直近の朝鮮半島情勢に関して、韓国・北朝鮮の思惑を推量するのに踏まえておくべき内容

朝鮮半島情勢に関する論評が色々出ていますが、素人の私から見てもあまりにも薄い内容が多いので、日本の論壇のレベルは大丈夫かと思っています。まあ、大丈夫ではないんですが。

韓国や北朝鮮がどういった解決を目指しているのか、それを全く把握せずに論評しても意味はありません。で、その目指すところについては別に秘密にされているわけでもなく、公表されているものが結構あります。

南北関係の発展と平和繁栄のための宣言(全文)

これは2007年の10月の南北首脳会談で出された南北共同宣言です。韓国側は盧武鉉大統領、北朝鮮側は金正日国防委員長の名義です。
これの第4項にはこうあります。

 4、南と北は、現休戦体制を終わらせ、恒久的な平和体制を構築すべきだとの認識をともにし、直接関連した3者または4者の首脳が韓半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。
 南と北は、韓半島の核問題を解決するため、6者会談の9・19共同声明と2・13の合意が順調に履行されるよう共同で努力することにした。

http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=4&newsid=8840

予定されている南北首脳会談、米朝首脳会談、直近の中朝首脳会談、そして中国が3月9日にアメリカに対して米中南北4カ国による平和協定の締結を提唱したこと*1などは、2007年南北共同宣言第4項前半に沿った内容だとわかります。

また、この2007年南北共同宣言では「6・15共同宣言の精神」が重視されています。これは、2000年の南北首脳会談における[https://thekoreanpolitics.com/archives/206:title=[全訳] 6.15南北共同宣言(2000年6月15日)]のことです。韓国側は金大中大統領、北朝鮮側は金正日国防委員長の名義です。
この2000年南北共同宣言の第2項にはこう書かれています。

2.南と北は国の統一のために、南側の連合体案と、北側の低い段階の連邦制案が互いに共通性があると認め、今後はこの方向から統一を指向していくことにした。

https://thekoreanpolitics.com/archives/206

南北統一の方向性ですね。現状、日本の論壇に現れる朝鮮半島統一は、どれも北朝鮮主体で韓国を吸収するかのようなデタラメがまかり通っており、北朝鮮の高麗連邦案と共通性があるとされた「南側の連合体案」については触れられることがほとんどありません*2
韓国政府が構想する朝鮮半島統一の方策について記事に書きましたが、韓国側による統一構想である「民族共同体統一方案(민족공동체통일방안)」について日本側で全く言及されないこと自体がかなり異常だと思いますね。しかも、現在のような緊張緩和の情勢下においてなお、それを無視し続ける神経は理解しがたいものがあります。

2007年南北共同宣言第4項の後半には核問題の解決方針が記載されています。
六者協議の9.19共同声明と2.13合意に言及されています。
9.19共同声明とは2005年の「第4回六者会合に関する共同声明(2005年9月19日)」を指し、非核化を進める上での重要な内容になっています。
2.13合意は2007年の「共同声明の実施のための初期段階の措置(平成19年2月13日)にある合意で、2005年の9.19共同声明を実施するための初期の措置について規程したものです。

9.19共同声明の第1項にはこうあります。

1.六者は、六者会合の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した。
 アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した。
 大韓民国は、その領域内において核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの約束を再確認した。
 1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。
 朝鮮民主主義人民共和国は、原子力の平和的利用の権利を有する旨発言した。他の参加者は、この発言を尊重する旨述べるとともに、適当な時期に、朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html

北朝鮮が「朝鮮半島の非核化」について言及する根拠になっており、同時にアメリカは朝鮮半島に核を持ち込まないこと、韓国は領域内に核兵器が存在しないことを約束する内容になっています。

「行動対行動」の原則、段階的措置

2005年の9.19共同声明ではこう書かれています。

5.六者は、「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していくために、調整された措置をとることに合意した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html

2007年の2.13合意ではこう書かれています。

I. 六者は、2005年9月19日の共同声明を実施するために各者が初期の段階においてとる措置について、真剣かつ生産的な協議を行った。六者は、平和的な方法によって朝鮮半島の早期の非核化を実現するという共通の目標及び意思を再確認するとともに、共同声明における約束を真剣に実施する旨改めて述べた。六者は、「行動対行動」の原則に従い、共同声明を段階的に実施していくために、調整された措置をとることで一致した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3ks.html

これに則るとするなら、北朝鮮側が一方的に核兵器を放棄し検証が完了するまで、国際社会が経済制裁を続けるというのは了承し得ないでしょうね。

ともあれ、少なくとも、2000年南北共同宣言、2005年9.19共同声明、2007年2.13合意、2007年南北共同宣言、そして北朝鮮の高麗連邦構想と韓国の民族共同体統一方案を踏まえれば、現状、韓国や北朝鮮が何を目指しているのかわかりやすくなりますし、個々の発言や行動についても理解しやすくなります。

中朝首脳会談に関して北朝鮮や中国の意図をあれこれ邪推した日本側の論壇の意見よりも、2007年南北共同宣言第4項に沿った行動として解釈する方がよほどしっくり来ますよね。「段階的措置」や「朝鮮半島の非核化」についても、これまでに何度か言及されてきたものであって、その流れで理解すべきでしょう。
少なくとも、それらを一切踏まえていない論考にはあまり価値はないと思いますね。




習氏、トランプ氏に新安保を提唱

米中南北の平和協定も
2018/4/1 02:01©一般社団法人共同通信社
 【ワシントン共同】中国の習近平国家主席が3月9日にトランプ米大統領と電話で北朝鮮情勢を協議した際、朝鮮戦争の主要当事国である米中と韓国、北朝鮮の4カ国による平和協定の締結を含む「新たな安全保障の枠組み」の構築を提唱していたことが31日、分かった。複数の米中外交筋が明らかにした。
 国連軍と北朝鮮、中国が1953年に締結した朝鮮戦争休戦協定の平和協定への移行を念頭に置いているとみられる。習氏は日本に言及しておらず、南北、米朝の首脳会談後の交渉を、4カ国を中心に進める考えを示唆した可能性がある。
 トランプ氏は明確な賛否を示さず、圧力維持を習氏に求めたもようだ。

https://this.kiji.is/352860349210477665

南北関係の発展と平和繁栄のための宣言(全文)

 大韓民国盧武鉉大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正日国防委員長間の合意に従い、盧武鉉大統領が2007年10月2日から4日まで、平壌を訪問した。
 訪問期間中、歴史的な対面と会談が行われた。
 対面と会談では、6・15共同宣言の精神を再確認し、南北関係の発展と韓半島の平和、民族共同の繁栄と統一を実現するのに伴う諸般の問題を虚心坦懐に協議した。
 双方は、わが民族同士が意思と力を合わせれば、民族繁栄の時代、自主統一の新時代を開いていくことができるという確信を表明しつつ、6・15共同宣言に基づき南北関係を拡大・発展させていくため、次のとおり宣言する。

 1、南と北は、6・15共同宣言をしっかりと守り、積極的に実現していく。
 南と北は、わが民族同士の精神に従い、統一問題を自主的に解決していき、民族の尊厳と利益を重視し、すべてをこれに向かうようにしていくことにした。
 南と北は、6・15共同宣言を変わることなく履行していくという意志を反映し、6月15日を記念する案を講究することにした。

 2、南と北は、思想と制度の違いを超え、南北関係を相互尊重と信頼関係へ確実に転換させていくことにした。
 南と北は、内部問題に干渉せず、南北関係の問題を和解と協力、統一に符合するよう解決していくことにした。
 南と北は、南北関係を統一志向的に発展させていくため、それぞれ法律的・制度的装置を整備していくことにした。
 南と北は、南北関係の拡大と発展のための問題を、民族の念願に即して解決するため、双方の議会など各分野の対話と接触を積極推進することにした。

 3、南と北は、軍事的敵対関係を終わらせ、韓半島での緊張緩和と平和を保障するため、緊密に協力していくことにした。
 南と北は、互いに敵視せず、軍事的緊張を緩和しながら、紛争問題を対話と協力を通じて解決することにした。
 南と北は、韓半島でのいかなる戦争にも反対し、不可侵義務を完全に順守することにした。
 南と北は、西海での偶発的衝突の防止のため、共同漁業水域を指定し、この水域を平和水域にするための方案と各種協力事業に対する軍事的保障措置問題など、軍事的な信頼構築措置を協議するため、南側の国防部長官と北側の人民武力部部長との会談を今年11月中に平壌で開催することにした。

 4、南と北は、現休戦体制を終わらせ、恒久的な平和体制を構築すべきだとの認識をともにし、直接関連した3者または4者の首脳が韓半島地域で会い、終戦を宣言する問題を推進するため協力していくことにした。
 南と北は、韓半島の核問題を解決するため、6者会談の9・19共同声明と2・13の合意が順調に履行されるよう共同で努力することにした。

 5、南と北は、民族経済の均衡的発展と共同の繁栄のために、経済協力事業を共利共栄と有無相通ずの原則をもとに積極活性化し、持続的に拡大、発展させることにした。
 南と北は、経済協力のための投資を奨励し、基盤施設の拡充と資源開発を積極推進し、民族内部の協力事業という特殊性に合うように、各種の優待条件と特恵を優先的に付与することにした。
 南と北は、海州地域と周辺海域を包括する「西海平和協力特別地帯」を設置し、共同漁業区域と平和水域の設定、経済特区の建設と海州湾の活用、民間船舶の海州直航路の通過、漢江河口の共同利用などを積極推進することにした。
 南と北は、開城工業団地の第1段階建設を早期に完工し、第2段階の開発に着手し、汶山~鳳東間の鉄道貨物輸送を開始し、通行・通信・通関問題をはじめとする諸般の制度的保障措置を速やかに完備していくことにした。
 南と北は、開城-新義州間の鉄道と開城-平壌間の高速道路を共同で利用するため、改修・補修問題を協議、推進することにした。
 南と北は、安辺と南浦に造船協力団地を建設し、農業、保健医療、環境保護など諸分野での協力事業を推進していくことにした。
 南と北は、南北経済協力事業の円滑な推進のため、現在の南北経済協力推進委員会を副総理級の南北経済協力共同委員会に格上げすることにした。

 6、南と北は、民族の悠久な歴史と優秀な文化を輝かせるため、歴史、言語、教育、科学技術、文化芸術、体育など、社会文化分野の交流と協力を発展させていくことにした。
 南と北は、白頭山観光を実施し、このため白頭山-ソウル間の直航路を開設することにした。
 南と北は、2008年北京五輪大会に南北の応援団が京義線列車を初めて利用して参加することにした。

 7、南と北は、人道主義協力事業を積極推進していくことにした。
 南と北は、離散家族と親族の再会を拡大し、ビデオレター交換事業を推進することにした。このため、金剛山面会所が完工しだい、双方の代表を常駐させ、離散家族と親族の再会を常時、進めることにした。
 南と北は、自然災害をはじめとする災難が発生した場合、同胞愛と人道主義、相互扶助の原則に従い、積極協力していくことにした。

 8、南と北は、国際舞台で民族の利益と、海外同胞の権利と利益のために協力を強化していくことにした。
 南と北は、この宣言の履行のため南北総理会談を開催することにし、第1回会談を今年11月中にソウルで行うことにした。
 南と北は、南北関係発展のため首脳らが随時会い、懸案問題を協議することにした。

2007年10月4日 平壌
大韓民国大統領
盧武鉉
朝鮮民主主義人民共和国国防委員長
金正日
(2007.10.10 民団新聞)

http://www.mindan.org/front/newsDetail.php?category=4&newsid=8840

[全訳] 6.15南北共同宣言(2000年6月15日)

6.15南北共同宣言
祖国の平和的統一を念願するすべての同胞の崇高な意志に従い、大韓民国金大中(キム・デジュン)大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正日キム・ジョンイル)国防委員長は、2000年6月13日から6月15日まで、平壌で歴史的に出会い、首脳会談を行った。
6.15南北共同宣言

南北首脳は分断の歴史上はじめて開かれた今回の出会いと会合がお互いの理解を増進させ、南北関係を発展させ平和統一を実現するのに重大な意義を持つものと評価し、次のように宣言する。
1.南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士、互いに力を合わせ自主的に解決していくことにする。
2.南と北は国の統一のために、南側の連合体案と、北側の低い段階の連邦制案が互いに共通性があると認め、今後はこの方向から統一を指向していくことにした。
3.南と北は、今年の8.15の頃に、離れ離れになった家族、親戚の訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、人道的問題を早急に解決していくことにした。
4.南と北は経済協力を通じ、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保健、環境など諸般の分野の協力と交流を活性化させ、互いの信頼を強めていくことにした。
5.南と北は以上のような合意事項を迅速に実践にうつすため、早い期日内に当局間の対話を開催することにした。
金大中大統領は金正日国防委員長がソウルを訪問するよう丁重に招請し、金正日国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問することにした。
2000年6月15日

大韓民国     朝鮮民主主義人民共和国
大統領      国防委員長
金大中      金正日

https://thekoreanpolitics.com/archives/206

第4回六者会合に関する共同声明

(仮訳)
2005年9月19日
於:北京
 第4回六者会合は、北京において、中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国、日本国、大韓民国ロシア連邦及びアメリカ合衆国の間で、2005年7月26日から8月7日まで及び9月13日から19日まで開催された。
 武大偉中華人民共和国外交部副部長、金桂冠朝鮮民主主義人民共和国外務副相、佐々江賢一郎日本国外務省アジア大洋州局長、宋旻淳大韓民国外交通商部次官補、アレクサンドル・アレクセーエフ・ロシア連邦外務次官及びクリストファー・ヒル・アメリカ合衆国東アジア太平洋問題担当国務次官補が、それぞれの代表団の団長として会合に参加した。
 武大偉外交部副部長が会合の議長を務めた。
 朝鮮半島及び北東アジア地域全体の平和と安定のため、六者は、相互尊重及び平等の精神の下、過去三回の会合における共通の理解に基づいて、朝鮮半島の非核化に関する真剣かつ実務的な協議を行い、この文脈において、以下のとおり意見の一致をみた。

1.六者は、六者会合の目標は、平和的な方法による、朝鮮半島の検証可能な非核化であることを一致して再確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した。
 アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した。
 大韓民国は、その領域内において核兵器が存在しないことを確認するとともに、1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に従って核兵器を受領せず、かつ、配備しないとの約束を再確認した。
 1992年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。
 朝鮮民主主義人民共和国は、原子力の平和的利用の権利を有する旨発言した。他の参加者は、この発言を尊重する旨述べるとともに、適当な時期に、朝鮮民主主義人民共和国への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した。

2.六者は、その関係において、国連憲章の目的及び原則並びに国際関係について認められた規範を遵守することを約束した。
 朝鮮民主主義人民共和国及びアメリカ合衆国は、相互の主権を尊重すること、平和的に共存すること、及び二国間関係に関するそれぞれの政策に従って国交を正常化するための措置をとることを約束した。
 朝鮮民主主義人民共和国及び日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることを約束した。

3.六者は、エネルギー、貿易及び投資の分野における経済面の協力を、二国間又は多数国間で推進することを約束した。
 中華人民共和国、日本国、大韓民国ロシア連邦及びアメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国に対するエネルギー支援の意向につき述べた。
 大韓民国は、朝鮮民主主義人民共和国に対する200万キロワットの電力供給に関する2005年7月12日の提案を再確認した。

4.六者は、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を約束した。
 直接の当事者は、適当な話合いの場で、朝鮮半島における恒久的な平和体制について協議する。
 六者は、北東アジア地域における安全保障面の協力を促進するための方策について探求していくことに合意した。

5.六者は、「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していくために、調整された措置をとることに合意した。

6.六者は、第五回六者会合を、北京において、2005年11月初旬の今後の協議を通じて決定される日に開催することに合意した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html

共同声明の実施のための初期段階の措置

(仮訳)
平成19年2月13日
 第五回六者会合第3セッションは、北京において、中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国、日本国、大韓民国ロシア連邦及びアメリカ合衆国の間で、2007年2月8日から13日まで開催された。
 武大偉中華人民共和国外交部副部長、金桂冠朝鮮民主主義人民共和国外務副相、佐々江賢一郎日本国外務省アジア大洋州局長、千英宇大韓民国外交通商部朝鮮半島平和交渉本部長、アレクサンドル・ロシュコフ・ロシア連邦外務次官及びクリストファー・ヒル・アメリカ合衆国東アジア太平洋問題担当国務次官補が、それぞれの代表団の団長として会合に参加した。
 武大偉外交部副部長が、会合の議長を務めた。

I. 六者は、2005年9月19日の共同声明を実施するために各者が初期の段階においてとる措置について、真剣かつ生産的な協議を行った。六者は、平和的な方法によって朝鮮半島の早期の非核化を実現するという共通の目標及び意思を再確認するとともに、共同声明における約束を真剣に実施する旨改めて述べた。六者は、「行動対行動」の原則に従い、共同声明を段階的に実施していくために、調整された措置をとることで一致した。

II. 六者は、初期の段階において、次の措置を並行してとることで一致した。

1.朝鮮民主主義人民共和国は、寧辺の核施設(再処理施設を含む。)について、それらを最終的に放棄することを目的として活動の停止及び封印を行うとともに、IAEA朝鮮民主主義人民共和国との間の合意に従いすべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。

2.朝鮮民主主義人民共和国は、共同声明に従って放棄されるところの、共同声明にいうすべての核計画(使用済燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議する。

3.朝鮮民主主義人民共和国アメリカ合衆国は、未解決の二者間の問題を解決し、完全な外交関係を目指すための二者間の協議を開始する。アメリカ合衆国は、朝鮮民主主義人民共和国テロ支援国家指定を解除する作業を開始するとともに、朝鮮民主主義人民共和国に対する対敵通商法の適用を終了する作業を進める。

4.朝鮮民主主義人民共和国と日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二者間の協議を開始する。

5.六者は、2005年9月19日の共同声明のセクション1及び3を想起し、朝鮮民主主義人民共和国に対する経済、エネルギー及び人道支援について協力することで一致した。この点に関し、六者は、初期の段階における朝鮮民主主義人民共和国に対する緊急エネルギー支援の提供について一致した。5万トンの重油に相当する緊急エネルギー支援の最初の輸送は、今後60日以内に開始される。
 六者は、上記の初期段階の措置が今後60日以内に実施されること及びこの目標に向かって調整された措置をとることで一致した。

III. 六者は、初期段階の措置を実施するため、及び、共同声明を完全に実施することを目的として、次の作業部会を設置することで一致した。

1.朝鮮半島の非核化
2.米朝国交正常化
3.日朝国交正常化
4.経済及びエネルギー協力
5.北東アジアの平和及び安全のメカニズム

 作業部会は、それぞれの分野における共同声明の実施のための具体的な計画を協議し、策定する。作業部会は、六者の首席代表者会合に対し、作業の進捗につき報告を行う。原則として、ある作業部会における作業の進捗は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない。五つの作業部会で策定された諸計画は、全体として、かつ、調整された方法で実施される。
 六者は、すべての作業部会が今後30日以内に会合を開催することで一致した。

IV. 初期段階の措置の段階及び次の段階(朝鮮民主主義人民共和国によるすべての核計画についての完全な申告の提出並びに黒鉛減速炉及び再処理工場を含むすべての既存の核施設の無能力化を含む。)の期間中、朝鮮民主主義人民共和国に対して、100万トンの重油に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援(5万トンの重油に相当する最初の輸送を含む。)が提供される。
 上記の支援の具体的な態様は、経済及びエネルギー協力のための作業部会における協議及び適切な評価を通じて決定される。

V. .初期段階の措置が実施された後、六者は、共同声明の実施を確認し、北東アジア地域における安全保障面での協力を促進するための方法及び手段を探究することを目的として、速やかに閣僚会議を開催する。

VI. .六者は、相互信頼を高めるために積極的な措置をとることを再確認するとともに、北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力を行う。直接の当事者は、適当な話合いの場で、朝鮮半島における恒久的な平和体制について協議する。

VII. .六者は、作業部会からの報告を聴取し、次の段階のための措置を協議するため、第六回六者会合を2007年3月19日に開催することで一致した。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3ks.html