安倍首相、「外交で挽回」とは考えが甘すぎる

「日米」、「日ロ」首脳会談に「日朝」も狙うが

4月中旬以降、安倍首相の外交日程が目白押しだが、環境は様変わりだ(写真:左・ロイター/Kevin Lamarque, 右・KCNA/Handout via REUTERS/File Photos)

満開だった桜も散り、新年度がスタートし、混迷が続く政局も新たな段階を迎えた。安倍晋三政権を揺さぶる「森友問題」は、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が終わっても真相究明には程遠く、内閣支持率が下落する中で内政面での危機打開策は見当たらない。そこで首相が狙うのが、連続的な首脳外交による政権浮揚だ。5年3カ月余の第2次政権では、何度か政権危機があったが、その都度、危機脱出のツールとなったのが「安倍外交」だからだ。

首相は4月中旬以降、「国会対応は他人事」といわんばかりの過密な首脳外交日程を設定しつつある。しかし、「外交での成果で急落した支持率を回復させようとの思惑はミエミエ」(共産党)との批判が多い。北朝鮮情勢を含めて日本を取り巻く外交環境は極めて危機的なだけに「日本が下手に手出しをすると大火傷する」(外交専門家)との指摘もある。今回の首相の外交攻勢は結果的に「とらぬ狸の皮算用」になりかねないリスクもはらんでいる。

今後3カ月の首相の外交日程は、未定のものも含めて、通常国会会期末(当初)の6月20日まで目白押しだ。まず、4月17日から20日に設定されたのが、ドナルド・トランプ米国大統領との日米首脳会談のための訪米。続いて4月末からの大型連休にはサウジアラビアなど中東各国を歴訪し、場合によってはイランにまで足を延ばす計画とされる。

また連休明けの5月上中旬には長年の懸案である日中韓首脳会談の東京開催を調整中で、続く下旬には首相がロシアを訪問してのウラジーミル・プーチン大統領との日ロ首脳会談が予定されている。さらに6月上旬には毎年開催の主要国首脳会議(G7サミット)でカナダを訪れるが、ここにきて、その前後に北朝鮮・平壌に乗り込んでの金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との日朝首脳会談実現も模索しているとされる。

対北朝鮮問題では「蚊帳の外」に置かれた日本

いずれも、今後の日本外交の進路にも直結する極めて重要な首脳外交だが、永田町・霞が関でも「あまりに過密で、首相の体力と精神力の限界を超えるのでは」(外交専門家)との不安が広がる。特に、北朝鮮核開発への対応が中心となる東アジアの安全保障問題は、金委員長の3月末の電撃訪中による中朝首脳会談以来、北朝鮮の外交攻勢が急進展する中、「日本が蚊帳の外に置かれていた」(同)ことで、首相の一枚看板だった「地球儀を俯瞰する外交」も色あせ始めている。

首相が「過去に例のないほど親密」と自賛する日米首脳の友好関係も、ここにきて「予測不能」のトランプ大統領が仕掛けた貿易戦争などで軋轢(あつれき)が強まっている。このため首相は今後、「過去5年余の安倍外交の成功体験」が通用しそうもない、極めて厳しい首脳外交の試練に直面することになる。

次ページ貿易戦争で「ドナルド・シンゾー」の蜜月も揺らぐ
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAMEf602a3c0baf0
    安倍晋三の【日本を戦争ができる国にしたい】という邪悪な悲願達成のためには、【戦前の軍国主義的な思想を組み込んだ憲法改正】が絶対に必要で、そのためには朝鮮半島の緊張が緩和することが不都合だったので、安倍は全力をあげて北朝鮮の脅威を国民にあおり、圧力一辺倒の強硬策をゴリ押ししてきた。
    米韓中は北朝鮮への圧力強化を進めながらも、一方では平和的解決も模索してきた。圧力一辺倒で盲目的になった安倍はその動きを見抜けず蚊帳の外に置かれた。

    安倍には「経済手腕」も「通商手腕」も「外交手腕」もないことが国民の多くにバレバレになっているのに、外交で名誉挽回というのは本当に考えが甘いと思う。

    日露交渉も考えているらしいが、プーチンも習近平と同じく対話による解決を主張していたので、すんなりとはいかないと思う。
    トランプにも不利な通商協定を強いられ、金正恩からは多額の経済協力を要求されるだけだと思う。
    up327
    down43
    2018/4/3 08:09
  • NO NAMEa0dcc7e2ff18
    第1次安倍内閣時代に北朝鮮の核実験に対抗して
    安倍総理が国際的な経済制裁を取りまとめて
    また独自に全面的な制裁を科したことに当時の支持者は大喜びしました。
    (「金正日が日本産のメロンが食べられなくなって困っているぞ」とか)

    しかしその時点で北朝鮮側との交渉の線は絶たれて
    以降は米国が口利きしてあげなければ2国間交渉できない事態を招いた。
    北朝鮮からすればやかましいのがいなくなって清々したことでしょう。
    今の文大統領が圧力と交渉の2ライン戦略を取るのとは対照的だ。

    目先のことだけ考えアメリカへの同盟を証明する為に
    イランのアザデガン油田を簡単に手放したことと
    わざわざ朝鮮半島では広義の意味での、という回りくどい言い回しで
    従軍慰安婦はなかったと閣議決定出したことも合わせて
    第1次安倍内閣外交3つの致命的失敗だと認識してます。
    up122
    down40
    2018/4/3 08:21
  • NO NAME6cf434670d70
    国内情勢が怪しくなると外交へ逃げるのはいつもの事ですが、その都度「成果」を勝ち取る為にどんなバーターを引き受けてくるかが問題ですね。

    諸外国のトップも安倍総理が外交でポイントを稼ぐつもりだという事は良く分かっていますから相当に日本に不利な条件を出してくるでしょう。

    しかも先般の森友学園問題でも同じですが、その不利な内容を政官が一体となって隠してきた場合、私たちが知るすべはありません。

    外交は国と国民の為にするものであって、安倍総理や安倍内閣、その支持者の為にやってもらっては困ります。
    全うに情報公開すら出来ない内閣が、国を私物化するのは本当に辞めて頂きたいものです。
    up90
    down37
    2018/4/3 07:00
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
黒田日銀<br>2期目の苦難

2期目を務める日銀総裁・黒田東彦氏。異次元緩和の導入で、円安が進み、株価は上昇、景気も拡大したが、景気後退局面ではお手上げか。禁じ手「ヘリコプターマネー政策」にも現実味。