小中学生7万人調査で分かった「スマホ」の影響 アプリ数と成績は反比例、LINEは特に?
ライフ週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載
人と動物の分かれ目
もちろん何年かかけてでも戻って欲しいと願っていますが、まだ我々は3年しか追いかけられていないし、ここからこれ以上長い期間追いかけるのは難しいんですよ。スマホを持ち始めるのは中学生以上が多いですし、高校に入ると我々はもう追跡できない。そのうえ、使っていたのをやめた子の数はすごく少ないですから。やめていたのに使い出した子はすごく多いんですけど、彼らは成績が見事なまでに急降下していきますね。
先ほど触れた前頭葉について説明しておきますと(※前回を参照)、「前頭前野」と呼ばれる部分が高次な情報処理をしていると考えられています。
この前頭前野の背部外側がまさにそういう複雑な仕事をしていて、記憶や判断、予測をしたり、意欲を出させたり……などといった機能がある。腹側は、言語とか非言語のコミュニケーションにかかわる場所で、それに対して内部の方に入ると、他者の気持ちを慮るといったような、もっと高度なコミュニケーション能力を司っています。
この相当重要な役割を担う前頭葉の前頭前野。ここは人間だけが発達しており、人ならではの心の働きに関係しているという特徴がある。つまり、人と動物の違いは前頭前野が進化しているか否かの一点です。そこの働きに抑制がかかっているということは極端に言うと、人が動物に返りつつあることを意味している。
私たちからすると恐ろしいばかりですが、子供たちにとっては余計なお世話かもしれません。これからAIが発達してくると、物を考えるのは人間の仕事じゃなくなるかもしれない。そういう流れを先取りしていると言えなくもないでしょうから。
この話を聞いた教育委員会の方が私の元に来て、こんな話をしてくれたことがあります。
曰く、「保護者の方が“スマホを使わせると成績が下がるのは理解できた。じゃ、スマホを禁止したら、どうやって夜過ごしたらいいんですか”って聞いてきたんです」――。そこまでこの国は病んでしまったかという風に溜息をつくばかりです。
本を読む、子供と一緒に遊んだり話をするという考えに至らない。何かしていないと時間を潰せないと心の底から信じ切ってしまうほどに、我々が中毒に陥っていることの証左ですね。
***
特別読物「小中学生7万人を調査!成績急降下!! 『脳トレ』教授が語る『スマホ』は脳の麻薬」より
[3/3ページ]