マダガスカル:ペスト対策で保健省を支援――MSF、専門治療施設を設置
2017年10月20日掲載
ペストはペスト菌を持つダニにかまれることで感染する(腺ペスト)。感染が肺まで広がった場合(肺ペスト)は、せきやくしゃみで人から人へと感染する。現在は安価で手に入りやすい抗生物質が普及しているため、適切な治療によって100%の回復が見込める。
「早期治療で回復、予防的治療も可能」
流行の中心地域は東部のトアマシナ市(人口30万人)で、症例数261件が報告され、10人が亡くなっている。マダガスカルでは例年、保菌動物であるネズミが生息している高地地域では腺ペストの発生が報告されていた。一方、トアマシナには保菌動物がおらず、季節的なペスト症例もここ数年は確認されていなかった。
MSFは保健省職員をサポートし、ペストのトリアージ(※)と治療を行う専門施設を運営している。この施設は10月上旬に、MSFをはじめとする国際援助団体が市立病院の敷地外に設置した。また、患者の治療、感染者を特定・隔離するための手順の改善、救急搬送システムの支援、医療施設や地域内の衛生・除染対策などを支援している。
- ※ 重症度や緊急度などにより治療の優先順位を決めること
MSFで給排水・衛生の専門分野を担当しているルカ・フォンタナは「ペストは怖い病気というイメージがありますが、早期に適切な対応をすることで致死率を大幅に引き下げ、流行を終息させることができます。治療法が確立されていて、予防的治療も可能です」と話す。
ペストから回復も「家族の反応が……」/イノサントさん(33歳、医師)
体がひどくだるく、頭や胸が痛い日が5日間も続き、狭心症かと思っていました。ところが、10月5日に吐血したのです。肺ペストに関する研修を受けていたので、感染の疑いがあると思い、トアマシナの病院に検査に行きました。結果、感染が確認されました。注射を打たれ、即入院。家族はパニックになっていました。
入院の翌日から症状は消えていきました。リンパ節の腫れも頭痛も……。快方に向かいはじめたので、入院の身ではありますが、病院業務を手伝うようにしました。患者が大勢来ていました。流行の最初の1週間で急増したのです。現在は病院も落ち着いたので、2週間ほど療養するようにと言われています。
ただ、退院して帰宅する私を受け入れる心構えが家族にできているかどうか……。「できている」と言っていますが、怖がられているのがわかります。ですから、家族と離れているのです。私は前向きです。ペストに感染したことを隠すつもりはありません。私は感染し、回復したのです。