日々多くのアニメソングが発表される今日この頃、アニメソングを歌う期待のニューカマーも続々登場している。そこで、アキバ総研的に気になる「新人さん」に突撃インタビューする連載! それが「新人さん、いらっしゃい!」。
今回登場するのは、「Re:versed(リバースト)」名義での音楽活動をスタートしたばかりの巴山萌菜(ともやまもな)さん。2014年3月、”もな”名義で人気アニメ&ゲーム「アイカツ!」キャラクターの歌唱担当シンガーとしてデビュー。2016年の担当卒業以降、ソロシンガーとして精力的に活動中の彼女は、2017年12月にサウンド・プロジェクト・ユニット「Re:versed」のボーカリストとして活動していくことを発表。現在放送中のTVドラマ「賭ケグルイ」(MBS/TBS ドラマイズム)にて、「Re:versed」名義で主題歌「一か八か」を歌唱している。
心機一転、新たな形での活動をスタートさせた巴山さんに、シンガーになるまでの道のりや、Re:versedとしてどんな音楽を発表していきたいのかをうかがった!
──巴山萌菜さんが「アキバ総研」にご登場いただくのは初めてとなります。簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか。
巴山 ソロシンガーとして活動を始めて2年が経ちました。ソロシンガーの活動が始まる前は「アイカツ!」の歌唱を担当していて、それが初めて歌のお仕事でした。そして2018年から「Re:versed」としての活動も始めました。
──「アキバ総研」では「アイカツ!」のもなさんとして知っている方も多いと思うのですが、シンガー・巴山萌菜さんはどんな歌手なんでしょうか。
巴山 シンガー・巴山萌菜としては、私の素直な思い、伝えたい思いを、私にしか届けられない歌として聞いてくれる方に届けていきたいと思っていて、「Re:versed」では、巴山萌菜を超えた新しい表現を作ったり、もっと開拓していくような、挑戦的な活動をしていきたいなと思っています。
──シンガーを志した経緯を教えていただけますか?
巴山 小さい頃からずっと歌うことが大好きだったんです。歌を始めたきっかけは、小さい頃に引っ込み思案だった私の性格を直すために、母親が劇団に入れてくれたことです。そこで人前で表現したりしゃべったりすることが楽しいんだと気付いて、それからは「歌を歌いたいな」「表現したいな」と思いながら学生生活を送っていました。
もうひとつのきっかけは、弟が高校サッカーを3年間やっていて、応援に行ったりすることで「青春」を感じさせてもらったことです。そこで「私も一緒にがんばりたい」、そして「歌を学びたい」と思うようになり、音楽の学校に通うようになりました。
音楽の勉強を始めるには遅かったと思いますし、出だしが遅かった分、就職したりする周りの友達のこととかとか気になったりもしました。でも、やりたいことのためだったら、(始めるのが)遅くてもいいんだっていうことを、周りの一緒に音楽をやってきた仲間に教えてもらったんです。誰でもこれからやりたいことや夢がある人に、「スタートが遅くても、今始めれば遅くないんだよ」「周りなんか気にしていないで、自分がやりたいことをやっていこうよ」っていう、背中を押せるような歌で届けたいって思っています。
「アイカツ!」で知ったアニソンの世界
──「アイカツ!」の歌唱担当でデビューする前まではどんな歌を歌ってましたか?
巴山 歌手の絢香さんの表現力や歌唱力に憧れていて、ああいうふうに歌いたいというのが活動を始めるきっかけのひとつだったので、最初はとにかく絢香さんのカバーをたくさんしていました。ライブと言うよりはカラオケで、絢香さんの曲を全部歌える!というくらいまで練習していたほか、Superflyさんとか、平井堅さんとか、中島みゆきさんとかもよく歌っていました。バラードだと自分が伝えたい思いがより込められるので、バラードを素敵に歌うアーティストさんのカバー曲を歌っていましたね。
そのほか、音楽の学校に通っている間に作詞・作曲を学んで、その間にできたオリジナル曲数曲を、ライブで歌っていました。
──「アイカツ!」の曲はバラードと真反対というか、元気な曲が多いですよね。
巴山 そうですね。だから、最初は「とにかくやってみるしかない!」という感じでした。でも「アイカツ!」の中で、かっこいい歌、セクシーな歌などいろんなジャンルの歌や、歌のテクニックを、周りの方に教えていただきつつレコーディングできたので、多くのことを学ぶことができました。アニメ本編の内容と同じく、歌唱を担当したキャラクターとともに成長しながら歌うことができたと思います。
──「アイカツ!」で歌うようになる前は、どんなアニメを見ていたのでしょうか?
巴山 「アイカツ!」で歌唱担当するようになるまで、アニメを全然見たことがなかったんです。アニソンも全然知らなかったんですが、「アイカツ!」に参加してから、いろんなアニメを見たり、ファンの皆さんにアニソンを教えてもらったりしました。
──J-POP畑の巴山さんから見て、アニメソングにはどんな印象を持たれましたか?
巴山 周りの人から聞くと「人に歌を届けるのは一緒じゃん」って思われたりするんですけど、私はまったく違うものだなって思いました。アニメソングは結構ハキハキと歌うんですね。J-POPのバラードでは人がしゃべっているように、歌に言葉を乗せて歌ったりするんですが、アニソンは感情よりも活舌を意識して母音をとにかくはっきりと、「言葉をどのように伝えるか」を大切にするっていうのが大きな違いですかね。もちろんそこから学んだことも多くて、「アイカツ!」で歌ってきた楽曲の表現力も、きっといまの「巴山萌菜」にいかされていると思います。
──「アイカツ!」関連のイベントで、数多くのステージに立って歌われていたと思いますが、イベントで印象に残っていることはありますか?
巴山 加入して半年でアニサマに出させてもらったのは衝撃でした。何もわからないままあの場に出て、立って、そしたら見たことのないペンライトの景色で。みんなが振ってくれるペンライトに酔ってしまいそうなくらい、自分がどこに立っているかわかなくなるような景色でした。あれは一生忘れられないと思います。
──アニメソングの世界を知らなかったところで、いきなりあの場に立ったわけですが、その時はどう思われましたか?
巴山 新しい世界に入り込んだなって思いました。見たことのない世界だったのですが、不安というよりもワクワクしました。アニサマに出る前にも「アイカツ!」のイベントでライブをして、ファンの皆さんを見てはいたんですが、みんな一生懸命応援してくれるじゃないですか。皆さんがペンライトを振る意味って何なんだろうって思っていたんです。その後、「あれは応援しているんだよ」って教えてもらって、そういう表現の仕方なんだと知りました。
──アニサマで洗礼を受けた後、歌唱担当を卒業されて、ソロシンガーとしてアニソンカバーにも挑戦されていますよね。選曲はご自身でされているんでしょうか?
巴山 選曲はファンの方たちがしてくれています。もちろん自分でもアニソンを勉強していましたが、たくさん知っているわけではいので、ファンの方たちに、「巴山萌菜」に合う曲を教えてくださいって「#もなリク」を付けてツイートしてもらっています。300曲以上提案してもらって──今も更新し続けているので400曲くらいあるかもしれないですね。ほぼイチから全部聴いて、その中からライブで歌ったらいいなとか、この曲好きだなという曲を選んで歌っています。いろんなジャンルや特徴があるのが面白いですし、いい歌詞の曲も多いので、もっともっとアニソンを知っていきたいなと思っています。
──ところで2018年2月27日、28日には、日本武道館で「MUSIC FESTA in AIKATSU BUDOKAN」が開催されましたね。
巴山 27日に行ってきました。1曲目からもうウルウルきちゃいました。武道館という場にいる雰囲気や空気感、ファンの方たちを見たりしてジーンときたり、ステージにいる仲間の姿を見て「成長してるな」って思ったり……。私が卒業してから2年ほど経っているのですが、2年間ってすごい期間だなって思いました。
──まさに青春ですよね。
巴山 以前は、私もそこに立っていた身だったのですが、27日はすごく客観的にステージを見ることができました。ファンの皆さんはこういう思いで歌詞を聴いているんだなとか、応援してるんだなとか、改めてファンの方の気持ちを知ることができたので、見に行けてよかったです。つい自分も踊りたくなっちゃいました(笑)。
蛇喰夢子のイラストを傍らに置いて歌った「一か八か」
──現在はソロで歌われたりするいっぽうで、今回、新たにソロプロジェクト「Re:versed」をスタートされたわけですが、どういった経緯で始めることになったのでしょうか?
巴山 ドラマ「賭ケグルイ」のオープニングテーマのお話をいただいた時に、「赤い公園」の津野米咲さん作詞作曲の「一か八か」が先にあって、早速、Br’zさんにアレンジをお願いしてデモ音源をレコーディングしました。そのデモを送った時には、まだ「Re:versed」は誕生していなかったのですが、「巴山萌菜」として歌ったら、ドラマ監督の英勉さんから「狂ってほしい」というリクエストがあるという話を聞いて。
──最初はもっとナチュラルな歌い方だったんですか?
巴山 そうですね、最初は「巴山萌菜」でした。そのリクエストを聞いて、「狂って歌うってどういう風にすればいいんだろう」って考えるようになったんです。狂って歌うって今までのシンガー「巴山萌菜」の中にはなかったので、まずはアニメ版「賭ケグルイ」を全部見てみたんです。そしたら声優さんたちがものすごい演技をしてらして、そこにすごく感動したんです。こんな声が、こんな息の使い方ができるんだと思いました。
それを参考に笑い方や息の吸い方、裏声の使い方を考えて、改めてデモを録ってみたらそれが通ったんです。ただ、それはあまりにも今までの「巴山萌菜」にない、新しい表現になったので、新たな「もうひとりの私」として歌っていきたいなっていうところから誕生したのが「Re:versed」です。
「Re:versed」という言葉は、タロットカードの「逆位置(reversed)」から取った言葉で、「Re:」には「再び」、「versed」には「熟練した」っていう意味があります。「もうひとりの私として歌う」っていうメッセージが込められていて、鏡越しの自分というか、シンガー「巴山萌菜」が白だったら、「Re:versed」は黒、みたいなイメージです。タロットカードでいうなら、シンガー「巴山萌菜」が正位置、「Re:versed」は逆位置のように歌っていきたい、というところから誕生しました。
──巴山萌菜さんというとバラードややさしい曲が多い印象なので、「一か八か」が出てきた時はみんなビックリしたと思います。
巴山 そうですね、最初は「え、萌菜ちゃん?」っていわれました。でもこのアニメ版を見て、声優さんから学んだことや、これまでやってきた「アイカツ!」のお仕事で得た表現力もいかされてると思います。
──歌う時はキャラクターを意識しましたか?
巴山 やっぱり蛇喰夢子(じゃばみゆめこ)ちゃんを、そして桃喰綺羅莉(ももばみきらり)ちゃんを意識しました。ふたりのイラストをかたわらに置いて、それを見ながら「夢子ちゃんだったらどうやって歌うかな」「綺羅莉ちゃんだったら」って考えながらレコーディングしました。「アイカツ!」のレコーディングの時から、かたわらにキャラクターグッズを置いて、イメージしながら歌うということはやっていました。
──聴きどころは?
巴山 私の中でもいろいろ研究しながら歌ったんです。アニメの夢子ちゃんの女の子っぽいところやかわいいところも取り入れつつ歌っています。
1番だと、わざと裏声にして歌っていたり。2番の入りのところも、ちょっとかわいい感じで歌ってみたりしているので、ほかにもそういうところを見つけながら聴いてもらえたら嬉しいですね。
いろんなキャラクターが出てくるように歌っていますし、どうすればドラマを楽しんでもらえるかと考えて歌っています。ライブでも、ドラマの世界同様みんなで一緒に狂えるようなものにできたらなと思って歌っています。
──歌ううえでのポイントはどんなところでしょうか?
巴山 1番の「どうにもまるで消化しきれない炎上」と、2番の「どうにでもなってしまいそうな位の感情」のところは、早口でギリギリ言えるくらいまでテンポを早くしてアレンジしてくださったので、皆さんもここをがんばって歌ってください!
──「一か八か」ではドラマのオープニングでは、毎回役者さんがリップシンクで歌っている映像が流れますね。
巴山 キャストさんも歌ってくれてるって思うと嬉しくて。毎回オープニング映像が変わるので、視聴してくれている方たちも面白いって言ってくれています。かっこいい映像なので、ぜひこの映像でPVを作ってもらいたいです!
「Re:versed」だったら、どんなことにも挑戦できそう!
──カップリングが平井堅さんの「LIFE is...」のカバーですが、こちらは少し懐かしめの曲ですよね。タイトル曲から、ガラリとイメージが変わります。
巴山 そうですね、こういうバラードも「一か八か」も、どっちも私なので両者をリンクさせたいんです。「一か八か」で知ってくださる方は、ロックなアーティストなのかって思われるかもしれないんですが、シンガー・巴山萌菜としてはこういう歌も歌っているよと教えてあげたい気持ちもありまして。
──まさに表と裏のようなCDですね。
巴山 平井堅さんの曲が好きで、路上ライブをやったときに歌わせてもらったりしていました。今回、「一か八か」のカップリングにするなら、「LIFE is...」の世界観が合うんじゃないかなと思ったんです。狂った世界の曲の後に、こういうバラードが入ったら素敵なんじゃないかなと思って。
──今後、「Re:versed」として、どんな曲を歌っていきたいですか?
巴山 「Re:versed」だったら、どんなことにも挑戦できそうと思えるので、すっごくかわいい曲とか、アイドルみたいな曲だったり、セクシーな曲だったり。あとは映画の挿入歌とかですね。「Re:versed」をきっかけにいろんな活動をしていきたいですし、いろんな曲を歌っていきたいなと思っています。
──アーティストとしての振れ幅が広がりそうですね。
巴山 本当に何にでも挑戦したいですね。あくまでも自分の歌というよりは、ドラマやアニメ、映画、CMなどの作品があったうえで、それを引き立てられるような歌を歌いたいと思います。ドラマを作っている人と同じ立ち位置で、どうやったら「その作品」を盛り上げられるかという感覚で「一か八か」も歌っていますし、「Re:versed」ではそういう表現の仕方ができたらいいなと思っています。
──ちなみに、よく巴山さんが口にしている「自分にしか届けられない歌」というのはどういうものだと思いますか?
巴山 私、しゃべるのがそんなに得意ではないんです。でも歌だったら、共感できる部分や伝わるものを共有できる気がします。言葉で話さなくても伝わるような部分を大事にしていきたいですし、それを私にしか届けられない歌で共有できたらいいなって思っています。
たとえば動物はしゃべれないけれど、「おかえり!」って仕草で伝えてくれたり、「嬉しい」とか「ご飯食べたい」とか私たちと共有できるじゃないですか。目に見える感情というか。
私もこういう思いで歌っているけれど、CDを聴いている人は違う思いで聴いているかもしれない。でもライブで聴いたら共有できる部分があるかもしれない。私は、それが嬉しいので常に歌を届けていきたいと思いますし、これまで引っ込み思案だった私も、勇気を出せば夢に向かっていける。歌をスタートするのが遅かったかもしれないけど、今はすごく楽しい場所にいて、大好きな歌をずっと届けられているということを、みんなに伝えていきたい。それが私にしか届けられない歌……かなと思います。
──ありがとうございました!
【CD情報】
■Re:versed「一か八か」
・発売日:2018年3月14日
・価格:1,200円(税込)
・品番:UPCH-5937
・レーベル:ユニバーサルJ
<収録内容>
M-1.一か八か
M-2.LIFE is...
M-3.一か八か(Instrumental)
M-4. LIFE is...(Instrumental)
M-5. 一か八か(TV Version)