東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

学校の制服 「らしさ」を押しつけず

 学生服のデザインや選択から男女差をなくす試みが始まっている。制服が「女らしさ」「男らしさ」を押しつけていないか。性的少数者への配慮も求められる中で考えたい。

 今春開校した千葉県柏市立「柏の葉中学」の制服が話題になった。「性別に関係なく選べる」からだ。上着はブレザーでみな同じ。スラックスかスカート、リボンかネクタイ、それぞれの組み合わせを自由に選べる。

 開校前に学校が保護者と子どもを交え、制服は必要か、必要ないかという点から議論した。性同一性障害など性的少数者への配慮も必要だとの意見が出て、性別を問わないスタイルに決まった。

 大手学生服メーカーによると、以前から女子用にスラックスも選択肢としている学校はあるが、防寒や防犯を目的にした例が多い。柏の葉中のように男女差のない「ジェンダーフリー」を前面に出した例は珍しいという。

 背景にあるのは、性的少数者への関心の高まりだ。文部科学省が二〇一五年に全国教職員向けに出した通知では、LGBTなど性的マイノリティーの生徒に対し、学校側が支援するよう求めている。制服はその典型だろう。

 東京都の世田谷区教育委員会は区立中学校の標準服(制服)を性別に関係なく選べるスタイルにできないか、検討を始めた。

 考えてみたい。家ではズボンでもスカートでも自由に選べる。なのに制服はなぜ男子の詰め襟、女子のスカートに代表される、性別で決められたスタイルがあるのか。学生服は「学生らしさ」を演出する。その上に、「男らしさ」「女らしさ」までも、生徒に強いることにならないか。

 学校には、いろんな条件や背景を持つ生徒が通う。スカートや詰め襟の着用に抵抗を感じる生徒はいる。国際化も進み外国人の生徒もいる。宗教上の理由で肌を露出したくない生徒もいる。だれにとっても一日の多くの時間を過ごす場が、苦痛にならないよう配慮しなくてはならない。

 統一感など利点も強調される制服だが、そもそも必要なのかという疑問の声もある。「着たい人だけ着る、着たい時だけ着る」と生徒に任せている学校もある。

 制服をイタリアの高級ブランドのデザインに変更して物議をかもした公立小があった。柏の葉中のように、だれもが制服を自由に選べる、そういう自由さこそが、校風になってもいいのではないか。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】