韓国に対するトランプ大統領の警告はその直後に出たものだ。南北首脳会談を目前に控えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領に「金正恩氏の側に立つな」とあからさまに釘を刺したようなものだ。今月初めにワシントンを訪問した韓国特使団が金正恩氏からの米朝首脳会談の提案を伝えた際、トランプ大統領がその場でこれを受け入れ、その事実を特使団に直接発表させた時にはホワイトハウスにいるトランプ大統領の側近たちも驚いた様子だった。対話を通じた北核問題の解決に向け韓国が仲裁を買って出たのだから、その結果も韓国に責任を取らせようとしたと解釈されたのだが、今のトランプ大統領の態度はまさにそうだ。さらにトランプ大統領の言葉には、今後韓国政府と北朝鮮に対し「段階的措置に合意してこれを米国に持ってくるな」という意味合いも含まれているはずだ。
北核の廃棄はたとえ韓国と米国が一体となって動いたとしても決して簡単ではない。ところがトランプ大統領は逆に韓国を米国側ではなく北朝鮮側とみなしているのだ。トランプ大統領の思慮深くない態度も問題だが、それ以上に韓国政府が北朝鮮に同調するかのような動きを示したことはもっと問題だ。だからこそトランプ大統領は韓国に対しあからさまに警告を発したのだ。
金正恩氏が語った「段階的、同時的措置」とは核廃棄を遠い目標とし、そこに向かうプロセスごとに北朝鮮に見返りを与えるというやり方だ。これが実行に移されれば、今効果を発揮している北朝鮮への制裁は一気に崩壊してしまうだろう。しかも一度崩壊した制裁をもう一度やり直すのは不可能に近い。それでも韓国政府が金正恩氏による核廃棄の約束を守ると信じるなら、それは国民をあざむく行為に他ならない。韓国政府が北朝鮮の気分を害さないよう必死に気を遣うことは理解できる。しかしこのまま金正恩氏に引きずり回されていては、北核問題解決の絶好のチャンスはもちろん、韓米同盟まで失ってしまう恐れも出てくるだろう。