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栗村修の“輪”生相談<124>30代男性「なぜ選手はメカトラになると自転車を躊躇なく投げ飛ばせるの?」

 
 いつもロードレースの動画を見ていて気になる事があります。

 なぜ海外のプロ選手は落車にあったり、メカトラに襲われたりすると自分の機材を躊躇する事なく投げ飛ばしたり地面に叩きつけたりするのでしょうか。勝負が懸かっていた場面であれば怒る気持ちも分かりますが、我々サラリーマンからすれば、一台100万円以上する代物を粗末に扱うのは悲しくなります。

 モトGPのバレンティーノ・ロッシは、優勝すると自分のマシンにキスをして感謝の意を表すシーンを良く見かけます。

 今後UCIはワールドチームの選手に対して自分で使う機材は自分の給料で購入させるべきでないでしょうか。

(30代男性)

 面白いところに目を付けましたね。確かに僕も、解説者として、自転車に当たる選手を何度も見てきました。おっしゃるとおりで、自分で買った自転車ならたとえメカトラがあったとしてもぶん投げたりしないはずですね。

 しかし、僕はあえて別の見方をしてみようと思います。選手たちにとって、100万円の自転車は、賞金や年俸を稼ぐための道具なんです。道具でしかない、手段でしかないわけです。一方で、趣味のサイクリストにとっての100万円の自転車は、目的です。その自転車で稼ごう!というのではなく、自転車に乗ること自体が目的です。

 選手たちにとってのバイクは、道具に過ぎない。その道具に不具合があると、目的を達成できなくなります。こう考えると、モノに当たる様子も違って見えるのではないでしょうか。もちろん、プロ選手にとっての商売道具なのであれば、尚更大切に扱うべき、という意見もあるかと思いますので、すべてが肯定されるわけではないですけれどね。

 ただ面白いのは、メカトラが起こった際のバイクへの反応は、皆が皆、キレまくるわけではなく、選手によってずいぶんと違うことです。バイクをぶん投げてしまう選手がいるいっぽうで、クリス・フルームなんかは自転車をそっと置くじゃないですか。自販機に小銭を飲まれちゃったときの一般人も、自販機をける人もいれば、落ち着いて管理会社に電話をかける人、あきらめる人と、反応は様々でしょう。それと同じで、個人差があるのです。

選手はバイクの値段には無頓着? Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ最後に付け加えると、選手だけではなくて、一般の方のバイクへの態度にも日本とヨーロッパとの間で、文化差があるように感じます。日本人は、バイクを単なる道具以上のものと見たがる傾向があるように思いますね。名前を付けたり、床の間に飾ったり、必要以上の愛情を注ぐ(私自身もかつてはそうでした…)。

 一方で、ヨーロッパ人、少なくともフランス人は、バイクを単なる道具と見て、もっとドライに接します。コンポーネントも、デュラエースじゃなく、アルテグラや105だったりする。「走ればいい」という考えなんでしょうか。居間などの生活空間にバイクを入れることもまずありません。練習が終わると即ガレージに突っ込んでいました。

 ところが、そのフランス人たちは、道具の手入れは怠らないんです。性能を発揮できないと困るからなのかもしれませんが、乗り終わったら乾拭きして、注油して…といった基本的なメンテナンスや洗車を欠かしません。それなのにレース中に壊れたらぶん投げる…(自分のお金でバイクを買っているアマチュア選手はさすがにぶん投げないと思いますが…)。

 一方の我々日本人は、バイクを愛することにかけては世界トップレベルなんですが、不思議とバイクが汚い傾向があります。せっかくデュラエースをおごった〇〇号なのに、チェーンが真っ黒になっていたりする。

 あれは不思議ですね。日本人とヨーロッパ人と自転車に対する感覚の違いでしょうか。但し、クルマに置き換えてみると、日本は世界ナンバーワンの「洗車大国」でもあるので、恐らく「バイクを洗車する」という文化が定着しさえすれば、この辺りも変わってくるように感じます。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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