不可欠だが、近年の木材自給率はわずか30%台。同庁は「森林資源の循環利用を推進することは、花粉発生源対策の観点からも重要」としている。
同庁は、併せて花粉を発生させない広葉樹との混交林化や、杉の雄花だけに寄生して枯死させる菌類を活用した花粉飛散防止剤の実用化など、花粉発生源対策を掲げる。
日本気象協会によるとスギ花粉のピークは各地で異なるが、東京では4月上旬まで。4月からは各地でヒノキ花粉が飛び始める。花粉の飛散は晴れて風の強い日や、雨上がりで気温が高い日に多くなる。外出から帰ったら花粉を払うなどの対策が効果的だという。
「無」「少」苗続々と
神奈川県では花粉が少ない杉を選抜し、2000年に苗木生産が始まった。04年には全ての苗を花粉が少ないものに転換。同年には県内で花粉を出さない杉が発見され、無花粉杉の研究が進み、10年から植栽が始まった。
同県秦野市の山口富治さん(86)は、苗木作り60年以上の生産者。現在、50アールで無花粉杉、花粉が少ない杉とヒノキを栽培する。出荷ピークは春で、年間約1万株を出荷する。
苗木は種から生産する。畑に種をまいて栽培する他、一部はポットに植え替えて管理し、2、3年生苗を出荷する。
1、2月に県職員らが生産者の畑へ出向き、一本一本の雄花から花粉の有無を顕微鏡で調べる。掘り取りや植え替えなども通常の苗より手が掛かる。それでも山口さんは「材木として質が良く、花粉のないきれいな山をつくりたい」と日々の管理に力を入れる。
無花粉杉の生産は、1992年に富山県で花粉が全く出ない杉が偶然発見されたことが契機となった。花粉がない杉は自然界に5000本に1本の割合にあるとされる。同県が無花粉になる遺伝様式を突き止め、種を大量生産する技術を開発した。
無花粉になるのは、1対の劣性遺伝子が要因。無花粉の木と花粉が少ない木を交配すると、半分は無花粉の個体が生まれる。このため、無花粉杉の出荷には選別作業が必要となる。
神奈川県では、無花粉のヒノキ生産にも取り組んでいる。少花粉ヒノキの出荷は始まっていたが、県自然環境保全センターの齋藤央嗣主任研究員らが2年がかりで県内の約4000本のヒノキを調査。12年に全国で初めて無花粉ヒノキを発見した。現在は、挿し木による増殖に取り組んでいる。
改植へ国産材利用
林野庁によると、無花粉・少花粉杉の生産は年々増えている。16年度の全国生産量は533万本で、杉苗木全体の25%に上る。ただ植林面積に換算すると、現存する杉の人工林の面積の0・1%に満たないのが現状だ。
植え替えを進めるには、苗木生産だけでなく木材の伐採が必要となる。それには国産材の利用促進が不可欠だが、近年の木材自給率はわずか30%台。同庁は「森林資源の循環利用を推進することは、花粉発生源対策の観点からも重要」としている。
同庁は、併せて花粉を発生させない広葉樹との混交林化や、杉の雄花だけに寄生して枯死させる菌類を活用した花粉飛散防止剤の実用化など、花粉発生源対策を掲げる。
日本気象協会によるとスギ花粉のピークは各地で異なるが、東京では4月上旬まで。4月からは各地でヒノキ花粉が飛び始める。花粉の飛散は晴れて風の強い日や、雨上がりで気温が高い日に多くなる。外出から帰ったら花粉を払うなどの対策が効果的だという。
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[現場は今 生産調整見直し 1] 米価下落 “抜け駆け”が心配 一番の安全網は適正生産
米の生産調整の見直し元年となる2018年。多くの地域で需要に応じた生産を続ける取り組みが進む一方で、農家には過剰作付けで米価が下がるのではないかとの不安も強い。産地では、業務用米の拡大や他品目への転換の動きも加速する。作付けを控えた現場の動きを追う。
「米価が下落すれば結局、自分たちの首を絞める。これまでと変わらず需給調整に臨む」。福岡県糸島市で水稲16ヘクタールを栽培する高田和浩さん(57)は、こう言い切る。
同県水田農業推進協議会(水田協)は2017年産から、現場の意向を踏まえた作付け計画を早めに練る主体的な需給調整の仕組みを整えた。国が生産数量目標の配分から手を引いた後も、需給の混乱を招かないためだ。事務局のJA福岡中央会は、研修会などで「生産調整の廃止ではない」とし、「需要に応じた生産で米価の安定を図ろう」と呼び掛けてきた。
県水田協と各地域との意見交換の場では「他県の影響で米価が下落したらどうなるのか」などと、他産地の抜け駆けに懸念を示す声が噴出した。高田さんも「今後もしどこかが増産に踏み切れば、着実に需給調整した地域も、あおりを免れない」とこぼす。
需給安定に向けて、高田さんが「大前提」とするのが、飼料用米など転作作物に助成する「水田活用の直接支払交付金」の確保。主食用米の需要が減る中、農水省はその分をカバーする十分な額を用意し続けられるのか──。財務当局が削減の意向を示すだけに、懸念は強い。
現場の不安に対し、国が安全網と位置付ける収入保険。だが、米農家には野菜農家に比べメリットが少なく、JAや農家は「加入申請はほとんどないだろう」とみる。掛け捨て部分があることなどが理由だ。高田さんは「結局、一番の安全網は米価の安定だ」と強調する。
地元のJA糸島は「米価が乱高下し米で食えないとなれば、放棄地が増える懸念もある。確実な需給調整を後押しする手立てが必要ではないか」(営農部)と訴える。
水田が耕地面積の98%を占める福井県のJAテラル越前。同県では県農業再生協議会が示した地域別の目安を基に、地域再生協が集落を通じて生産者ごとの目安を提示。昨年までと同様のやり方で、需給調整を徹底する。
JAは「米価に影響があってはならない。生産調整に協力してほしい」と呼び掛ける。しかし、2月の営農座談会では、参加者から「生産調整をしない地域があれば、協力しても無駄」との声も上がった。危機感を持った管内二つの地域再生協は、資料などで生産調整を続ける意義を強調するようにした。
それでも生産者の不安は根強い。大野市で主食用米を約70ヘクタール生産する農事組合法人、大野市総合農場の前田幸一農場長は、19年産以降の米価下落を懸念する。ただでさえ18年産は米の直接支払い交付金(10アール7500円)の廃止で、500万円以上の減収となる。交付金の廃止により、減収となるのは他の産地も同様。その減収分を主食用米の増産で取り戻そうとする農家が多くなることで、仮に米の価格が下がれば「大規模ほど影響は大きい。だからこそ(目安を)守らなくてはいけない」と強調する。
2018年04月01日
生かせ「若者力」 向かい合って扉開こう
日本農業新聞創刊90周年を記念した「若者力」キャンペーンが終了した。1年にわたり、農業や農村に価値を見いだして生きる20、30代の若者を追った。併せて、若者を引きつけ、育てられる農村になるにはどうすればいいかを模索した。キャンペーンを通じて、若者が農を目指す“うねり”がはっきり見えた。農と村の未来の扉は、若者の声を受け止めて初めて開く。
リーマン・ショックによる経済不況や、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生などを経て、価値観の転換が若者の中で起こっている。
都市から農村に移住した女性の言葉が忘れられない。「都市は、与えられ消費するだけの生活。だが、農村では、自ら生活をつくり、生きる力を実感できる。この充実感はお金では買えない」。若者を動かす価値の一つのかたちである。
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農村への移住を後押しする「ふるさと回帰支援センター」は、移住相談が年々増え続け、2017年は年間3万件を突破。この3年で倍増した。その半数が30代以下だ。農水省の調査によると、44歳以下の新規就農者数は、過去最高水準を維持し、それも農外からの就農が多くなっている。
一方で、農業・農村の現実は厳しさを増す。基幹的農業従事者は一貫して減り続け、2000年比で4割減の150万人となった。その7割を65歳以上が占める。少子高齢化が都市より先行する農村で、若い担い手の確保は農業と地域コミュニティーを守る喫緊の課題である。
本紙のキャンペーンに共鳴し、全国200の自治体が賛同する「農村文明創生日本塾」は1月、「我がムラ若者力発揮宣言」を採択した。若者の声を生かした政策立案、研究を進め、若者力を生かす地域づくりを進める。新たな試みの今後の展開と成果を注視したい。
キャンペーン第7部では、若者を受け入れるための現場からの提言を連載した。「新しい価値観を認める」「話し合いを積み重ねる」「諦めず、失敗を糧に」「地域の本気を伝える」。地域の姿勢とやる気が出発点だ。こんな声も挙がった。「若者たちの多様で新しい感性にアンテナを張って、キャッチしなければ、JAは組織として生き残れない」。JAこそ若者と向かい合わなければならない。
各産業で、労働力不足が深刻だ。農業も例外ではない。だが、待っていても若者はやってこない。若者の田園回帰志向の高まりはチャンスである。若者力をいかに地域力に変換するか。そこに農業と農村の将来がかかっている。
2018年03月31日
18年度産地交付金 年度当初9割配分 産地に配慮引き上げ
農水省は転作作物への助成で、都道府県が使い道を決められる「産地交付金」について、2018年度の配分方法を決めた。都道府県に配分する予算枠のうち、年度当初は9割を配分し、残り1割は飼料用米など戦略作物の動向を踏まえた上で秋に配分する。17年度までは年度当初の配分割合は8割だったが、農家が経営を見通せるようにするため、配分割合を引き上げてほしいとの産地の声に配慮した。
2018年04月04日
首相来月訪米 中旬に首脳会談 FTA交渉圧力高まる 通商戦略正念場
安倍晋三首相は4月中旬に訪米し、米国のトランプ大統領との首脳会談に臨む。経済では、米国の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限も議題になる見通し。米国は輸入制限の適用除外をちらつかせて通商交渉を優位に進める戦略で、韓国との自由貿易協定(FTA)交渉で譲歩を引き出した。除外を求める日本に、FTAの交渉入りを求める可能性が否定できず、対米通商戦略の正念場となる。
首相とトランプ氏の直接会談は6回目。対北朝鮮政策を巡る連携を確認したい考えだ。米国の鉄鋼、アルミニウムの輸入制限では、日本を対象から除外するよう求める方向だ。
トランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限をかざして各国に譲歩を迫っている。韓国とのFTAの再交渉合意は、その「第1弾」で、除外と引き換えに大幅な譲歩を引き出した。
韓国は、鉄鋼で対米輸出数量を自主的に減らすことで合意。ピックアップトラックの関税撤廃時期の延長や、米国の安全基準のまま韓国で販売できる台数の倍増など、自動車で大きく譲歩した。
韓国政府は、農産物の一層の市場開放などを阻止したとするが、識者は「再交渉期間中に事前対価を払った」との指摘もある。例えば、米国で鳥インフルエンザが発生時に、輸入禁止する地域を限定。従来は米全土からの輸入を禁止していた。
米国側は輸入制限を「安全保障上の脅威」への措置として発動。日本は同盟国にもかかわらず対象から外れ、政府内からは「なぜ外れたのか分からない」との声が漏れる。トランプ氏は対日貿易赤字などを問題視しており、首脳会談を通じ除外をてこに対日圧力を一層強めるとみられる。
日本政府は米国とのFTAに否定的。ただ、米国政権内からは「日本に対し、適切な時期にFTA交渉をしたいとの要望を伝えている」(ライトハイザー通商代表)などの意見が相次いでいる。
2018年03月29日
[達人列伝 44] 木頭ゆず 徳島県那賀町・岡田宏さん 林業での知識を応用 毎年50本改植 GI銘柄維持
四国で初めて地理的表示(GI)保護制度で認証を受けた徳島県那賀町の「木頭ゆず」。岡田宏さん(59)の出荷量はJAアグリあなん木頭果樹研究会の青果出荷の2割を占める。毎年改植を進める他、樹高を高く保ち1樹当たりの収量を増やすなど「岡田さんにしかできない」(JA指導員)工夫を凝らす。出荷量を確保することで、ブランド力を維持し、産地を後世につなぐ。
岡田さんの園地には3メートルを超えるユズの木が並ぶ。同地域の他園地の樹高が約2メートル。あえて細長い樹形で上に伸びるように心掛けている。
剪定(せんてい)であまり手を入れず、徒長枝を切って、木の中の枯れ枝を落とすだけ。枝を多く残し、着果量を増やすと収量が約4割増えるからだ。玉を肥大させると傷果になるリスクが上がるため摘果もあまりしない。京都の市場が求める13玉の割合が高くなるなど、有利販売にもつながる。
香り高さと外観の良さが特徴。岡田さんは「田舎の懐かしい香りにほっとするんだろう」と、「木頭ゆず」にほれ込む。大学を卒業後、地元の林業に就いたが、材木の価格が落ち込み始め生計が立てられないと就農を決意。林業で使っていた重機を乗りこなし、山を切り開いて栽培面積を2ヘクタールに増やした。
品質の高さと省力化を両立する秘訣(ひけつ)は、毎年40~50本の改植だ。園地の9割を改植し、樹齢の平均は15年ほど。「若い木の方が、病害の発生が少なく、蛍光色の黄色でつるっとした木頭ならではのユズに仕上がる」と四半世紀の経験に頼る。
改植で収量も安定する。ヒントは木材の収量を毎年安定させるために、伐採する樹齢を均等に植える林業の「法正林」という考え方から得た。特にユズは隔年結果が激しく、収量の確保が経営の鍵を握る。合理的な栽培管理が、GIに選ばれた産地のブランドを支える。JAの担当者は「足りない等階級や量目があれば、まず相談する」と産地の大黒柱に信頼を寄せる。
「先輩が築いてきたブランドは輸出で世界に羽ばたいているが、作り手がいなくなっては意味がない」と後継者不足に表情を曇らせる。だからこそ、品質と収量を両立できる自身の経営方法に可能性を感じている。「ブランドを維持してもうかる経営モデルを提示すれば、いつかは若い担い手が戻ってくる」と強調する。(丸草慶人)
経営メモ
「木頭ゆず」を2ヘクタールで栽培し、年間約30トンを出荷する。労働力は自身と妻、母の3人。林業も行う。
私のこだわり
「自身が作業しやすい園地環境をつくって、効率を良くする。品質と収穫量を維持する秘訣だ」
2018年04月02日
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冷凍、冷蔵の同時輸送可能 小ロット対応 コンテナ開発 香港へ試験輸出 福岡県など研究チーム
一つのコンテナで二つの温度帯が設定できる青果物輸出用のコンテナが開発され、今年度から国産農産物を香港へ輸出する試験が始まる。中央で二つに仕切り、2部屋の温度差を最大20度まで広げて設定できる。冷凍品と冷蔵品を同時に送ることも可能だ。輸送適温が違う品目を同時に送れるので、温度障害が出にくくなる。コンテナの大きさに合わせた鮮度保持用のプラズマ発生装置も開発して搭載した。高品質な国産品を小ロットの混載で輸出する道を開く。
2018年04月03日
16年市町村別農業産出額 愛知県田原市トップ 米価回復が追い風 農水省
農水省は、市町村別の2016年農業産出額(推計値)をまとめた。愛知県田原市が3年連続でトップを守り、上位10市町は前年と大きく変わらなかった。業務・加工需要の高まりと価格上昇などから、野菜の産出額が前年を上回る市町村が目立った。米も転作による需要の引き締まりで価格が回復し、順位を上げる産地もあった。
1位の田原市は、前年比32億円増の853億円。その品目別内訳をみると、野菜が43億円増の300億円と大きく伸ばし、花きの311億円に迫った。2位以降は、茨城県鉾田市が780億円(60億円増)、宮崎県都城市が754億円(34億円増)と続いた。
今回のまとめでは、野菜主体の産地が好調だったのが特徴。愛知県豊橋市や千葉県香取市など、野菜の生産が盛んな産地がそろって順位を上げた。同省は「加工・業務用野菜のニーズが高まるなど、需要が堅調だったこともあるのではないか」(経営・構造統計課)とみる。
米価の回復を追い風に、米主体の産地も好調ぶりが目立った。新潟市が前回と同じ4位を維持。宮城県登米市は前回26位から25位に、山形県鶴岡市が32位から26位に順位を上げた。いずれも産出額は前年を上回った。
畜産主体の産地は、宮崎県都城市が3位、北海道別海町が5位と前年の順位を維持した。豚はと畜頭数が増えて価格が落ち着いた。一方で、肉用牛は飼養頭数の減少に加え、需要が引き続き堅調だったこともあり、価格が高騰した。
市町村別の産出額は、同省が昨年公表した16年の都道府県別農業産出額から推計。全国1719市町村を対象にした。
2018年04月02日
果樹盗難 感知、警告 山梨・JAこま野と富士通がシステム 市内全域に導入
JAこま野と富士通、富士通アイ・ネットワークは、4月から果樹盗難抑止システムの運用を始める。JAが管轄する南アルプス市内全域で導入。ここまで広範囲の導入は全国初の試みだ。果樹園への不審者の侵入を感知し、サイレンなどで警告することで果樹の盗難被害を減らす狙い。電源は太陽光発電を利用により、低コストで稼働できる。
JAの依頼で富士通などが3年前から開発に取り組んできた。遠赤外線センサーで直径30メートルの範囲を360度監視、侵入者を感知すると威嚇音と赤色灯で警告し、園主にはメールで通知する。小動物などによる誤作動を防ぐため、水平方向と下方向に向けた二つの遠赤外線センサーを組み合わせて対応する。
JAは30台を用意し、希望する農家に月額のリース契約で貸し出す予定。農家は盗難の危険がある収穫期だけ契約できるため、費用負担の軽減につながる。
JAの小池通義組合長は「多くの農家に利用してもらい、防犯センサーがあるという情報が広まることで、盗難防止につなげたい」と期待を込める。JAは組合員向けの説明会を開き、順次農家へのリースを開始する。
園地での使用を考えて電源はソーラーパネルで発電、消費電力の少ない無線方式を導入。太陽光がなくても4日間は稼働できる。設置や移動が簡単なため、収穫時期に合わせて、園地を移動させて使うこともできる。オプションで気温や湿度を計るセンサーの取り付けも可能で、さまざまなデータ管理ができる。
28日には、JA本所で「果樹盗難抑止サービス導入に関する協定」の調印式を開いた。
2018年03月31日
花粉症 元を絶つ クシュン、グズグズ・・・ 恨めし杉、ヒノキ
今年も大量のスギ花粉が飛散し、花粉症に悩まされている人は多いはず。4月はヒノキの花粉飛散も始まり、くしゃみが止まらない日が続きそうだ。そんな中、「花粉症を元から絶つ」対策が進む。神奈川県や富山県では無花粉の杉への植え替えが進み、花粉が少ないヒノキの植林も始まる。新たに木を植えるには、それまで生えていた木の伐採が必要。国民病ともいわれる花粉症をなくすには、国産木材の利用促進と林業振興が欠かせない。(猪塚麻紀子)
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神奈川県では花粉が少ない杉を選抜し、2000年に苗木生産が始まった。04年には全ての苗を花粉が少ないものに転換。同年には県内で花粉を出さない杉が発見され、無花粉杉の研究が進み、10年から植栽が始まった。
同県秦野市の山口富治さん(86)は、苗木作り60年以上の生産者。現在、50アールで無花粉杉、花粉が少ない杉とヒノキを栽培する。出荷ピークは春で、年間約1万株を出荷する。
苗木は種から生産する。畑に種をまいて栽培する他、一部はポットに植え替えて管理し、2、3年生苗を出荷する。
1、2月に県職員らが生産者の畑へ出向き、一本一本の雄花から花粉の有無を顕微鏡で調べる。掘り取りや植え替えなども通常の苗より手が掛かる。それでも山口さんは「材木として質が良く、花粉のないきれいな山をつくりたい」と日々の管理に力を入れる。
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無花粉になるのは、1対の劣性遺伝子が要因。無花粉の木と花粉が少ない木を交配すると、半分は無花粉の個体が生まれる。このため、無花粉杉の出荷には選別作業が必要となる。
神奈川県では、無花粉のヒノキ生産にも取り組んでいる。少花粉ヒノキの出荷は始まっていたが、県自然環境保全センターの齋藤央嗣主任研究員らが2年がかりで県内の約4000本のヒノキを調査。12年に全国で初めて無花粉ヒノキを発見した。現在は、挿し木による増殖に取り組んでいる。
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植え替えを進めるには、苗木生産だけでなく木材の伐採が必要となる。それには国産材の利用促進が不可欠だが、近年の木材自給率はわずか30%台。同庁は「森林資源の循環利用を推進することは、花粉発生源対策の観点からも重要」としている。
同庁は、併せて花粉を発生させない広葉樹との混交林化や、杉の雄花だけに寄生して枯死させる菌類を活用した花粉飛散防止剤の実用化など、花粉発生源対策を掲げる。
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2018年03月31日
2月野菜輸入 6年ぶり10万トン台 キャベツ3・5倍 業務向け急増
2月の生鮮野菜の輸入量が10万1511トンと、同月では過去10年間で最多だったことが、財務省が29日公表した貿易統計で分かった。輸入量が単月で10万トンを超すのは約6年ぶり。価格高騰が目立ったキャベツなど重量野菜を中心に、業務・加工業者が輸入物の仕入れを大幅に増やした。重量野菜は、収穫作業などが重労働となるため、高齢化による生産基盤の弱体化が進んでいることも影響した。輸入業者は「4月まで輸入量は前年を上回る」と指摘。一方で国産は全般的に安定した出回りが見込まれ、販売への影響が懸念される。
2018年03月30日
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米国側は輸入制限を「安全保障上の脅威」への措置として発動。日本は同盟国にもかかわらず対象から外れ、政府内からは「なぜ外れたのか分からない」との声が漏れる。トランプ氏は対日貿易赤字などを問題視しており、首脳会談を通じ除外をてこに対日圧力を一層強めるとみられる。
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2018年03月29日
福島県産流通実態 震災前水準戻らず 安全性不安に2割 農水省初調査
農水省は28日、福島県産農産物の流通実態について、2017年度に初めて行った調査結果を発表した。仲卸業者の3割が県産品の取り扱いを減らし、小売りでは販売価格が全体として震災前の価格水準まで回復していないことが分かった。消費者からは依然として「安全性に不安」との意見が2割近くあり、風評の払拭(ふっしょく)が容易に進まない実態が浮き彫りとなった。
消費者は、福島県産品について「安全性に不安がある」とした人が2割程度いた。一方で、価格が「他産地より高くても買う」「同等であれば買う」と優先的に選ぶ人が1、2割程度存在した。福島を応援しようと積極的に購入する人もいた。
流通業者は、米、牛肉を中心に取り扱いに慎重な姿勢が見られた。震災後に県産品を他県産で代替した小売業者から「県産品を積極的に扱う理由が見いだせない」との声があった。首都圏の仲卸139社への調査では、震災前と比べ「取り扱いを減らした」のが46社(33%)に上った。
県産品の卸売価格は震災を機に下落し、全国平均との価格差が震災前と比べて大きくなっている。米は全国平均より4・9%安く、震災前(1・6%安)と比べ拡大した。「外食などの業務用に需要が移行した」との声がある。
特産の桃は全国平均の23・3%安と、震災前(5・9%安)と比べ価格差が大幅に拡大。「贈答品として使いにくい」との声があり、高価格帯の販売が十分回復していない実態がうかがえた。
福島大学の小山良太教授は、東日本大震災時の原発事故により、流通業者が取引産地を福島産から他産地に切り替えたことを指摘する。「風評被害よりむしろ、取引先を失ったことが最大の損害だ。今後は、産地づくりやマーケティングといった根本的な対策をすることが不可欠」としている。
同省は今年度、米、青果物、畜産物、きのこ、水産物の20品目について、生産から流通、販売の実態を初めて調査した。生産、加工、流通、販売に関わる全国の事業者から聞き取り約300件、アンケート730件を取った他、全国の消費者からインターネット3000件、店頭321件の聞き取りを行った。
2018年03月29日
牛乳 不当廉売抑止へ 農水省が指針
農水省は28日、食品製造業者と小売業者での牛乳・乳製品の適正取引に向けた指針をまとめた。食品製造業では、豆腐・油揚げに次いで2例目となる。日持ちがしない牛乳などは、スーパーの特売対象になりやすい。小売業者らへの調査で製品特性が反映されずに値決めがされている実態が分かり、指針でその対応策を示した。問題がある場合は是正し、適正な取引を促していく。
同省はスーパーやドラッグストアなど計79社に調査し、指針を策定。問題があった15の具体的な取引事例を挙げ、対応策を示した。
「客寄せのための納品価格の不当な引き下げ」では、製品の品質や原価などを加味し、十分な協議の上で合理的な製品単価を設定するとした。「物流費などのコスト増加を反映しない価格決定」の場合は、経費動向などを踏まえた明確な算出根拠に基づいて価格を協議するとした。
同省は特に、商品の発注側である小売業者への法令順守を促す。不正な取引は「最終製品の高付加価値化や競争力にも悪影響を及ぼす恐れがある」と是正を呼び掛ける姿勢だ。
2018年03月29日
米粉 流通量3万トン台に ノングルテン 追い風 18年度
農水省は28日、2018年度の国産の米粉用米の流通量の見通しが、17年度の見通しから8000トン増の3万1000トンになると示した。これまでの流通量の実績は13年度の2万5000トンが最高で、見通し通りになれば初の3万トン台となる。小麦アレルギーの原因物質を含まない「ノングルテン」食品の人気が高まるなど、需要が拡大傾向にあることを踏まえ、流通量も増えるとみる。
2018年03月29日
形も色も大きさも・・・
東京都台東区のJR上野駅構内の土産物店、上野ランドが今月売り出した抹茶味の麩(ふ)菓子「パンダのうんこ」が人気だ。
上野動物園で昨年6月に生まれたジャイアントパンダ「シャンシャン」にちなんだ独自商品。青森県弘前市にある老舗の麩メーカー、松尾に製造を依頼した。見た目を子どものパンダのふんに近づけ、大きさは5、6センチの一口サイズとし、京都産の抹茶をまぶした。
1袋80グラム入り594円で今月16日に売り出すと、用意した約300袋が3日間で完売。26日にも約1000袋を追加した。店長の加藤誠大さん(34)は「一度に何袋も買う人もいる。新たな定番商品になってほしい」と期待する。
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2018年03月28日