可算・不可算名詞は、暗記よりも「ネイティブ感覚」を養おう!

前回は日本人にとっての鬼門、不定冠詞 a/an について説明しましたが、今回もやはり大半の日本人がつまずく可算名詞/不可算名詞、いわゆる「数えられる名詞・数えられない名詞」についてお話したいと思います。

この可算名詞/不可算名詞は、実にトリッキーです。日本人からすると数えられると感じられるものが数えられなかったり、逆に数えられないと思ってたものが数えられたりするからです。それだけでもややこしいのに、場合によって数えたり、数えなかったりする単語もあります。そのため僕らにはまるで一貫性がないように感じられ、何が何だかわからなくなってしまうのです。

今回は、英語という言語が、いったいどのような原理で名詞を数えるもの、あるいは数えないものとして捉えているのか、その根本から順に解説していきたいと思います。

何を基準に数えたり、数えなかったりするのか?

可算名詞・不可算名詞

ある名詞が数えられるか数えられないかを決定する要因は、大きく分けて次の3通り考えられます。

  1. 均質性
  2. 境界がはっきりしているか? 決まった形があるか?
  3. 数えやすいかどうか

なお、この3つ基準はどれも主観的なもので、「この境界線を超えたら数える/あるいは数えない!」と、わかりやすく明文化されていません。ネイティブスピーカーは家族や友達と話したり、テレビやネット視聴したりするうちに、その感覚を少しずつ培っていくのです。ぼくらに必要なのはこの感覚を得ることです。

どの名詞が可算か不可算か杓子定規に暗記しようとしても、なかなかスムーズに出てくるようになりませんし、知らない単語に出会うたびに、わからなくなってしまいます。

ですが、ネイティブがおおよそどのような感覚で可算/不可算名詞を捉えているのかを理解することで、より短時間で同じような感覚を養うことは可能なはずです。そこで今日は上の三つのパターンを一つずつ解明していきましょう。

1)均質性〜切り分けると性質が変わるか?

数えられる数えられないを区別する一つの方法は、その名詞が指し示すものを均質性を考えてみることです。

例えば、table を半分に切ってしまったら、もはやテーブルとして機能しません。牛を切り分けたら肉片になってしまい、もはや cow という生き物としては機能せず、新たにbeef(牛肉)という食品として認識されます。このように切り分けると性質が変わってしまう、均質性が低い対象物は、数えられる名詞として扱われます。

逆に均質性の高い物質は数えられない名詞です。water, beer, butter などは、切り分けて形を変えても、部分を取り出してもそれぞれ水であること、ビールであること、バターであることに変わりはありません。このような物質は数えられない名詞です。

英語学習の鬼門、冠詞 a/an の使い方をマスターしよう!/ブライチャーブログ 英語学習の鬼門、冠詞 a/an の使い方をマスターしよう!/ブライチャーブログ 英語学習の鬼門、冠詞 a/an の使い方をマスターしよう!/ブライチャーブログ

他にもいくつか例を挙げてみましょう。例えばコップの中に入っている氷、どう見ても数えることが可能です。なぜ ”ices” って複数形がないのか、長い間とっても不思議に思っていました。

しかし、ice は数えません。それはもちろん、氷が均質な物体で、「切っても分けても、大きさや形状が変わっても性質が変わらない」からです。氷屋さんで売ってくれる大きな塊も、家庭用の冷蔵庫で作れる小さな氷も、みんな同じ性質の ice というわけです。

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なお、コップに入っている氷をどうしても数えたければ、”2 ice cubes”、あるいは “2 peices of ice” などのように、なんらかの工夫が必要です。そう、不可算名詞というのは、数量を言い表すために単位が必要なのです。

もう一つ別の例を考えてみましょう。例えばパンはどうでしょうか? これも数えられない名詞です。パンはどう切り分けても bread であることには変わらず、同じ性質を維持するからです。数える場合には、a slice of bread, a piece of bread, a loaf of breadなどのように「数えるための工夫」が必要になります。

このように、数えるか数えないか迷ったら、そのモノの均質性が、一つの大きな判断材料になります。例えば食卓に並ぶ多くのものは数えられません。

Beef, beer, bread, butter, cereal, cheese, coffee, corn, cream, flour, food, fruit, honey, ice cream, juice, margarine, meat, pork, pasta, pepper, rice, sugar, salt, spaghetti, sugar, tea, vinegar, water, wheat…


食品以外にもいくつか挙げてみましょう。

soap, blood, detergent, gasoline, ice, iron, lotion, oil, paper, shampoo

soup(石鹸)も形や大きさに関わらずとにかく石鹸です。紙はつい数えたくなりますが、名刺のように小さくても、模造紙のように大きくても紙は紙だし、切り分けても性質が変わらないので数えないのです。

数える食品、数えない食品

可算名詞・不可算名詞

では、cake やピザなどはどうでしょうか? これは丸ごと一つと捉えるか、切り出したものと考えるかで捉え方が変わってきます。

ピザやケーキを「丸ごと」捉えれば、形がはっきりしていますし、種類が異なれば味(性質)も変わって来ますから、1 cake, 2 cakes, 3 cakes、1 pizza, 2 pizzas, 3 pizzas のように数えられる名詞として捉えられます。

しかし、切り分けた場合には、不可算名詞として捉えられます。なぜかというと、ケーキやピザは半分にしても、4当分にしても、8当分に切っても、ケーキはケーキ、ピザはピザで、その性質には変わりがないからです。

2)境界がはっきりしているか? 形がはっきりしているか?

名詞が数えられるかどうかのもう一つの判断材料は「境界線がはっきりしているか?」です。「形がはっきりしているかどうか?」と考えても良いでしょう。

例えば、air(空気)などは決まった形がなく、境界線がはっきりしないものの代表です。steam(蒸気)、atomsphere(大気)などもそうですね。ほかにも例を挙げて見ましょう。

  • fog(霧)
  • smoke(煙)
  • smog(スモッグ)
  • hydrogen(水素)
  • oxygen(酸素)
  • pollution(公害)
  • dust(ホコリ)

このほかに、日本人がつい数えてしまうけれども、実は数えない名詞があります。

advice, data, information

これらははやり、形や境界線が明確ではないので数えません。1バイトでも、100ギガバイトでもdataはdata, information は information です。また、アドバイスも同様で、メール一通でも、口頭で2時間使ってもアドバイスはアドバイスに変わりがありません。

捉え方によって数えるか数えないかが変わる

また、同じ名詞でも捉え方によっては数えたり、数えなかったりすることがあります。

例えば space という単語は、数えることもあれば、数えない場合もあります。space を「境界線で仕切られた、形がはっきりした空間」と捉える場合には ”There is a space to park your car.”などのように数えることもありますし、逆に ”We have so much space in the back of the car.” などのように、空間として捉え、数えないこともあります。

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実は、ビールや水なども同様です。お店でお水やビールを注文する際に、”We would like 3 beers please.” などのように、beer を数えられるものとして捉えることがあります。これは、「瓶、あるいはジョッキに入ったビール」のように、客と店員の双方がビールを「数えられるもの」として捉えることが成立するからです。考え方としては、上の駐車スペースと同じような捉え方ですね。

3)数えるのが面倒なもの

それから、数えらるか数えられないかのもう一つの判断方法に、「数えるのがどのくらい面倒か?」というものがあります。要するに、数えるのが面倒なものも数えないのです。例えば、お米とかトウモロコシとか、それから髪の毛なども、数えようと思えば一粒、一本ずつ数えられないこともありませんが、実際のところ、お茶碗一杯に入った米粒を一つずつ数えるのは現実的ではありません。ですから、こうしたものは数えないのです。

形や大きさが一定していないもの

トリッキーなのは、日本人には数えられるように思えるこれらの名詞です。

baggage, cash, clothing, equipment, furniture, food, jewelry, junk, luggage, machinery,, mail, money, merchandise stuff, trash

結論から言えば、これらはどれも数えにくいため、原則として数えません。

例えばfurniture(家具)ですが、家具には机、椅子、タンス、テーブル、ソファーなどのように、さまざまな種類のものがあり、形も大きさも異なります。また数えたくても、ペアになっている椅子とか、テーブルとセットになっているソファなどもあり、何を「1個」とするか、意外と決めにくいものです。このように大きさや形や組み合わせなどが一定でないものは、概ね数えません。Equipment や luggage、あるいは maiil, clothing なども同様です。これらの言葉は衣類、機械類、家具類などのように、そのカテゴリーの名称として捉えると、覚えやすいように思います。

なお、僕自身が戸惑ったのは、mail は数えないのに、email は数えることです。mail は「郵便物」の総称ですから、その内訳には letters もpostcards もあれば、packages もあるなど、様々な種類が混在します。しかしemail は形が一定なので、数える名詞として扱うのです。

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また日本人が間違えやすい、同じような種類の不可算名詞に News があります。News というのは、「最新の情報や出来事の報道」という意味ですが、その中には、articles(記事)もあれば、storiesもあるかも知れませんし、broadcasts(放送)などの形態もあり得るわけです。なお、 article(記事)、 story(物語)、 novel(小説)などは何かの総称ではなく、切り分けると性質が変わってしまう、均質性を欠くモノです。ですから、これらは数えられる名詞として扱われます。

また、わかりにくいところでは、money も cash も数えません。お金というのは現金、株、債権などのようにいろいろな形態がありますし、cash にしても、さまざまな種類の紙幣や硬貨があります。ですから、ドルや円などといった単位を用いないと、数えることができません。

このように数えるのに工夫が必要なものは数えないのです。

さて、いかがでしょうか?

今回は、1)均質性、2)境界がはっきりしているか? 決まった形があるか?、3)数えやすいかどうか?、という三つの基準を紹介しました。名詞が可算名詞か、不可算名詞か迷ったら、この3つの判断方法に照らし合わせ、考えてみてください。この加算、不可算名詞は非常に奥が深いので、また回を分けて解説してみたいと思います。

松井 博
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。